第5話 再会
もう駄目かも知れないわ。
ハルカ…ミサキ…サヨ…
昔は楽しかったわね…うふふふっ。
無理して結婚なんてするんじゃなかったわね…
女同士、結婚なんてしないで馬鹿やっていた方が幸せだったのかも知れないわ。
ジムナ村の人が此処に来れば助かるかも知れない。
考えるのはよそう…どう考えても来るわけないわ。
うふふふっ、冒険者を辞めたのが間違いだったのよ…
結局、ハルカ以外幸せになれていないじゃない。
そのハルカだって…まぁ私よりは幸せだわ。
何処で間違えちゃったのかな?
何処で…
ああっ、もう考えるのはよそう。
幾ら考えてももう無駄だわ…
ご飯を食べていないせいか頭がぼうっとしてきたわ。
『僕、大きくなったら静子おばさんと結婚したいな』
うふふっ、純真な目で言われたのはあれだけだったのかも知れない。
あの時、あの馬鹿親父は金貨1枚で譲ってやるとか言っていたのよね。
顔を赤めて『本当?』とか言っていたわね…
男の子なのに手が器用で花で冠を作ってくれた事もあったわね。
ませていたわね…よく花も摘んできてくれたし、親が居ないから大変だろうに、お芋やら食べ物、挙句は貴重な砂糖菓子までくれたわね。
うちの息子のゼクトとは大違い。
うちの息子は、私の事をババア呼ばわり…全然違うわ。
今思えば、色白で綺麗な子だったわね。
うふふ、寂しい人生だったわ。
『好きです』『結婚して下さい』 真剣な目で言われて困ったのよね!
だけど…他にも…まぁ良いわ。
◆◆◆
「あの、セレス様今日はどういったご用件でしょうか?」
「ちょっと女性の奴隷を見させて貰おうと思ってな」
「セレス様は勇者パーティですよね、大丈夫なのですか?」
またお客が来たみたいね。
まぁカーテンから先、此処に来ることはないわね。
声が凄く若いし多分カーテンすら開かないわ。
「セレス様は勇者パーティですよね、大丈夫なのですか?」
「つい先日、勇者パーティ、希望の灯(ともしび)は首になったんだ、今の俺はただの冒険者、セレスだ」
「そうでしたか」
何処かで聞いた声の気がする。
「ちょっと女性の奴隷を見せて欲しいんだ」
「良い時に来られました、今はかなり多くの女奴隷がいましてエルフから元令嬢まで思いのままです…さぁさぁどうぞ!」
「いや、俺が見たいのは、家事奴隷をはじめ価値が低い女奴隷を見たいんだ」
「家事奴隷? 失礼しました、確かに一人になられたら家事でお困りになられますな、このドロマ勘違いしました、それじゃあ、こちらのカーテンから先が家事奴隷をはじめとする価値の無い女奴隷でございます…どうぞご自由にご見学下さい」」
此方を見に来るんだ…
だけど希望を持っても無駄だわ。
此処には私以外に3人居るもの…
私よりはまだ若くて20代後半。
選ぶならあっちを選ぶわね。
「酷いな、ベッドも無いし、まるで動物扱いだ」
そんな声が聞こえてきたわ。
私の檻は、家事奴隷の檻の中でも一番奥。
来るわけないわね…
此処に来て空が見られる。
自由に歩ける…それがどれ程幸せな事だったのかよく解ったわ。
どうやらこっちに来るみたい。
誰でも良いわ、買ってくれないかな。
「嘘…だ!」
懐かしい声…
「静子さん…?」
「?!…セレスくん…なの?」
小さい頃から私を好きだって言っていた男の子。
セレスくんが私を驚いた顔で見つめていた。
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