新人アルバイトがフリーターだなんて気づくわけがない
「それでは失礼します。」
ミサキは面接に来たナカガワと名乗る女性をタカシ達のいるバックヤードへと送り届けるとその場を後にする。
______________あの女のひと、採用するつもりなのかな?
などとミサキは考えていた。
面接に来た女の名は那珂川まりな(ナカガワ マリナ)28歳
身長は167センチと女性としてはやや長身で黒髪のセミロング。この日は三つ編みをしておさげにしていた。
薄化粧で顔だちは整っているが大きめの黒縁の眼鏡をかけていて少し野暮ったく見える。
ミサキは仲良くなれるかな?など考えたりもしたが、同じ女性としてその整った顔立ちを見逃していなかった。
ミサキのマリナに対する印象はナチュラルメイクでファストファッションブランドの簡素なスキニータイプのデニムに無地のシャツ、それからよく見るような星のマークのついたハイカットの白のスニーカーでおしゃれには興味のなさそうな女性に映った。
ただミサキより10センチ以上は高い身長や自分より長い髪が女性らしく見えていた。
そしてミサキより年上で落ち着いた雰囲気でよく見れば綺麗な人で美人タイプだ。
かわいいより綺麗と言われたいミサキは背伸びしたこともあったがその背伸びが余計に子ども扱いされてしまい自分らしい自分に合ったおしゃれを心がけていたが女性らしく綺麗な大人な女性に対する憧れがあった。
なるべく綺麗でかわいいと思われていたいと考えているミサキはマリナをうらやましいと思う。
同時になぜ簡素な化粧であんな格好をしているのかと不思議に感じる。自分だったらこんな服を着てあんな髪形をしいて眼鏡はやめてコンタクトにするのに想像した。
_________先輩はやっぱああいう大人な女性が好きなのかな?
現在、女性のスタッフはパートを含め5名だ。
シオンと恋愛対象になりそうなスタッフはミサキを含め二人。
もう一人のアルバイトには恋人がいて先輩だがミサキとは同い年ですぐに仲良くなっていた。もちろん仲が良いいのでミサキの気持ちも知っている。
シオンは優しくかっこいいがライバルにはならないと思っていた。
シオンより三つ年下のミサキはシオンと同じか少し上くらいに見えていたマリナがシオンを好きになりライバルになるんじゃないかと不安に感じた。
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「あぁ、あれはやっぱバイトの面接か…もう終わるんじゃないか?」
そう言いながら小さなA型の看板をミサキに渡す。シオンは大きな看板を引きずりだしミサキと二人エレベーターへと向かう。
控室での出来事にミサキはすぐ気が付かなかったがミサキとは違い高校を卒業してすぐにウミセンヤマセンでアルバイトを始めていたシオンにとっては珍しい光景ではなくある程度察していた。
通常は店長であるタカシが一人で面接をするが今回は本部の人間も来ている。
おそらく店舗の求人ではなく本部の求人で面接に来た人だろうとシオンは思っていた。
「あの、あのっ先輩はあの人雇うと思いますかっ?」
二人でエレベーターに乗るとミサキはさして大きくもない看板を足の部分だけをうんしょと床につけるてシオンに尋ねる。
「あーどうだろうな?今人足りないし、とるんじゃないの?あんま見てないしちょっと暗そうだけど悪そうな人には見えなかったし…」
先月、就職活動やインターンで忙しくなるとシオンとはほぼ同期のベテランスタッフが辞めたばかりであった。
それにタカシがシフト作りに頭を抱えているのを何度か見ていたシオンはとりあえず雇うんじゃないかと思った。
「ほんとですかっ!先輩はあの人暗そうに見えたんですかっ?」
______________あの女性を雇うかどうかと聞いていたのに暗そうに見えたかどうかを聞いてくる。美咲は何を聞いているんだろう。
「いや、まあ、あんま見てないしわからん。」
そう答えると、シオンは従業員控室で見たマリナのことを思い出す。
シオンの個人的な主観ではあるがある程度髪色髪型が自由な居酒屋のバイトは派手目なスタッフも多いなか今時、黒髪で三つ編みをしている女性が地味に映っていた。
大きな眼鏡をかけた女性には軽く会釈されただけが、なんとなく暗そうといった印象しかマリナには抱いていなかった。
シオンは電飾付きの大きな看板を定位置においてコンセントを電源に挿し込むとエレベーターまでもどりあたふたとしているミサキを待った。
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