続々々々々・後輩と子供の頃遊んだことがあるとか気づくわけがない

 突然シオンの顔の前に黒い影が迫って来た。


 《バシンっ》


 とっさに目を閉じたシオンは、顔に走った痛みに驚き起き上がる。


 「きゃっ」


 顔の前にあった何か布のようなものが擦れるのを感じた。


 とっさに後ろを振り返ると滑り台の一番下、平らになってきている場所に女の子が今にも泣きそうな顔でスカートのすそを押さえながら座っていた。


 「おまっ…えっと、ごめんなさい。」


 その表情に俺は悪くないお前のせいだろと怒りたくなったシオンだが目の前にいるのは仲のいい幼馴染ではなく見ず知らずのそれも明らかに年下の女の子だ。


 状況はわからないが自分が悪いのだろうと、とりあえず謝った。


 「えっと、立てるか?」


 シオンが手を差し出すと女の子はその手を取って滑り台から降りた。


 表情は変わらず半べそをかいたままだ。


 シオンはここまで起きた出来事を思い返して何が起きたのかと考える。


 滑り台の途中で止まっていたシオンに後ろから滑ってきたこの女の子が衝突して二人で勢いよく滑り落ち、途中で女の子は止まったがシオンは止まれずにそのまま加速。

 空を仰いでいたシオンを心配に思った女の子が滑り台を下りると上手く止まれずに頭にお尻から突っ込んだ。

 その際にスカートがめくりあがりシオンの顔を覆っていたのだ。


 なんとなく状況を察したシオンは先ほど女の子のお尻が当たってだあろう頭をなでる。

 特に痛みは感じない。


 「ごめん。」


 泣いているのをなかったことにしたいのか女の子は目をこすって涙をぬぐっている。

 その姿にシオンはとりあえず謝ったがなかなかそれは止まらない。

 このままではらちが明かないと近くにその子の親がいないかと辺りを探すが見当たらない。

 とりあえずこの場を何とか乗り切らねばと思ったシオンは、辺りをを見回した時に見つけた木陰に女の子の手を引いてそこへ行くと座る。

 

 「ほら、お前も座れよ。」


 女の子はそれに従いシオンの隣に腰かけたからは未だに泣き止まない。

 どうしようかと思ったシオンはウェストポーチから水筒を取り出すとふたを開けて中の麦茶を注いで女の子に渡した。


 「つめたいからのみな?今日はあっついからうまいぞ?」


 女の子は手に持ったコップとなったふたに注がれた麦茶を見つめていたがそれに口をつけると一気に飲み干した。


 「おいしいっ!」


 女の子の頬には涙の流れた後が残っていたが満面の笑みで笑ってくれた。


 「お兄ちゃんありがとう。」


 そういうと女の子は飲み物が無くなりふたに戻ったそれをシオンへ返した。

 シオンもそれに麦茶を注ぐと一気に飲み干してウェストポーチにそれをしまった。


 「君は今日、ひとりできたの?」


 ぶんぶんと女の子は首を振る。


 「パパとかママいないのか?」


 「ママと一緒に来たけどどっか行っちゃったの…」


 女の子は迷子だったようだ。

 シオンの質問にそれを思い出したのか女の子は表情を曇らせ始める。

 また泣かれたら焦ったシオンはいつも幼馴染が落ち込んでいた時にしているように女の子の頭をなでる。


 「それじゃ、おれが一緒にママ探してやるから安心しな!」


 幼い女の子を連れた小学生のシオンがこの広い公園で必ずしもどうにかできるはずもないのだが根拠のない自信で力強く言う。


 「うんっ!」


 その根拠のない言葉に根拠のない安心感を覚えた女の子は笑顔に戻る。


 「名前はなんていうの?」


 「みさちはみさちっていうの。」


 シオンには確かにミサチと聞こえた。ミサチと言う名前は初めて聞く名前だなと思ったシオンだがみさちゃんと言ったのかなと思いむ。


 「みさちゃんはどっから来たんだ?おうちは近く?」


 「えっとね。おうちはすっごくとおいいとおもうけど、おばあちゃんのおうちにきてておばあちゃんのおうちはちかくだとおもう。」


 「おばあちゃんちどこかわかるか?」


 女の子はまた首をぶんぶんと振る。

 子連れの大人はそこかしこにいたが中々見つからない。


 子連れである以上この子の母親ではないのだろうと思ったシオンはいくつか女の子に質問をしてみた。

 最悪どうしても見つからなければ祖父の家に連れていけばなんとかしてくれると思っていた。


 母親のなまえはママと呼んでいるためすぐに出てこなかったが、苗字はナカオだという事がわかったがシオンはそれが聞き間違いであることに気が付かない。


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