第7話 告白
「セレス様、一応これ書類です…まぁ無くしても奴隷紋が刻まれていますから、所有者は解りますから問題はありません、これよりこの女性は貴方の物です…ありがとうございました」
これで私はもう、セレスくんの物なのよね!
これからどうすれば良いのかな~
まさか、まだ私を好きって事は流石に無いわよね…
セレスくんが私を好きだって言っていた時はまだ20代。
まだ、女として…辛うじて終わって無いわね。
だけど、今の私は30代…雲泥の差だわ。
うふふっ、前の状態が腐りかけの果実だとしたら、今の私は完全に腐った状態だわ。
ゼクト―ルでさえ10年以上前から抱かなくなった女。
15歳の器量の良い少年が好きで居る訳ないわよね。
買ってくれたのはきっと同情からだわ…
2人して古着屋さんに来たわ。
最初、セレスくんが選ぼうとしていたんだけど、結局選べなくて私に選んでだって…
よく考えたらそうよね…セレスくんは村暮しだったし、その後は息子と冒険の旅をしていたのだから、多分、服なんてそう買った事は無いわよね。
今思えば『息子たちを頼むわね』気楽に言ってしまったけど、酷い事しちゃってたんだ、私達。
私は、1枚の私に似合いそうな服を選び更衣室へ。
う~ん。
私だって服なんて殆ど買った事ないのよね…これなら無難かな?
「…どうかしら?」
更衣室のカーテンを開いてセレスくんに見せた。
「静子さん、可愛いい! 凄く似合っているよ!」
誰かに褒めて貰うなんて、ずうっと無かったわね
◆◆◆
その後は、串焼きとワインを買って…
「疲れたでしょう?」
そう言われて、近くの宿屋にセレスくんに誘われたのよ。
本当に優しいわ…
私が奴隷商に居て体調が優れないのが解ったのね。
こんな風に気を使って貰った事なんて…無いわ。
◆◆◆
凄く優しいわね、私は奴隷だと言うのに、ワイングラス2つを並べて注ぎだし、串焼きをお皿に並べて…
しかも、この部屋ベッドが2つあるわ。
奴隷は床、高級奴隷じゃ無ければそれが当たり前なのに…
本当にセレスくんは優しい…昔のままだわ。
だけど勘違いしちゃ駄目。
今の私はセレスくんの奴隷なんだから、けじめはつけないとね。
私はすぐに三つ指立てて跪いたのよ…
「こんな草臥れた奴隷を買って頂きありがとうございました、これからは誠心誠意…」
「静子さん、そんな事しなくて良いから」
「うふふっ私…奴隷ですよ、こうするのが当たり前、ううっ」
どうしてなのか解らない…
今迄、泣いた事は無かったのに…
セレスくんを見ていると涙が止まらなくなって…
「泣かないで下さい、落ち着くまで待ちますから…落ち着いたら何があったのか話して下さい」
困らせたくないのに…涙が止まらなくなったの…
「ううっ…はい」
それだけ伝えるのが精いっぱいだったわ…
困った顔で私の背中を擦ってくれるセレスくんに甘える様に私は年甲斐もなく泣き続けました。
◆◆◆
ようやく気持ちが治まってきたので…
セレスくんには説明しなくちゃね。
「私、旦那に売られちゃったんです」
セレスくんは驚いた顔になったわ。
「売られちゃったって、セクトールおじさんにですか? 国から沢山のお金を貰ったんだからお金に困るっている訳じゃないですよね」
セレスくんにしたら複雑よね。
元夫もセレスくんには優しかったからね。
尤も、幾ら性格が悪い元夫でも『おじさんカッコ良い』を連呼されて居ればそうなるわよ。
それに一時金を貰って裕福なんだから、可笑しいと思うわよね。
「そのお金も、元夫が使っちゃったから、多分もう無いわ」
私はセレスくんにありのままの事を話した。
お金を手にしたセクトールは、人が変わり賭け事や女、お酒に嵌まった事。
そして浮気し放題だった事も全て、そしてそれを咎めたら売られてしまった事まで…全部。
「酷い話ですね、ですがそれならゼクトに手紙でも書けば」
普通なら、そう思うわよね。
「駄目よ、あの子は父親に懐いていて私を嫌っていたから」
