第6話 閑話 転生前日その二・習得スキル確定

「にしても珍しいスキルばっかり取りますね。色彩魔法って何かわかってるんですか?」

「まったくわかりませんが、面白そうなので取りました。まぁ、他のまともそうな魔法が二ポイントだから一ポイントの中からまともそうなのを選んだだけです。

他の奴は一回で魔力切れを起こす破壊魔法だの、暴走だの、デメリットが性的興奮だの危なそうですし」

「はぁ……色彩魔法って用意したのウェリ先輩かなぁ……。まあいいや、マニュアルはあるからあとで渡しますね」


 あとは蘇生だな、二ポイントの蘇生はどれもキツいの制限があるんだよな……。

 ランダムでアイテム喪失系、ある程度の経験値を消失する、復活回数制限、所持金全額喪失……。


 喪失系はすぐに稼げない環境だとかなりキツくなるが、冒険が進むほど楽になるようだ。

 しかしながら、ゲームみたいに失っても取り返せるほどバンバン稼げるかがわからない状態でそれらを選ぶのは、はっきり言って博打だ。


「この毎月復活権ってなんです?」

「毎月決まった日に一回死亡していても完全回復します。えーっとそうですね。

仮に二五日とすると、二五日になると死ぬ前の状態まで自動的に肉体が修復されて、蘇生されますね。

生き返れるのはいいけど、最長一ヶ月死体のままなので、浦島太郎状態になると言う制約のせいで強さはあんまりですね」

 いや、まぁ無条件で蘇生できるなら、死にさえしなければ割と強くねぇか?

 ということで、俺はそれを選んだ。

「え?本気ですか?」

「三ポイントの蘇生選んだら枠足りなくなりますからね。比較的使えそうだったのでこれにします」


 ソシャゲでたまに有る泣きのロールバック権みたいなもんだな。

 死ななければただの死にスキルだが、生き返れるだけで御の字だ。


「ふむふむ……蘇生スキルすらレアなのを選びますね。そのほかのスキルを合わせても、変態型とでも言いますか……。普通はレベル制、スキル制、チートの魔法か身体強化でポイントを埋めてくる人ばかりですよ」


 普通の異世界ではない、だがそれが良いのだ、普通の異世界では飽きるからな。

「はい、それで大丈夫です。月に一回復活・魔道具作成(各二ポイント)、色彩魔法・病原菌ほぼなし(各一ポイント)でお願いします」

「では、裏面です」


 このマークシートまだあるのか……。

 裏面は自分のキャラクター作成シートだった。

 言語とかスタート地点とかの話なので、スキルほど適当に選ぶと痛い目を見そうで怖いな。


 言語オプションは日本語が通じるようにする。

 現地言語の習得だといろいろわからない言葉が出そうだからだ。

 また、転生先は地方都市またはその近郊、年齢は今と同じ二七歳くらい、人種はヒト族、大まかに選べたのはそのくらいだ。


「スキルと違ってこっちはアホみたいに無難ですね」

「ここで冒険するとわけわからないままに詰みますからね……」


「わかりました。では、このシートのオーダーをこれから行く異世界に読ませてから、念のため二〇〇年くらいオートで進めてから移住となります」

「二〇〇年もオートで進める意味は?」

 マークシートを読み取り機にセットしてインプット作業をしながら、オーバは返答した。


「慣らし運転ですよ。アクアリウムとかでやりません?買ってきた魚を袋のまま半日くらい移動先の水槽の水に入れて、水温とかの環境に慣れさせておかないと拒否反応が出やすいんですよ。

昔は無制限に特典を持たせていたんですが、その人を転生させた後の銀河が死にましてね。

今ではスキルなんかに個数制限をかけ一〇〇年単位で選んだ条件がその世界に根付くかを観察してから移住して貰っているんです。

転移した途端に、その星が割れるのは嫌でしょう?」


「サラッと怖いことを言いますね!?それって慣らし運転で根付いたとしても、バグると壊れる可能性ないですか?」

「無論ありますよ」

 あるんじゃねぇか。


「はいはーい、システムちゃんでち。慣らし運転の最初の二〇〇年が過ぎまちたが、異世界人の生活は大枠で変化なちでち、このまま移住ちても問題なちゃそうなくらい安定していまちゅ」

「それは上々!」

「いや、安定しているからと言って、一回の観測で判断するのは早計では?」

 その言葉が聞き入れられることはなかった。


「取り敢えず大丈夫っぽいので、異世界に」

「「いってらっしゃーい」」

 そして俺の意識は途絶えた。

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