第44話

 露わになった奏一の上半身は、思った以上に鍛え上げられているように見えた。逞しくて、頼り甲斐がありそうだ。普段はそうは見えないのが残念だとユイトは思う。

 そして、その逞しい体に再び縋り付くとユイトはとても安心した。

直に伝わる奏一の体温や鼓動を感じ、このひと時を独占できているのだと思うだけで、ユイトは感情が昂ってくる。

『俺は、何て幸せなんだろう』

 懸命に、奏一の突き上げに耐えながら、嬉しさに涙が出そうになった。

「俺、嬉しいよ……あんたと、こうなれたのが……ずっと……待ってたから……」

 ユイトは激しく揺さぶられながらも、息絶え絶えに言葉を紡いだ。

「本当?それは俺も嬉しいな……俺も、ずっと君を抱きたいって思ってた、からな」

 奏一が一層激しく突き上げてくる。

「あっ……あぁっ……」

 ユイトのものは、再度放ちたそうにして天を仰いでいる。もう限界は近い。

「奏一……好きだ……」

 必至に奏一にしがみつきながら、ユイトがうわ言のように呟いた。

 それを聞いた奏一は、ユイトを揺さぶりながらふっと笑った。

「初めて、名前呼んでくれたね。凄く、嬉しい……」

 そう言われて照れ臭かったが、ユイトにはもう返答をする余裕がなかった。

「あっ……はぁっ……あぁっ……」

 ユイトは、奏一の背中を一層きつく抱きしめ必至に快感の波に耐えた。

「愛してるよ、ユイト君……君が可愛くてたまらない……」

「俺も……だ……アンタがいれば、それでいい……」

 ユイトは、幸せの高みへと昇っていった。

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