真面目になって欲しくて言っていたのに最後の方は『煩いババア』だもん、まぁ無理だわ。
「セクトールおじさんは真面目だと思っていたんですが、そんな事になっていたんですか?」
「お金があの人を変えたのよ…でもお金が無くても、あの人には私に対する愛情はもう無かったのよ」
複雑そうな顔でセレスくんは私を見つめている。
そうよね…困るわよね。
「そう言えば俺が子供の頃『静子おばさんと結婚したいな』そう言った時『そうか、セレスお前が15歳になる頃には彼奴は良いババアだ…そうだな金貨1枚で譲ってやるよ』そんな事言っていた気がします。元からそんな雰囲気はあったかも知れませんね」
「ええっ、そうね」
「しかし、セクトールおじさんに腹が立たないですか?」
「うふふっ腹は立つけど、仕方ないわ…それにあの人も…どうせ地獄に落ちるわ」
税金を支払うお金迄使ったんだもの、奴隷なんて比べ物にならない地獄が待っているわ。
「なんだか言いづらい事を聞いてすみませんでした」
すまなそうな顔しているけど、気にしなくて良いのに…
「うふふっ、良いのよ、こんなおばさんを買ってくれたんですもん、嬉しいわ」
そんな潤んだ目で見られると、困っちゃうわ。
「そんな静子さんはおばさんじゃ無いですよ」
「そう? そんな事言ってくれるのはセレスくんだけですよ、うふふっ」
お世辞でも嬉しい物ね、相手がセレスくんだからかな?
「そんな事ないですよ、静子さんは本当に素晴らしい女性です」
全く、子供の時から、そうんだから!こんなおばさんときめかせて、どうするのかな?
「うふふっ、そうそれなら、何でもしてあげるわ、美味しい物でも作ろうかしら? あらっその前に私すでにセレスくんの奴隷だったのよね? 何かして欲しい事ある?」
「それなら、その恋人か夫婦の様にしてくれると嬉しいです」
「嫌だわ、そんな冗談、こんなおばさん捕まえて…」
流石に…冗談よね?!
倍以上歳の差があるのよ…
「本気ですよ…俺子供の時に告白したことあるでしょう?」
確かに言われていたわよ…だけど、あの時のセレスくん5歳だったし、確かに花束やお菓子を貰った事はあったけど…
ハァ~よく考えたら、あれが冗談な訳ないわよね。
両親を失った、セレスくんが『物をくれる』んだもの、その重みが解らない筈はないわ。
子供なりに一生懸命だった。
そうじゃない?
それに、いつの間にか、こんなに大きくなって...
「だけど私、セレスくんの倍近い齢よ? セレスくん美形なんだから、可愛い子が放っておかないでしょう? ほら幼馴染の子たちだってね」
「あははっ、それなら全員ゼクトに取られちゃいました」
あの娘たち、本当に見る目が無いわね。
息子のゼクトとセレスくん…普通にセレスくんの方が良いじゃない?
優しくて、働き者で、しっかりしているし…凄く良い子なのに…
「馬鹿ね!ゼクトなんかよりセレスくんの方が絶対に良いのに。あの子たち本当に見る目がないわ、それなら、そうねセレスくんが『本当に好きな子』が出来るまで、その間恋人になってあげるわ」
「ありがとう」
顔が真っ赤だわ。
本当に嬉しそうな顔しちゃって、わたしはおばさんなのよ!
こんなにときめかせて、どうするのよ!
私まで顔が赤くなって来たわよ。
「良いのよ、私にとって、今まで出会った男のなかで一番素敵な子だから、寧ろお礼を言うのは私の方だわ...あっ」
セレスくんが私の手をとり繋いできました。
「それでもありがとう」
だけど、本当に良いのかな...
自分の息子と同い年の相手なのに…だけど、きっとセレスくんもそのうち…飽きるわよね…
そうしたらお母さんみたいにしてあげれば良いわよね。
これから、セレスくんとの新しい生活が始まる。
青い空も、爽やかな風も、全部が気持ち良いわ。
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