第9話 夫婦みたいじゃない

久々に冒険者ギルドに来たわね。


懐かしいわね、もう冒険者を辞めて長いわね。


ゼクトが産まれる処か結婚する前だから、もう…うふふっハルカにミサキにサヨと一緒にバリバリ頑張っていたわね。


本当に懐かしいわね。


「これはセレス様、今日はどういったご用件でしょうか?」


流石はセレスくん、Sランク冒険者、Sランクだと順番待ちしないで優遇して貰えるのよね。


「冒険者の登録とパーティ申請をお願いしたい」


「そちらの女性とですか? 失礼ながらもうロートルも良い所じゃないですか? セレス様ならもっと」


ロートルですって、中年でも冒険者している人は居るわよ?


失礼しちゃうわ。


「うふふっ、確かにもうおばさんですわね…ですがセレスくんと組むなら、そうね『元の方が良いわ』登録じゃなくて資格復活申請の方にするわ」


「静子さん、冒険者だったんですか?」


「ええっ、だけどその事は元の旦那も息子のゼクトも知らないわ、結婚する時には辞めていたからね、まぁ二人ともプライドの塊だから黙っていたのよ」


「そうですか? なら此方に少し血を頂けますか? まさか血液登録のないDランク以下って訳じゃないですよね!」


「うふふっ調べて見れば解るわよ」


「はぁ~」


この受付嬢きっと驚くわよ。


うふふふっ。


無理して笑顔を崩さないで待ったわ。


絶対に驚くもの。


あらやだ、ベイ坊じゃない。


あの恰好、ギルマスになったのね…あのベイ坊がねぇ~


「まさか、復帰されるのですか?」


「うふふっ、まぁね、この齢になって良縁に恵まれたから復帰しようと思うのよ、駄目かしらね?ベー坊」


「ベー坊は止めてよ静子さん、これでももうギルマスなんだからさぁ」


「そうね、ごめんなさいね、ベルダーさん、それで私の復活申請は大丈夫かしら?」


確かルールでは一度冒険者を辞めても、実績がある冒険者はある程度優遇される筈よね。


でも、流石にS級は無理だと思うわね。


「ああっ、勿論だともあの『黒髪の癒し手』が復活するんだ反対なんかするもんか!」



「静子さん『黒髪の癒し手』って何? 」


うふふっ、セレスくん驚いているわね。


「セレス様、静子さんも元S級冒険者です!俺の世代の憧れの存在で、回復師(ヒーラー)として右に出る者は居なかったんだ! 流石に同じS級とはいかないが、A級から再スタートにしよう…どうかな」


「うふふっ、構わないわ」


15年もブランクがあって1ランクダウンなら御の字ね。


「そう言ってくれると助かる…それじゃ私はこれで失礼させて頂きます…後は頼んだぞ」


「はい…そのすみません失礼しました」


本当に優しい、それに信頼してくれるのね。


財布を一緒にして私にも自由にお金を降ろせるようにしてくれるなんて、私は奴隷だから、本当は全部セレスくんの物なのに…


これじゃまるで…本当の夫婦見たいじゃない。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る