第15話 流されても仕方ないじゃない?!


若いって凄いわね…


ううん、若いからだけじゃない…セレスくんが凄いのよ。


毎晩、毎晩求められて…凄く女としての自信が沸いてくるわ。


気のせいか少し若返った気がするのよね。


新婚みたいなものだから仕方ないけど…


そろそろ、今後について考えるべきよね…うん!


◆◆◆


「セレスくん、それで今後どうするの? なにかしたい事とかないの…」


セレスくんの腕の中で言う事じゃ無いかも知れないけど聞いてみたわ。


ベッドの中で腕枕されて髪を撫でながら笑顔でセレスくんは答える。


「う~ん特にやりたい事も無いな…」


「だけど、男の子なんだから夢とかあるでしょう? ゼクトなんか欲望の塊だったわよ…」


「本当に無いんだよ…だって俺の夢は静子さんとの生活だし、その夢は叶ったじゃない?! それに冒険者としてもゼクト達と一緒に戦っていたせいかS級になれたしもう充分って感じだよ」


そう言えば、セレスくんはうちの馬鹿息子にパーティを追放されたんだったわね…恨んで無いのかしら?


「そう言えば、セレスくんはうちの馬鹿息子にパーティ追放されたのよね?悔しいとか恨みとか無いの?」


「う~ん、確かに腹は立つけど?! そこ迄恨みとかないな」


「本当に?」


セレスくんの話を聞いた限りでもかなり、酷い事していた気もするけど?


セレスくんは優しいから我慢しているんじゃないの?


「本当だよ! ゼクトは静子さんの子供だし、他の皆も村でお世話になった人達の子供だから、本当の意味で嫌いになれない。嫌な事も沢山あったけど思い出もあるからね、ムカつく事を言われても『静子さんにゲンコツ喰らって泣いているゼクト』や『お漏らしして泣いているマリアの顔を思い出したら』…寧ろ笑いを堪えるのに困った位だよ! 幼馴染だから『迷惑かけられたけどまぁ良いか』位かな…静子さんが、ゆっくりしていたのにハルカさんに『食堂手伝ってよ』と駆り出されるのと同じ…まぁそんな物だよ」


「少し違うと思うけど…セレスくんが良いなら、まぁ良いわ」


相変わらず、本当にセレスくんは誰にでも優しいわね。


「それに俺は、ゼクトのパパみたいな者だからね! この位の我儘なんて事は無い」


「パパ…あっ、そうね、私の夫という事は…そうね」


多分、もう会う事も無いと思うけど、馬鹿息子がセレスくんを親父とかパパとか呼ぶのを想像しちゃったわ…どんな顔をするのかしらね…うふふっ、見たいと思うのは意地悪ね。


「うん、だから腹は全く立たないよ」


「まさか、小さい頃からゼクト達の面倒をよく見ていたのも、そのせい?」


「少し…はあるかな…この機会だから、話すけど?! 俺、転生者なんだ」


「へぇ~珍しいわね、最近は余り生まれないって聞いたけど…」


「転生者って言っても、軽いタイプでね、断片的な絵本みたいに前の人生の記憶が偶に頭に浮かぶだけ、特に何かの能力を持ちこしているタイプじゃないよ…その絵本みたいな記憶では俺は、今の静子さんより少し年上で家族と暮らしていたみたい」


「そうなのね」


転生者だったのね、だったら辻褄があうわ。


カズマやハルカの所で変わった料理を作ろうとしたり、やたら本を読むのが好きだったのもそのせいなのね。


まぁ、そんなのは関係ないわね。


「そのせいもあって、皆を子供にしか見えなかったのも、あるかも知れない『子供のやった事だから、まぁ良いや』こんな感じで腹が立たないんだ」


「そうなのね!だから、あんなにませていたんだ…」


「うん、だけどあくまで記憶があるってだけで、静子さんを好きになったのも愛しているのも俺だから…最初は『良いお母さんだな、羨ましい』そう思っていたんだけど、何時しか『静子さんと結婚したい』そう思う様になって…ね」


うふふっ、凄いわね…それなら本当に10年以上、私が好きだった。


そういう事よね!


「あれっ…そんなに私が好きなら…セレスくんはなんで奴隷商に居たのかな? 可笑しいわね…」


そうよ、私がそんなに好きなら、あそこに来るのが可笑しいわ。


「葛藤かな?」


「葛藤?」


「静子さんは俺にとって理想の女性だよ!だけどお世話になったセクトールおじさんの奥さんだし、ゼクトのお母さんだから『他に目を向けるべきなのかな』そう思ったんだ!お守りみたいに金貨3枚は手放さずに持ってはいたけど『幸せに暮らしているのに、割り込むのはどうなのか』とか金貨を出しても『なに言っているんだ、冗談にきまっているだろう?そう言われるんじゃないか』とかね」


「そうね、だけどあの金貨1枚の話は冗談じゃなかったと思うわ!本当に譲る気だったのよ…ハァ~今だから言うけど、あの時にはもう夫婦関係は冷めきっていたのよ、あっちの方も、もう完全にレス状態だし、ゼクトと一緒に良く貶されていたわ…だけど金貨1枚よね…」


「セクトールおじさんは結構、ズルいから『もう少し出せ』そう言われる可能性が高いから、余分に2枚用意していたんだよ」


「うふふっセクトールなら言いそうね」


「まさか、奴隷商に静子さん本人が居た時は凄く驚いたど」


「私も驚いたわ、まさかセレスくんが来たなんて…それじゃセレスくん、今度は私が上になってあげる」


「静子さん…」


私も流されやすいわね…


だけど、10年も想ってくれて、しかもその相手がセレスくんなんだもの…仕方ないじゃない!





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る