第4話 襲撃のその後……
集会所に集まった人たちと倒したゴブリンの死体を監視しながら話しをしている。
「アンタ何者なんだ。オーバ様のアクセサリーにあんな力があるなんて聞いたことはない」
「いや、色々聞きたいのはこっちですよ。なんで死体を牢に押し込めて監視まで付けているんですか」
「そりゃもうすぐ復活するからに決まっておろう」
そんなやり取りをしていると、ノインさんを寝かしつけて戻ってきたヒロシカさんが戻ってきた。
「すまない、グラスキー氏は記憶喪失らしいんだ。復活の日のことも知らん」
「記憶喪失ぅ?何だってそんな奴を家で世話していんだよ」
「偶然とはいえ、そのおかげでみんな助かったんじゃないか。騎士団が取り逃がしたラガーンを倒したのはグラスキーだぞ」
目の前で救出したのだから、飲み込まざるを得ないのだろう。
ゴブリン一帯に集落の人たちは苦戦していたし、僕が間に合わなければもっと被害が大きかったことが予測される。
騒いでいた住人たちも、ヒロシカの一喝に多少は静かになった。
「取り敢えず、今のところ味方だと考えてもいだろう」
「それはそうだが……」
信頼するきっかけがないのだろう、仕方ないがこういう時はこうするのが手っ取り早い。
「あの、信用が難しいのでしたら、これを預かっていてもらえますか?」
そういってマルチ眼鏡をはずして、手渡しておく。セルフレームに架け替えてもよかったが、やめておいた。
「これは……さっき魔法を放っていたアーティファクトか」
アーティファクト……?
小説とかでよく聞く古代の遺物とか魔道具とかの通称だったかな。
一応、天然のものではなく、人造物の総称だったと思う。
「この眼鏡は戦闘に利用できるアイウェアらしいです」
嘘だとばれるといろいろ問題が出るので、素直に話さざるを得ない。
「このアイテムがないと私は魔法が使えないらしいので、預かって貰えますか?」
そういって、ヒロシカさんと親しげに話していた鳶やと呼ばれていた人に手渡す。
「使えるらしいって、そこすら曖昧なのかい?」
「えぇ。さっきの戦闘でもノインさんを助けるために必死に動いていたら、自然とアーティファクトが使えました。頭では覚えてないけど、体が覚えている程度に使い込んだ武器なのは間違いありません」
隠しておきたいことは管理人の声が聞こえること、転生者?であることくらいだから、その他のことは素直に話しても問題ないだろう。
「だからこれがない私はただの無力な旅人でしかありません。そのほかに使っていた武器も、ヒロシカさんの手斧ですし、あれはもう壊れましたから」
多くを語りすぎても怪しいから、とりあえず自分の恩人には手を出さないという簡便な言い訳を紡ぐことにした。
「少なくとも私はヒロシカさんと、そのご友人たち……が誰かわからないので、この集落の人に害意をむけることはありません。彼には一宿一飯の恩義がありますし、彼が縛っておくべきというなら、信用いただけるまで拘束いただいてもかまいません」
「ゴブリンを退治してくれたのはグラスキーだ。それに武器まで預かっているなら拘束までは要らないだろうとワシは思う」
しかしながら、信頼がおけないという集落の人たちの意見を含めて検討した結果、交代で三人の見張り要員を付けて今夜中交代で見張られることになった。
まぁ、その程度なら寝ていれば気にならないしどうでもいいか。
「では、私の質問に答えてください。ゴブリンは何故縛っているのですか。『復活の日』と関係のある話でしょうか」
「もうそろそろ日付が変わるから、『復活の日』については今から体感してもらおうか」
その時だった。自分の体が発光を始めたのだ。
先ほどの戦闘で傷ついていたのか、自分の足についていた傷がひときわ強く光っている。
いや、自分だけではない。ここにいる全員──ゴブリンも例外なく──が緑色に光り出した。
光が止んだ頃、先ほど怪我をしていた場所が綺麗さっぱり元通りになっていた。
薪割りで感じていた筋肉痛や疲労感もほとんどなく、空腹感と眠気だけが残った状態になっていた。
「こいつが『復活の日』だ」
「ここ一ヶ月で負った傷や病が、全て治癒したのだ」
なんだよ、その便利な奇跡は……なんで僕のいた世界にそんな便利なシステムがなかったんだよ。
そういった雑談をしている横で、ゴブリンが目を覚ましたらしい。
「おい、お前ら俺たちにこんなことをしてどうなると思っている」
「俺たちを解放しろ」
「ただまぁ、こういった悪人共も『人間であるから』復活してしまうのが難点だな。」
ゴブリンたちを縛っておく理由はこれで理解した。
縛って寝かせておかないと、アイテム袋から武器などを取り出してまた暴れ始めたのだろう。
よく見るとアイテム袋は、牢から離れた場所にまとめられていた。
こういう時の手順があるだから、こういった襲撃は初めてではなさそうだ。
その割に集落の人に戦闘能力がなかったのだが、そのあたりは騎士団頼りなのだろうか。
「そこで大人しくしてな。朝になれば騎士団に突き出す。お前たちは行政区の牢屋への移送だ」
「そんなことをしてただで住むと思っているのか」
「俺たちが帰らないことはボスたちには、すぐにバレるぞ」
「そうすればこの集落は終わりだぜゲヒャヒャ」
騒がしいゴブリンと異邦人の俺の見張りを集落の人が交代で行いながら、集落の男たちは集会所で雑魚寝と相成った。
ヒロシカはノインさんが心配なので、念のため家に帰ってもらった。
ゴブリンがうるさくてぐっすりとはいかなかったが、戦闘で疲れていたのか朝まで起きることはなかった。
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