続々々・後輩と子供の頃遊んだことがあるとか気づくわけがない
ミサキが嬉々として喜ぶ様子をみて自分の心情は悟られないと安心したシオンはハザードを止めてウィンカーを出すと再度、車を走らせた。
幼馴染であるアイと隣同士で同い年であるから距離感がかなり近かった。
そのため女性と物理的に距離が近くなったりしてもあまり緊張したり興奮したりという事はなかったが、アイと別れて久しいシオンは少なからずミサキの警戒心のない行動にやられていた。
『100メートル先信号を右方向です。』
すると突然車内に地図アプリの音声が大きな音で流れた。
「わわっ」
地図アプリのナビゲーションを使うのが初めてだったミサキは急に流れた大きな音に焦って声をあげると、音量を無音まで絞る。
音がうるさかったせいかと思ったシオンだが実際には自分が案内をしたかったのだろう。
「せんぱいっ」
「はい!」
「次の信号右です!」
「あはは、りょうかい。」
つい「はい」などと返事をしてしまった自分に何を言っているんだろうと変に焦ったシオンは一連の流れで笑ってしまい、それによって少し可笑しくなり平静を取り戻した。
「目的地周辺です。案内を終了します。」
終始ミサキは表示されている文字を読み上げていたので最後おかしなことを言うが本人は気が付いていない。
到着した場所には小さいがロータリーがある。
どうやら駅のようだ。
___________駅前こんな感じだったのか…それにしてもミサキのうちはこんなに駅から近いんだろうか?
辺りを見回すと小さな商店街があり街頭もあってそれなりに明るい。
到着するまでに一軒だけだが、ちゃんと開いているチェーンのコンビニもあった。
そこから少し離れた場所にあたりに大きな建物がないためひときわ大きな建物がある。どうやらビジネスホテルのようだ。
シオンは祖父や伯父の家に行く際は毎回車で来ているので駅前には来たことがない。
到着までに見覚えのある光景を見ていたからそんなに離れてはいないであろう伯父の家の周りは家と家の距離も離れている場所が多く田んぼや畑ばかりで高速道路で見たように遠くに山が見えたりしているので、意外に思う。
それを考えると駅前はそれなりに栄えていると感じた。
「美咲のうちってこの辺なのか?」
「いえ、わたしのうちはここから自転車で10分くらいですよ?」
どうやらミサキが地図アプリに入力していたのは駐輪場だったらしい。
「美咲…お前、毎日こんなとこから12時くらいに自転車で帰っているのか?」
「そうですよ?」
ミサキは降りる準備を始めている。
いつも深夜0時くらいにここを走っているというのなら今と大して変わらないがこんな深夜遅くに自転車で一人で帰すのにシオンは不安を覚える。
「美咲、自転車どこにある?多分入ると思うから乗せて家まで送るわ。」
「そんな…さすがに悪いですよ。」
「でも、なんか危ない目にあったりしたら俺が嫌なの!」
シオンはつい強めに行ってしまう。
「お気持ちはうれしいんですけどいつも帰ってますし、それに逆に人がいないから安全ですよ!」
家までついてこられるのが嫌なのか、家の場所を知られるのが嫌なのかと一瞬よぎったシオンはそんなはずはないと自分に言い聞かせる。
「ハイハイ、そういう問題じゃないから、家まで送っていく。俺が送りたいの!」
「でも…」
そこまで言ったミサキは少し考えると、
「ありがとうございます。それじゃお願いしますね。」
と、少しうつむき小さな声で伝えた。
ミサキの案内に従い駅の駐輪場まで車を回すと後部座席を目いっぱい前まで出して前に倒す。
よっぽど大きな自転車でなければ横倒しにすれば積めるはずだ。
車は少し汚れるかもしれないがレイジはこんなことでは怒らないし掃除をすればいいだけだと自転車を取りに行っているミサキを待った。
すぐにミサキが現れたのでその青い自転車を横倒しで押し込む。
何とかバックドアは閉まってくれた。
「よし、帰るぞ。自転車で10分なら5分もかからないだろ?」
「車汚れてないですか?大丈夫ですか?」
「あーハイハイ、親父はアウトドア好きだし車は汚れるため?にあるからいいんだよ。そんなこと気にするな。」
レイジがアウトドア好きであるのは事実だがこの車を買ってからそういった場所には出かけていない。シオンは適当な話をして誤魔化す。
「ほら、早く乗れ、置いてくぞ?」
と、言うと、車に乗り込む。ミサキもそれを追って車に乗り込んできた。
「今度はアプリなしでナビしてくれるだろ?」
「はいっ今度は大丈夫ですっ」
いつも通り元気いっぱいのミサキに少し安心すると、車を走らせた。
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