第8話 幸せな朝


本当に優しいわね。


私が泣いているものだから、セレスくんは私の手を握りながら眠ってくれて…


いつしか手の温もりに安心したのか眠ってしまったわ。


「ん?!…セレスくん?!」


まさか、心配して眠って無いの…


「おはよう」


「おはようございます」


目が合うとセレスくんは私の手を慌てて離した。


「あっ…ゴメン!」


謝る必要なんて無いのに…


「うふふっ良いのよ…私が泣いていたから手を握ってくれていたんでしょう? 優しいね!セレスくんは」


照れた顔で頬を掻くセレスくんは、うふふっ凄く可愛いわ。


セレスくんがお茶を入れてくれて一


本当に私奴隷なのかしら?


まるで、凄い親孝行な息子…ううんこれじゃセレスくんに失礼ね。


優しい恋人と過ごしているみたいだわ。


◆◆◆


「それじゃ一緒に出掛けようか?」


「出かけるってセレスくん、何処に行くの?」


「朝食を食べて、次はギルドに行こうと思う」


「朝から外で食べるんだ凄い…」


そう言えば外食なんてどの位ぶりだろう…もう記憶にも残って無いわね。


「前もって頼めばこの宿屋でも食べられたけど、この辺りは普通にモーニングが美味しい店があるから、そこに食べに行こう」


「私、結婚してから外食なんて殆どした事が無いから楽しみだわ」


「そう、俺は勇者パーティだったから旅から旅で外食か野営での食事ばかりだったよ、とりあえずお腹がすいたからいこう」


「はい」


よく考えたら、久々に外食しようとした時に売られたのよね、私…まぁ良いわ、忘れましょう。


◆◆◆


「此処のモーニングが美味しいって評判なんだ」


凄くお洒落なお店。


こんなお店、男性と来たこと無いわ。


お店に入るとセレスくんが椅子を引いてくれた。


これが恋人という扱いなの…全然違うじゃない。


いや違うわね、ゼクトやゼクト―ルがこんな事をしているのを見た事無いもの。


セレスくんが優しいだけだわ。


しかし、困ったわね。


席についてメニューを見たのだけど、どれを頼んで良いか解らないわ。


「静子さん、モーニングプレートがお勧めなんだ、それで良いかな?」


「ええっ、お任せするわ」


凄く優しいわね。


私が困っていたからよね?


「これ凄いわね、沢山の料理がお皿に乗っているわ う~ん!凄く美味しい」


「良かった!確かに凄く美味しいけど、俺は静子さんの手料理が食べたいな!」


「うふふっ、そう? それなら材料さえ買ってくれれば作るわよ」


「そう、うん凄く楽しみ」


こんな豪華な料理より、私の料理を食べたいのね…


凄く嬉しいわ。


それだけじゃないのよ…


さっきから私を見て微笑んでくれて、目を見て話してくれるの…


しかも熱い視線で…うふふっ、困っちゃう位よ。


「どうしたの?セレスくん、そんなに見つめて」


「いや、幸せだなと思って」


幸せなのは私の方だわ。


「そう、そう思って貰えて私も嬉しいわ」


ただ一緒に食事するだけでも…本当に楽しい。


こんな幸せな時間、初めての経験だわ。





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