悪役ロールプレイヤーの私、自キャラとして見知らぬ世界にいたので、理想の悪役目指して侵略する

@coco8958

日常



アンノウンワールド・オンラインーー去年サービス終了したオープンワールドオンラインゲームだ。




ユーラシア大陸と同等規模の広大な大陸を探索し、未知を解き明かすーーそれがこのゲームのコンセプトだ。




近年急速に発達したAI及び演算装置により、実際の生き物のように思考し動くNPC。

  

ゲーム内にはいくつもの国家が存在し、それが公式すら予想もしない戦争、同盟、対プレイヤー政策を打ち出した。



まるでもう一つの世界が存在したと言っても過言ではない。




超高度AIを搭載した何百万人ものNPC達による国家の建国。自己進化AIによる生態系の形成。



まるで本当に世界を、そして自由に味わうことのできた紛うことなき神ゲー。



社会現象になるほどの大ブームを巻き起こした。




だが、それも長くは続かなかった。



結局のところ、数年後には同等レベルのタイトルが何本も発売され、アンノウンワールドの優位性は完全に崩壊。



緩やかにプレイヤー人口を減らしていき、サービス終了となった。







 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




   



女が目を覚ました。



ベットの脇に置いてあったスマホを確認する。




「やばっ9時すぎてるじゃん!? って日曜だ今日っ......」





ベットから飛び起きるが、今日が休日であることを思い出した女はゆっくりと毛布にくるまる。




「あー、焦った......遅刻でどちゃくそ怒られると思った」



女は胸を撫で下ろす。



「ゲームずっとやってないなぁ......社会人なってからやるきでないし、アンノウンワールドほどガチになれるゲームないし」





彼女の名前は、八雲芹やくもせり



社会人2年目の会社員だ。




彼女は高校の時、アンノウンワールドが発売されると同時にどハマりし、サービス終了される日までトッププレイヤーであり続けた、言わばガチ勢。





その中でもロールプレイ重視、悪役、厨二キャラ設定と言う超めんどくさいタイプの人間だった。




自由度の高いアンノウンワールドでは、PKプレイヤーキルクランが存在していた。



その中には、悪役ロールプレイが好きな人種も多くいた。





しかし芹は一味違った。




彼女は単独でPKしまくっていたのだ。





どこにも属さず、プレイヤーやクラン、果てにはNPCの国家に喧嘩をふっかけまくっていた。




普通は、そんなバーサーカーみたいなプレイヤーなど数の暴力でねじ伏せられておしまいだ。




だが彼女は違う。



圧倒的なプレイヤースキルと圧倒的な課金、それに加えて絶妙なスキル構成により、集団のプレイヤーやNPCの軍勢に互角に戦い続けたら、





ついたあだ名は"孤狼の狂神" "不滅者" "単独殺人鬼"と様々だ。


 




実のところ。




コミュ障すぎてクランに入らなかっただけだ。




ゲームでもリアルでもぼっち。



挙げ句の果てに重度の拗らせ厨二病患者。




その慣れ果てが単独でNPCとプレイヤーを殺しまくるヤバいやつだったのだ。






「まぁいいや、今日は昼まで寝よう......」




芹はそういうと、あくびをする。




ひさびさの休日だ。




会う友達も親も恋人もいない。



どうせ起きていても何もやることないし、眠ってしまおう。



そうして、再び眠りに落ちた。






これが彼女のこちらの世界最後の記憶だ。

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