続々々々々々々・後輩と子供の頃遊んだことがあるとか気づくわけがない

 「あぁそういえば多分その公園、子供の頃遊びに行った事があるな。」


 「確か10年位前なんだけどさ。迷子になってる女の子がいてさ。一緒にお母さんを探してあげたけど全然みつかんなくてさ。最後警察来て大騒ぎだよ。そういやあの子の名前なんつったっけな?みさちゃんって呼んでたけど、ナカオミサチ?いや…なんか変だな…」


 しおんはミサチと言うのは変な名前だよな言おうとしたがどこか聞いたような響きに事実に気が付いた。


 「ナカオミサチと中野美咲ってなんか響き似てないか…?」


 シオンがミサキの方を見ると車内で暗がりにもかかわらず目に見えてわかるほど顔が真っ赤だ。


 首筋まで真っ赤だ。


 そんなミサキの姿を見たシオンは一つの結論に気が付く。


 ___________もしかするとあの子が美咲だったんじゃないか?


 「アハハ…って美咲?」


 シオンが気が付いてくれてうれしいのか、当時のことを思い出して恥ずかしいのかわからないがミサキは目にいっぱいの涙をため今にも泣きだしそうな顔で唇を噛みしめてそれが零れ落ちないようにしている。


 「うぇーんせんぱぁいぃ」


 狭い車内でミサキはシオンに抱き着いた。


 「おっおい、ちょっと待て…」


 突然のことで車を道路の真ん中で止める。


 もしかしたら事故を起こしてたかもしれないというドキドキと体にまとわりついているミサキへのドキドキとでシオンの心臓はかなり早くなっている。


 手はハンドルにかけたままだった。

 シオンは深夜だし緊急事態だから仕方がないと言い聞かせてそのまま車を停車させる。


 ミサキは抱きしめた手を緩めるでもなく「ひっく」「ひっく」と、息を詰まらせながら泣いている。

 落ち着かせるため、できるだけ妹にしているのと同じように腕を回して背中をポンポンと軽く叩いてやった。




 時間にして10分程度だったがシオンは無限にも感じていたが、場所が場所だと思いはじめ嗚咽のおさまっていたミサキに声をかける。


 「…落ち着いたか?」


 「…はい。」


 ミサキの顔には涙の流れた後があるが気がつかないシオンは急いで車を道路の脇の方へと寄せた。


 「それで、いつ気が付いてんだよ。」


 「最初顔を見たときは気づかなかったんです。でも名前聞いてすぐ気が付いて…それでミサキは、ミサキは…」


 「ごめん。その、あの時のみさちゃんだって気が付かなくて…」


 今の今まで気が付かなかったシオンは謝ることしかできない。


 「先輩は悪くありませんっ。わたしが変なんです…子供の頃の事ずっと覚えてて…」

 

 「でも俺はその時12歳で美咲は8歳とか9才だろ?その美咲が覚えてて俺が』忘れてるのもなんだかかっこ悪いというか恥ずかしいというか、な。」


 「私が覚えてるのが変なんです!」


 「先輩はそんな昔の事ずっと覚えてて私の事気持ち悪くないんですか?」


 _____________気持ち悪い?美咲は何を言っているんだろう?


 「気持ち悪いなんてことはないけど、そうだな、むしろうれしかったかな?」


 「せんぱいっ。」


 と、今度は普段のように飛びついてきたミサキをいつものように制止した。


 「とりあえず、今日はもう遅いおうちもすぐそこだろ?送ってくからまた今度ちゃんと話そう。」


 「先輩は美咲の事が嫌いで、今度にしたいんですか?」


 シオンはミサキの発言に驚いた。

 人懐っこく人当たりの良いミサキが人を疑ってかかったりしているのが珍しかったからだ。


 「いや、そうじゃないんだ。もう時間も遅いし、おばあちゃんも心配してるだろ?こんな遅い時間に、女の子連れまわしたりできないよ。」


 「おっ、おばあちゃんには、その友達のうちに泊まるって言ったので大丈夫です!」


 何が大丈夫かもわからなければ友達のうちに泊まると言う嘘も理解できなければ、嘘をついたことそのものもよくわかっていない。


 「あーハイハイ、なんで嘘ついたかもよくわからないけど、とりあえず俺にも時間がほしいから少し考える時間がほしい。」


 みさきは小さく「わかりました」とだけ言うと、それからは無言で、家まで着いた際も口は開かずに家の中へと消えてしまった。


 取り残されたシオンは一人車の中で呆けていたが、そのままミサキの家の前にずっといるわけにもいかずに、その場を後にした。


 帰り道


 シオンはミサキが何をしようとしていたのかとそのことばかり考えていた。


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