アルバイト面接があるだなんて気づくわけがない

 「そういえば先輩。まだ裏で面接してました?」


 ウミセンヤマセンは17時オープンだ。

 

 11時、もしくは14時から出勤する仕込みスタッフと入れ替えでオープンアルバイトは17時から出勤するがあまり集客の見込めない予約もない日曜日は仕込みスタッフも置かず仕込み等はない日が多く、あっても店長であるタカシが行うことが多い。


 そのため、オープンスタッフは16時から出勤して通常仕込みスタッフの行う店内清掃や、卓上調味料の補充、看板出しなどを行う。


 ミサキは店がシフト開始の30分ほど前、15時半には店舗に到着していた。


 日曜日の16時出勤というのはミサキにとって半年間の経験上で二度目だった。

 合計15回、約一か月の間の研修期間中に本来一人で行う作業を先輩アルバイトであるシオンに教えられなが二人でやった一度きりであった。


 さらにこの日は尊敬する先輩からの頼みでシフトを変わっていたのだ。


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 それはシオンがうるさいだけの時計を止めて二度寝を決め込みギリギリまで寝てやろうと二度寝した1時間半前まで話はさかのぼる。



 15時30分



 ミサキはかなり早めに店舗に到着た。


 この日は日曜日で仕込みスタッフが行っている作業をはじめてミサキ一人で行う。さらには尊敬するシオンと変わっていたので何か失敗があれば先輩に恥をかかせてしまうと、考えて密かにプレッシャーを感じていた。


 ビル正面のガラス扉を開けるとエレベーターの呼び出しボタンを押す。


 到着した箱の中に入ると3階のボタンを押す。見るとウミセンヤマセンと書かれたラミネートされた小さな行き先表示が剥がれかかっていた。

 それに気が付いたみさきは応急処置にもならないだろうが指で強く擦って押さえつけ傾いていたそれを無理やりに直す。

 きっとすぐにまた傾き剥がれてしまうだろう。


 店の前まで到着したミサキは店舗の鍵を取り出そうとするがもしかするタカシがいるかもしれないと引き戸を横にひく。


 やはり空いていた。

 店内は薄暗く人の気配も感じなかったが、店内奥のキッチンから明かりが漏れていた。

 ミサキはまずは挨拶をしなければとバックルームへと向かう。


 白いプラスティックの《STUFF ONLY》と記載されたチープなプレートの前で止まるとバッグから手鏡を取り出し髪の乱れや化粧に変なとこはないかと確認した。


 ミサキにとっては人に会う前のマナーなのだろう。


 一通り確認が済むと木製のドアを≪コンコンコンコン≫と小さくノックしてノブに手をかける。


 こういう時、『どうぞー』などの返事を待ってから入るべきと思っていたミサキだが中に誰もいなかったり誰かいても返事がなかったりが多いので以前はしっかり待っていたが構わずそのまま中へと入る。


 「おはようございまーす。」


 もう昼過ぎだというのに、ミサキは、おはようとあいさつをするとバックルームの奥タカシの指定席であるパソコンが置いてあるデスクの方を見る。


 「あぁ今日は宮島君と中野ちゃん変わったんだっけか?おはよう。早いね。」


 そこには店長であるタカシともう一人、見知らぬ男性がいた。


 この人は誰だろう?アルバイトの面接かな?そう考えたミサキだがそれにしてはスーツをしっかりと着ていてそんな雰囲気ではない。


 するとスーツの男性が立ち上がる。

 それに続いて、タカシも立ち上がった。


 「中野ちゃんは会ったことなかったかな?聞いたことくらいはあるかもしれないけど、この店担当の本部の社員さんで高橋さんだよ。」


 タカシに紹介されるまま、高橋は「高橋です。」と軽く頭を下げる。


 それに遅れないようにとミサキは深々と頭を下げた。


 「半年前からお世話になっている中野です。よろしくお願いしますっ。」


 ミサキの挨拶をを聞くと高橋は腕を組んでタカシの方を向く


 「いやぁ、話には聞いていたけど元気でいいですね。」


  高橋の言葉に,


 「そうでしょそうでしょ?なんて言ったって中野ちゃんはうちの店の看板娘ですからね。」


 と、すかさずタカシは合の手を入れる。


 なんだか褒められているようでミサキは少し気まずくなる。


 「あの、わたし着替えてオープン準備しちゃいますね。」


 《ナカノ》と走り書きされた白のビニールテープが貼ってあるロッカーがミサキのロッカーだ。

 これはミサキのアルバイト初日に同日出勤だった教育担当のシオンが書いてくれたものでミサキはこれを見るといつもその日を思い出しうれしく感じている。


 着替えの入ったコーヒーショップの紙袋と鞄から取り出した化粧ポーチ以外をそこへしまうとミサキは着替えのために女子トイレへと向かった。


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