第10話 セレスSIDE プロポーズ前
「いってらっしゃい~」
「いってきまーす」
静子さんとはパーティ登録をしたけど、敢えて今は専業主婦をして貰う事にした。
A級で凄腕なのは解っているけど、この方が同棲しているみたいで楽しいからだ。
昨日の夜、話を聞いてみたら静子さんは ハルカ姉さんやミサキさん、サヨさん(剣聖、賢者、聖女の母親)と一緒に冒険者をしていたそうだ。
結構な腕前の冒険者だったが、女ばかりの冒険者なので変な男が良く寄ってきた…それで片端から返り討ちにしていたらしい。
そうしたらね、年頃を過ぎても誰も寄って来なくなったそうだ。
それで、冒険者を辞めて普通の街娘になり、旅をしながら、ジムナ村にたどり着き結婚をし、村人になったそうだ。
そんな凄腕の冒険者がなんで奴隷になんてなったのか解らない。
ゼクト―ルおじさんは只の村人なのに…
聞いてみたら、油断していたら薬を盛られたみたいだ。
その話をする静子さんはからは、何やら黒い物が出ているように見えた。
この話は此処で終わりにした方が良さそうだ。
しかし眠いな~。
別に何かしたわけじゃ無い。
ただ、同じ部屋で寝ていただけだ。
静子さんは俺の奴隷だから頼めば『そういう事』もしてくれるだろう。
だが、それはやはり『恋愛』とは違う。
だから、暫くはこの生殺しのままで我慢する事にした。
俺は転生者で、前世の記憶がある。
だから、リダやマリア、メルは子供にしか思えない。
この世界じゃ成人だが、前の世界じゃ未成年。
流石に手を出す気になれない。
だけど、静子さんは『ドストライク』だ。
包容力があって、大人なのに凄く可愛い。
前世の記憶の『未亡人の管理人さん』を彷彿させる美人だ。
だけど、あんな美人でもこの世界じゃ『おばさん』扱いなんだよな。
あの価値が解らないなんてこの世界の男は凄く勿体ない気がする。
◆◆◆
「さぁさぁセレス様、沢山の塩漬けがありますよ…どれから行きますか?」
受付のサリー嬢が張り切っていた。
昨日ギルドに来た際にお金になる塩漬けの依頼のチョイスを頼んで置いた。
この世界に転生して好きになった初恋の人静子さん。
それが家で待っているんだ…
頑張りたくもなるよな。
多分、静子さんに『ロートル』と言ってしまった挽回の為か凄く笑顔で俺に接してくる。
ギルマスと仲が良い冒険者に嫌われたくない、それが本心なのだろう。
偶に口元がひくついている。
「そうだな…これが良いか? うん、これにしよう」
俺は地竜の討伐の依頼を受ける事にした。
「いきなり竜種!」
まぁ驚くだろうな、地竜はワイバーンなんかの亜竜とは違い、本物の竜だ。
竜種の中では弱いとはいえ普通は単独じゃ挑まない、騎士団かB級以上の冒険者20名以上で討伐する物だ。
「まぁ、どうにかなるだろう」
「流石はS級ですね…まぁS級の人は最早人間の範疇から超えていますから、何も言いません、ハイどうぞ!」
「それじゃ行ってきます」
「はい行ってらっしゃい」
地竜がいる場所に着いてから静子さんが用意してくれたお弁当を食べた。
うん、美味い。
俺も料理は出来るけど、前世でいうお子様料理だ。
カレーモドキにハンバーグモドキとかばかり。
こういう煮物とかは苦手だから、本当に美味しく思う。
家庭の味って本当に良いよな。
◆◆◆
「ただいま、地竜2体狩ってきましたから査定お願いします」
「え~と、まだお昼前なんですが…」
S級の俺にはそう難しい依頼じゃない。
俺は収納袋から地竜2体を取り出そうとしたら、頭が出てきた所でサリーちゃんからストップが掛かった。
「待って下さい! そんな大物此処で出されても困ります、倉庫、倉庫で出して下さい! ギルマスも直ぐに呼んできます」
こういう所はS級は凄く便利だ、最優先で何でもして貰える。
「ああっ解った」
俺は倉庫に行き地竜2体を取り出した。
「あの、セレス様これじゃ他の物が取り出せません、少し横にずらして貰えますか?」
「了解した」
仕方なく俺は地竜を横にずらした、まぁ倉庫の半分を占めるから確かに邪魔だ、指示どおり寄せてあげた。
「セレス様、話は聞いた、流石だな、地竜を狩るとは…はぁっ、これ地竜じゃねーぞ!」
「まさか、違うと言って討伐金額を値切ったりしないですよね?」
「ちちが違う…小さい方は地竜だが、それの3倍位ある奴は岩竜だ、地竜が成長して上位種になったものだ、こんなのどうやって狩ったんだ」
「そこは剣で飛び掛かって、バインッて足を斬って、首をズバッと跳ねたら死んだ」
「なんでセレス様は何時もそう、擬音で誤魔化すんだよ」
「守秘だな」
「まぁ冒険者なら誰でも隠し玉は教えたくない、そういう事ですね」
「そういう事だね」
ただ単に本当に飛び掛かって斬り殺しただけなんだが、説明がメンドクサイからこれで良いや。
「それでな小さいほうの地竜は金貨1000枚(約1億円)で即金で払うが岩竜の方は少し待ってくれ」
「別に構わないけど、何で?」
「多分だが、王室で恐らく金貨3000枚位で頭部と骨は買うと思う、残った素材はオークションに掛けるから1週間位お金にするのに掛かるんだ、頼むよ」
「それなら問題ないから良いよ、それじゃ金貨1000枚のうち金貨20枚だけ現金で貰って、残りはパーティの口座に入れて欲しい」
「解った、助かるよ」
これでお金の算段はついた。
勇者パーティから離れた事だし、暫くはゆっくりしますかね。
◆◆◆
俺は宝石店に来た。
「いらっしゃいませセレス様、今日はどんな物を!」
前世なら結婚を申し込む時に指輪を贈るが、この世界ではネックレスを贈る行為がそれに値する。
ちなみにこの世界には給料3か月分なんて決まりはない。
だけど、此処は男として見栄を張りたい。
静子さんに似合いそうなネックレスを金貨10枚の範囲で探す事にした。
このネックレスを上げる行為は『君に首ったけ』という意味から出来たらしいが、どう考えても昔の異世界人が伝えた気がする。
「金貨10枚で黒髪の女性に似合う様なネックレスを選んで欲しい」
金貨10枚に予算をしたのは、この世界の宝石には上限が無く城より高い物がある。
それに高価すぎる物を買ったら、多分静子さんは遠慮して受け取って貰えない。
「そうですな、こちらの緑の石の物は如何ですかな? 一品ものですから二つとありませんし、彫刻もかなり手の込んだ作りになっています」
「それじゃそれを下さい、箱にはリボンを掛けて下さい」
「畏まりました」
宝石商を後にして花屋で薔薇の花を30本買ってと。
ついでにケーキでも買って帰るか…
静子さん…喜んでくれると良いな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます