第17話 システムちゃんの質問タイム

 頭の中に三人目の四神──管理人ちゃんの一人だろう──が語りかけてきた。


「アタチはシステムちゃんでち。

この世界を管理し、情報をまとめて管理チームにレポートを上げることと、あなたが迷ったときのインフォメーションの機能がアタチの役割でち」


 念のため周囲を確認するが、やはりまた時が止まっている。

 どうやら重要な話をするときは時間を停止させるというのが、管理人ちゃんたちの手順なのだろう。

 ……いや、オーバさんは止めてなかったから、どうなんだ?


「オーバちゃまは大雑把でちからね。

マニュアル守らないんでちよ」

「心を読まないでください」


 どうせ読まれるなら隠し事は無駄って事だな。

 取り敢えず今ある疑問をぶつけてみることにする。


「いい機会なので質問しますが、神器ってなんなんですか?」

 そう、単純なことだ。最初に聞くべきは、どこまで質問に答えてくれるかの確認としてあいまいで大きなものを投げる。


「それを詳しく教えることはできまちぇん。

しかし、この世界に元々存在していなかった物であることは確かでち」


 これまでに聞いたこととも一致する。

 神器は、彼ら神と名乗る四人によってもたらされたものであるということで間違いない。


「ヒント出しすぎると怒られまちゅから、あと三個でお願いするでち」

 おっと、あまり抽象的なことは聞けなくなったな。


「では一つ、神器を作成してこの世界に送り込んでいあるのは、あなたたち四人ですか」

「イエス、その通りでちが一つ訂正しまちゅ。

アタチは神器を作っていないでち。

他の三人が作った神器をこの世界に出現させてもバグが出ないかを事前に確認して、説明書とともに送り込んでいるだけでち」


 作っているのは三人だけか。

 説明書も制作者に依存して個性が出るのだろうな。


「二つ目、この世界の技術でも神器の新規作成は可能ですか」

「イエス、技術的には十分可能でち。

と言うか、出来るように最初に制作キットを落としたはずなんでちがね?」


 技術的には可能って一番嫌な答えだな……。

 資金問題など、無理矢理やればできないことはないが、かかるコストが大きすぎるなどの理由で、出来ればやりたくないというのが、技術的には可能ということなのだ。

 と言うか、制作キット?そんなものがあるなら、もっと早く見つかっていてもおかしくないだろうに。


「しかし、今あなたの手元にある神器でかいせきできまちゅから、あとはキットと必要な素材を組み合わせれば、現存する神器の再作成は、十分に現実的だと思いまちゅよ」

「それはいいことを聞きました」


 マルチ眼鏡とあとは見つかっていないキットさえあれば、問題が無くなるという確信が得られたのだ。

 いま打ち立てている仮説を試していけば結果が出るかもしれない。


「では最後、マルチ眼鏡の機能について……」

「あ~、それは聞かない方がいいでち。別な質問をお願いちまちゅ。

それに聞いてもきっと、興が覚めたって言いそうですち」


 質問する前に潰されるレベルなのか。

 それも俺のせいで?


「何故答えられないのですか」

「それを教えてしまうと、あなたの役割である外乱がうまく機能しなくなる懸念があるからでち。

主要メンバー三人で会議した結果なのでこれは覆せまちぇん」

「では最後の質も……」

「三個目は『何故答えられないのか』で消費したので、問答はここまででち~。

あ、ここでの会話は『メモしないと消して』しまいまちゅから~。

では、よき異世界ライフを~」

「あれカウントするのかよ~~~~」


 しかし、ここで得られた情報は割と大きい。

 マルチ眼鏡の機能を教えることで、外乱としての機能が弱くなるという事。

 それすなわち、俺たちのチームが使い方を考えていくことが、彼らの目的なのだろう。

 兎に角、方向性は決まった。

 マルチ眼鏡と手元にある神器を徹底的に調べるのが当面の目的だ。


 システムちゃんとの会話を終えた俺は、忘れないうちに研究室のメモに会話した内容を書き込む……駄目だ、一部しか思い出せない。

 心配して話しかけてくるトクサたちを後で説明すると抑えながら書きたい事だけ書きまくった。


 覚えていることを箇条書きにする。

 ・オーバは大雑把

 ・神器を作成しているのは神の三柱

 ・手元にあるものを組み合わせる

 ・神器制作キットあり

 ・眼鏡で解析できる


 この位だった。

 忘れすぎだろ俺。

 詳細が思い出せないから仕方ないが、これだけのヒントでも割と希望が見える。


「どうしたのでありますか?ぼーっとしていたかと思ったら、一心不乱に文字を書き始めて……」


 脂汗をかきながらメモを書き終えた俺は、大きく息を吸い込んで息を整えてから、メモを読み直す。

 伝えたいことは最低限記載されていることを確認し、全員が見えるようにテーブルに置く。

「たった今、四神の一柱と話しをしました。ただ……神様と会話した記憶はメモしないと消されるようなので、消される前に紙に書き記しました」


 これも消されるかもしれないが、今のところ文字が消えてはいないから問題ないのだろう。

 それにしてもとりとめもないメモだ、これから分かることは少ないが、それなりに重要な部分だけ残せたと思う。


「これはいったいどうすればいいんじゃろな」

「多分、僕は神器のことについて神に尋ねたはずです。

そして得られた情報は、マルチ眼鏡と神器制作キットを使うことで、神器の再作成と言う目的が達成できること。

ここが重要です」

「その他の情報も何かに使うんでありますか」

「それは分からない。しかし、残したのだから使える情報なのだと信じたい」

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