続・後輩と子供の頃遊んだことがあるとか気づくわけがない
車を走らせること、約20分
時刻はちょうど1時に差し掛かろうかというタイミングで高速道路へと上がった。
シオンの家を出た直後は他愛のない話をしていた二人だが、沈黙と言うほどでもない小さな間ができていた。
シオンはその無言ですら気まずさを感じている。
ミサキはその無言すら心地よく感じているようだが気が付かない。
運転をしているから尚更だ。
ミサキは先輩、先輩と、シオンに懐いているが遊びに誘ったりしたことがない。
アルバイト先以外のシオンをちゃんと見るのが初めてで緊張しながらも『ドライブデート』かのようなその状況を楽しんでいるらしい。
「そういえばさ。」
「どうしたんですかっ?せんぱいっ。」
「ん、あぁ、美咲んちのあたりさ。俺行った事あるんだよ。」
シオンはビルの屋上の大きな看板を見て昨日を思い出す。
昨日の朝、同じ道を同じように車で走っていた。
今はアルバイトに行くようなラフな服だが、その時は喪服だった。
その上に昨日の行きはレイジが運転していて助手席だったが、今は自分が居た助手席には女の子が座っている。
何かあべこべでうれしいや、楽しいではない何とも表現し難い複雑な気持ちでいる。
「あっそうなんですね。」
__________あれ?美咲ならもう少し喜びそうだけど…
それを、言えばミサキはもっと驚いて喜ぶんじゃないかと思っていたのに反応が薄い。
なんだか少し寂しい気持ちになって、ただの自意識過剰だったのではないかと自己嫌悪する。
ミサキの表情を見たいと思ったシオンだが、
高速道路には路地もなければ、信号もない。
時間も時間だ、車も少なく渋滞などもしていない。
高校在学中に運転免許を取得していたシオンは運転するにあたって不安になるほど車を運転していないわけでもないがそこまで運転しているわけでもない。
速度が上がっている今ミサキの表情を見るわけにはいかない。
さらに隣に人を乗せているのだからわき見運転などできるはずもない。
「どうしたんですか?」
返事をしないシオンにどうしたのかと思ったのかミサキはシオンの方を見て問いかける。
「いやっ、なんでもねぇよ。」
ミサキの方を見れないシオンは曇っている表情がばれてしまわないかと焦ってしまう。
「そっそういえば、俺昨日も累林まで行ってるんだよ。」
「ほっほんとですかっ!?」
「うあっ。」
「きゃっ。」
その言葉に急にミサキがシオンの方へと身を乗り出してくるから、ハンドル操作を誤って蛇行してしまう。
幸い周りに車は、走っていなかったので大事にならずに済んだ。
「急にどうしたんだよ?危ないだろ…」
シオンは心臓が早くなっているのを感じた。
それがハンドル操作のミスによるものかミサキが近くへ来たからなのかはわかっていない。
「すみません…」
ミサキは助手席の元の位置に戻りしょんぼりとしてしまう。
「まぁ事故にならななかったけど、状況考えてやれよ。」
「えっやっていいんですか?」
「ん?」
「状況考えればみさきはせんぱいに飛びついていいってことですねっ!わかりましたっ!ありがとうございますっミサキはうれしいです!」
「いや、そういう事じゃなくてだな…」
そこまで言うと、それは言葉のあやでしかなかったが「ふっふふーん」と、笑うミサキの声を聞いて諦めた。
「それで、急にどうしたんだよ?」
「昨日先輩がうちの近所に来てたかと思うとうれしくってつい…」
シオンはアルバイトを変わってもらう相談をする際ミサキに、ちょっと予定が入ってしまってくらいしか言っておらず、「デートですか?」と聞かれたりしてあきれながら適当に「家庭の事情ってやつ」などとしか説明していなかった。
「昨日じいちゃんの法事があって、伯父さんちに行ってたんだよ。んで伯父さんの家があるのが累林なんだよ。」
「それってもしかして先輩スーツ着てたりしました?」
自分の住んでいる場所のことをなぜ知っているのかを聞いて驚きそうなものだがミサキは先ほどからミサキはそのことに関しては一切の驚きを見せずにシオンが想像してない事ばかりで驚いたり質問したりしてくる。
「あぁ、まあ法事だし当然喪服来てたけど、どうした?」
「先輩のスーツ姿みたかったなぁ。」
なるほど、そういう事かと思ったシオンは少し恥ずかしくなった。
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