続々々々・後輩と子供の頃遊んだことがあるとか気づくわけがない

 ロータリーを回り先ほど通ってきた小さな商店街を戻り右折すると、住宅街が見えた来た。

 家と家との間隔は伯父の家の近所ほど空いているわけではない。


 伯父の家に行く際には通ったことがない道だがシオンは何故か既視感を感じる。


 「なんかこの辺、通ったことがある気がするな?」


 「…多分この先にちょっと大きめの公園があって、そこに行った事があるんだと思います。」


 何気なくボソッと口に出した言葉に対するミサキの発言に違和感を覚える。

 ミサキであれば「おじさんのおうちこの辺なんですか?」などと、喜びそうであるがこの時シオンは違和感の正体に全く気が付かない。


 と、言うのもシオンは実際に幼少期その公園に遊びに行った事があったからだ


 ___________公園…じいちゃんちに預けられてた時毎日のように軽トラで連れて行ってもらってたっけな。


 シオンは亡くなって六年も経つ祖父の顔をすぐに思い出せない事に少し悲しくなった。

 それは昨日、七回忌法要で祖父の顔写真を見ていたから余計にだ。


 「あぁそういえば多分その公園、子供の頃遊びに行った事があるな。」

 

 10年も前で思い出になってから久しい当時のことを記憶を頼りに思い出す。


 あれは確か…


___________________________



 12歳になったばかりの当時のシオンは、スマートフォンなどは与えられておらず活発で一つの場所にとどまることができず何かをしていなきゃ気が済まないほど体力を持て余していた。


 活発だと言うのに、乗り物にはめっぽう弱い。一つの空間に閉じ込められ動けないためであったかもしれない。

 そんなシオンはレイジの父である祖父の家に預けられで最初の1日くらいは家の近所を探検したりしていたが見たこともない虫に恐怖を覚えてしまう。


 それでも退屈だと言うから畑に連れていかれ畑仕事を手伝わさせられたりしていたが、それも飽きてしまい、つまらないつまらないと駄々をこねた。

 それはそれは盛大に駄々をこねた。

 もう来年には中学に入るというのに仰向けになり手足をバタつかせ駄々をこねた。

 その姿は、殺虫剤をかけられのたうち回る虫のようだと思った祖父だがシオンはそんなことは全く覚えていない。


 「どっかいきたい」「どっかいきたい」と耳にタコができるほど聞かされた祖父かなりの苛立ちを覚えたが普段は会わない孫のわがままと仕事を早めに切り上げて公園に連れて行ってくれた。


 そこは、まだ子供のシオンからすると、とても大きな公園で遊具や噴水や池に遊歩道があり、都心にはなかなかない大きな花畑や川が流れていたりと、自然がいっぱいで都会育ちのシオンは見たこともない物が多く心を踊らされた。

 中でもかなり長い滑り台にシオンは心奪われた。


 小学校六年生にもなって恥ずかしいと、興味を惹かれながらも滑らずにいたが祖父の「詩音はああいうのは、嫌いか?」の一言に一度滑ると何度も何度も飽きるまで滑り続けた。


 公園に初めて来た次の日、シオンは朝から公園へと行きたがったシオンだが祖父は畑の世話を何日もさぼることができず明日以降もこれが続くのかと思い小学校六年ともなれば多少の分別もあるしシオンの足でも30分ほどでつくだろうと、「水場には一人で近づくんじゃないよ。」と、だけ注意し一人で公園に行かせた。

 

 シオンは、大人が使うようなウエストポーチに持たされて祖父の家を出た。

 中には水筒が入っている。


 炎天下の中歩き続け公園に到着するとすぐにそこへ向かった。


 滑り台だ。


 シオンは階段があるというのにあえて芝が植えられて滑りやすくなっている全力で登る。


 そんなことが楽しくて仕方がなかったのだ。


 小高い山を頂上まで登るとあたりの景色が一望できる。


 大人にとっては大した高さではないが子供で、しかも都会育ちのシオンにとってはその景色に大きな達成感を覚える。


 幸いにも誰も並んでいなかったので我先にと滑り台にのったシオンは滑り出す。


 いわゆるローラータイプの滑り台でそこまでスピードが出るわけでもないが汗ばんだ肌を撫でる風は気持ちがよかった。


 が、目にごみが入ってしまい目をつぶり手と足でとっさにブレーキをかけて止まった。

 

 《ドスンっ》


 目をこすっていると背中に大きな衝撃が背中に伝わる。


 「うわっ」


 という声が後ろから聞こえたかと思うと、衝撃に体を支え切れなくなったシオンはそのまま再度滑り出してしまう。

 

 目に入ったごみのせいで目を開けていられなかったシオンは目を瞑っていたので後ろから来た何かが何なのかも確認できないまま何が起こったかもわからず高い場所から落ちたような感覚だった。

 すぐに後ろにあった何かの感覚がなくなり起こしていた上半身を寝かせてしまう。


 そしてスピードが落ちてきたかと思えば《ズドン》と音を立てて滑り台の下に落ちた。

 そのまま《ゴツン》と滑り台に頭をぶつけてしまう。


 涙でごみが流れ出したのか目を見開いたシオンは滑り台を枕にするような形で天を仰いでいた。


 胸の鼓動が早くなりスピードはなかなか緩まない。

 

 空には雲一つなく真っ青で、太陽だけがサンサンと輝いていた。


 突然の出来事に何も考えられなくなっているシオンに第二の悲劇が襲い掛かる。


 今度は音を立てなかったが頭にやわらかい衝撃が伝わると、目の前が薄暗くなった。


 何かを通して太陽の光だけが見える。


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