魔族VS半神ーー2



サヴァスはすかさず大剣を振るった



だが、シリウスは容易くそれを避ける。




火球ファイアーボール



シリウスの手の中で炎が混ざり合い、球体になっていく。



それは、サヴァスに直撃した。




「くっ!?」




サヴァスはそれを大剣を盾にして防ぐ。




凄まじい勢いで炎が巻き上がり、周囲を吹き飛ばす。



サヴァスも当然後方に吹き飛んでいた。



しかし、鎧に付与された耐火魔法のおかげでちょっとした火傷しか負っていなかった。




(おそらくこの魔法で船を吹き飛ばしたのね......聞き慣れないけど恐らく高位魔法、古代の魔法かしら)




サヴァスは刹那の間に考察を繰り広げる。



(この鎧がなかったら、こんな怪我じゃ済まなかったでしょうね)




恐らくかなりのダメージを受けていただろう。



サヴァスは大剣を構える。




シリウスが正面から突っ込んできていた。




「炎の耐性......防具の付与効果か」



そう言いながらも、手の中に光の槍を形成する。




聖槍ホーリーランス




その槍をシリウスは投擲してくる。




サヴァスは大剣でそれを弾く。




槍は防げたが、大剣の刃先が歪んでしまった。



「嘘!? 神代の時代の武器がっ」



この大剣は数千年の間傷がつかなかった代物のはずだ。



それなのに。




神の杖フォールン・ワンド




シリウスが魔法の唱えると、サヴァスの頭上から発光する何かが降ってくる。




「今度は何よっ!?」




サヴァスそれを咄嗟に避けるが、遅かった。



周囲の視界が奪われる。



衝撃でサヴァスは意識を失いかける。



恐らく衝撃で吹き飛ばされたのだろう。




気づいた時には、地面が真下に遠く見えた。



サヴァスは体勢を上手く整えて着地する。




「まずい......今ので骨が何本か折れた」




身体中に激痛が走る。



片足の骨も折れてしまったのか、移動はできても走るのは難しいかもしれない。



鎧がなかったら、これまた死んでいたかもしれない。




「重爆!」




サヴァスが大剣を地面に突き刺すと、シリウスが立っていた付近が大爆発を起こす。




しかし、爆煙の中から無傷のシリウスが姿を現した。




「まともに受けていたら、かすり傷くらいは覆っていたところだった......しかし勇者と同類の純戦士とは面白みがない」



「勇者が刻針から消えたのって......」




サヴァスは嫌な予感が浮かぶ。




「あぁ、我が殺した」




それは的中だった。




勝てないーーサヴァスは悟ってしまう。




「人間の味方をするつもり?」


「まさか、魔族も人間も殲滅する......それか服従だ」


「っ化け物」



サヴァスは大剣を構える。



恐らく逃げれない。



ならば。





その瞬間、サヴァスの身体から魔力が溢れ出す。



サヴァスがこれから使う魔術は、全ての魔力を圧縮、放出する技だ。



「魔殲砲」



その瞬間、大剣から魔力の塊がレーザー状に放たれる。



神盾イージス



シリウスは咄嗟に防護結界を展開する。




しかし、それはその結界を容易く粉砕した。




「これは驚いたっ!」




シリウスは咄嗟に避けるが、肩を貫かれる。



「このままっ、殺す!」



サヴァスはそのまま大剣の位置をずらして、心臓あたりを潰そうとする。



「スキルーー神罰」



だが、シリウスはスキルを発動する。




「くっ、う、動かなっ」




その瞬間、サヴァスの身体が硬直する。




すぐに身体の自由は戻ったが、その時にはシリウスが目の前まで迫っていた。



サヴァスが反応する前に、シリウスは強引に大剣を奪われる。


魔力の接続先が失われ、レーザーの射出が止まる。



「さよならだ......まぁ、勇者相手には万が一の勝ちはあったかもしれないな」



シリウスはそういうと、大剣を振り下ろす。



「っ!?」




だが、サヴァスはそれをかろうじて避ける。




この大きさの鉄塊だ。


110レベルとはいえ、魔法使いには重すぎた。




(重いな......私には扱いきれない)




シリウスはそれを投げ捨てると、光の槍を再び作り出す。



それをまた投擲したのだ。



サヴァスはそれを、腕を前に出して防ごうとする。



だが容易く腕を貫き、心臓を更に貫通した。




「うがぁっ!?」




サヴァスは地面に倒れ込む。




「かはっ......お前みたいなもやしには、っ私の武器は扱えないわよね」




サヴァスは血を吐きながらも啖呵をきった。



「そうだな、魔法使いには重すぎた......」




だが、シリウスはそれをあっさりと認める。




「我に従える配下の誰よりも強かった。それは認めよう」


「貴方が最強? たかが、しれてっ、てるわね」



サヴァスは呼吸が辛くなってきたのか、息も絶え絶えで喋り続ける。



「私の上には魔王も副将もっ......いるっ、私を殺した事は、絶対にっ、後っ悔す、るかっら」




サヴァスは邪悪な笑みを浮かべて、絶命する。


後のことを彼女、彼に託して亡くなった。



仇をとってくれる事を信じて。




「魔王か、勇者よりも強いことを祈ろう」




シリウスは死体にそう声をかけ、その場を後にした。

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