続々々・後輩が覚悟を決めているとか気づくわけがない
階段を下りるとレイジはリビングへ突撃するように侵入する。
リビングのソファにはバッグに手を入れたままリビングの入口を何が起きたのかと顔だけ向けて固まっているミサキがいる。
「詩音っ!」
「はひっ」
レイジがシオンの名前を呼ぶと後をついてきたシオンは返事をする。
ミサキと同じように何が起きてるのか理解が追い付かないシオンは返事をしたが、声が裏返っている。
「お前というやつはこんな、彼女でもない年頃の娘さんをたらし込んで家まで連れ込んで…しかも高校生くらいじゃないか、それにわざわざ俺に報告するとはいったいどういう事だ?」
シオンは、あまりの出来事にレイジが何を言っているのか理解が追い付かない。
ミサキは、というと絶句していたが高校生の言葉にだけ小さく反応するがシオンもミサキも気が付いていない。
「お嬢さん。うちのせがれが申し訳ない。」
レイジが膝をつくと、土下座をするんじゃないかと思ったシオンはそれをとっさに止める。
「親父やめろって…急にどうしたんだよ。もう何が何だか…」
膝立ちのレイジの両肩をつかんだシオンだがレイジはぽかんとしている。
「あちらのお嬢さんを言葉巧みに操ってバイトを変わってもらうよう仕向けて、家まで連れ込んでそれで、そうゆうことは外で…」
そこまで言うと言葉に詰まった。レイジは膝立ちのままだ。
「…外でもしてはいかん!」
そのままシオンを無理やり振りほどき土下座してしまう。
シオンは土下座して大きな塊となった父の背中を見ると、やってしまったかと手を頭に当てた。
「親父…ちゃんと説明するから話をきけ。」
シオンはもう床で塊となったレイジの肩をもう一度つかむと起こそうとするがびくともしない。
「…母さんに電話するぞ?」
「それだけは勘弁してくれっ!」
母という単語に過剰に反応する。『バッ』っと効果音がしそうな勢いで立ち上がるとシオンの方を向いて手を合わせ小さくなる。
シオンは「はぁ」と、ため息をつきレイジをミサキの向かい側のソファに座らせる。
ミサキの隣に座るのにためらいを感じたシオンはレイジの横に座ろうと思うが横に並んで説明するのも変だとおもいある種の気まずさを感じながらもミサキの方へと動く。
それに気が付いたのか慌てたミサキはソファに置いてあった荷物を床におろして端に寄ってシオンの座るスペースを作る。
シオンは空いたスペースにに腰かける。ミサキはソファの一番端まで寄ってしまった。三人掛けのソファの二人の間には妙な空間が開いてしまった。。
「はー。親父がどんな勘違いをしたのかはとりあえずおいておくとしてさっきも説明したんだけど、もう一度しっかり説明するから今度はちゃんと最後まで聞いけ!途中で勘違いして暴走したら母さんに言うからな?」
レイジは小さく頷いた。
レイジがこういった暴走することはたまにある。
大体はシオンの母のことが理由であり止められるのは基本的に母だけだ。
母がいない今この暴走を止めるのは難しいと思ったシオンの母という単語ですぐに冷静になってくれた。
「実はな…」
シオンは自宅にミサキを連れてくる流れをもう一度同じように話していく、昨日の法事のためアルバイトをミサキに変わってもらった事、それによって優しいミサキは終電があるのに言い出せなかったこと、そのことに自分含めほかのスタッフも気が付かなかったこと、結果終電を逃して家が遠く帰ることができず漫画喫茶に泊まろうとしていたので家まで連れてきて家まで送ろうとしたことを、細かく説明した。
シオンは気が付かなかったがシオン達と向かい合って座ってうんうんと聞いてたレイジが気が付いた。
「みさきさんでいいかな?顔色が優れないようだけど大丈夫かな?」
それを聞いたシオンは横に座っていたミサキの表情を見ようとする。
顔を伏せてしまっていたミサキだが顔が赤くなっているように見えた。
それを見たシオンはそういえばさっきからミサキの様子がおかしかったのは熱のせいかもと思いシオンの額に手を当てようとする。
が、当てた瞬間、「きゃっ」と小さな悲鳴をあげてミサキはソファからずり落ちてしまう。
「すっすいませんっ先輩っ私突然でびっくりしてしまってそれで…」
__________あっそうか、藍にしているつもりで同じように俺は…
特に女性との距離感が近いというわけでないシオンだが、この場所が家であることと、ミサキとは仲が良かったためつい、昔の彼女であるアイにしていたようにしてしまった。
先ほどレイジの書斎でアイのワードが出たことも理由の一つだったかもしれない。
「みさきさん、とりあえずソファに座ってくれるかな?」
ソファから落ちて床に落ちたままのミサキにシオンは何かを考えていて気づかない。
その理由を察したレイジが言った。
ミサキは恥ずかしさからかすごすごとソファの元の位置へと戻る。
「おっほん。シオンよ。さすがは我が息子だ。もう夜も遅いので車は貸してやるからみさきさんをしっかり送っていきなさい私は部屋に戻って仕事の続きを…」
そこまで言ってレイジはその場を逃げようと立ち上がろうとする。
「待ちなさい。」
その行動に気が付いたシオンは冷静さを取り戻しすかさず、それを制止する。
「はい…」
しょんぼりとしたレイジはその言葉に従い力なくソファに座った。
「で、どんな勘違いをしていたかっ知らないけど、ミサキにちゃんと謝ってよ!」
「みさきさん。急にみっともないことをして驚かせてしまった。申し訳ない。」
レイジは膝の上に手をつくと深々と頭を下げた。
「頭をあげてくださいっみさきはちょっとびっくりしただけでおこったりはしてないので大丈夫ですっ。」
それを見ていたシオンはなんだかいつも通りのミサキに戻ったなと思い、妙に安心した。
「お優しい娘さんだ。実はだね。私は二階で仕事をしていたんだけどちょっと興奮してしまっていてね。しかも、今はママがいないから余計に…」
「あーはいはいわかりました。わかりました。親父はもういいからちょっと黙って、部屋に戻って仕事して!」
レイジの言動に母の話が始まると長くなると思ったシオンはそれをさえぎると立ち上がりレイジの腕を引っ張ると背中を押してリビングの外へとでる。
階段まで父を送り玄関にかかっている鍵を取りに行こうとすると、レイジは「待ちなさい」と言い二階へと消えた。
玄関にかかっている鍵をとるとレイジを待つ。
「すまん。すまん。これを持っていきなさい。行きも帰りも使っていいから帰りも安全運転でな。」
と、言ってETCカードを渡してきた。
レイジは車を借りたいという話をすると行き先が遠い時は高速道路を使えとETCカードを頼まないでも貸してくれる。
「帰りも安全運転でな」というのは、シオンが横に誰かを乗せていれば当然のように安全運転をすると認めていた為であるがシオンは心の中で行きも気を付けるわっとツッコミを入れていた。
「サンキュ」
それだけ伝えると、軽く手を挙げたレイジは二階へと消えていった。
シオンはリビングへ戻るとあっという間の出来事に呆然としているミサキに、
「何してんだー帰るぞ」
と、伝える。一瞬間をおいてミサキは目の前にあったお茶を一気に飲み干し、テーブルに置いた。
「ごちそうさまでしたっ!」
ミサキは立ち上がり、床に置かれた荷物を持つと、シオンの方へと近づいた。
「では、先輩。よろしくお願いします。」
深々と頭を下げた。
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