第25話
エリに告白された後から、ユイトは悩んでいた。
奏一の誕生日が近づいてきているので、何かプレゼントをしたいと思ったのだが、何をあげたらよいのかということが思いつかなかったのだ。
エリが、お祝いをしてあげたらと言っていたので、付き合ってもいないけれど、奏一と一緒にお祝いができればいいと計画を頭の中で練り始めたのだった。
七月に入ってから、奏一には当日は予定がまだないなら、空けておいてほしいと早めに言っておいた。
美味しい酒を一緒に飲みたいなと思ったので、何がいいだろうと考えたところ、店の先輩が彼女の誕生日に店においてある酒を、自腹で購入したということを聞いたことがあったので、ユイトもその方法を手本にさせてもらおうと思った。手本というか、ユイトなりのオリジナリティーに欠けるところだが、思いつかないのだから仕方がない。
そして、肝心のプレゼントだ。
ユイトは仕事前に街をぶらぶらと歩いて探してみたが、どれがいいのかわからない。ネクタイとか、そういった類の小物は奏一も職業柄よく使うだろう。けれど、そういうものをプレゼントするのもどうだろうかと思う。
とあるデパートの財布やカバンが売られているショップを見ていたら、キーケースが目に入った。キーケースはユイトも愛用している。自宅のカギに実家のカギなどを付けているのだ。
そこで、奏一がカギを財布に入れていたことを思い出した。あまり人様のそういったカギや財布の様子などを気にしたり口を出すのはいかがなものかとも思うが、たまたま目に入ってしまったのだ。そこで、キーケースを持ち歩くことも便利だから、プレゼントにしようかと考えた。メーカー品だが値段はさほど高過ぎるというほどでもない。
もしかしたら、奏一は好きでカギを財布に入れているのかもしれない。その可能性も高い。キーケースを贈ったら、喜んでくれるだろうか。
売り場のキーケースを目の前にして、ユイトはしばらく悩んだ末、黒のシックなものを購入することに決めた。こういうことを自身の気持ちでするのは久しぶりだったし、浩一郎のことでモヤモヤしていたことも忘れ、ユイトは一人柄にもなく内心ウキウキした。
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