第26話 遺跡攻略4・ウェアウルフとのにらみ合い
敵が変身して身軽になったのは仕掛けてくるためだろう、動きを見るために敵のボスとにらみ合いを続けていた。
「さて、騎士団の諸君。
どうせ包囲もしてるんだろうが無駄だぜ。
ここさえ出られれば変身した俺たちの速度に追い付ける奴はいねぇ。
このポルフ様達にはな」
ポルフと名乗ったウェアウルフは、その脚力に余程自信があるようだ。
しかし、ここは広いようで狭い部屋だし、さっきまでに床に散らかした岩や瓦礫でかなり足場が悪い状態だ。
ここであれば僕たちに勝算がある。
「このウルフ砦に踏み入れた奴は生きて返さねぇ。そういう掟なんでな」
言い終わるが早いかその姿は見えなくなると共に、ヒイロの左腕は無くなっていた。
口から粘着性の唾液を出し、即座に傷を塞ぐヒイロ。
腕が残っていれば接着もできたが、敵に食われては傷を塞ぐしかない。
普段からこのくらいの傷を受けなれていなければ、とうに気絶していたであろう大怪我である。
「流石に慣れてやがるな。
さて、純粋な力比べと行こうか」
ポルフはナイフを天井に突き刺し、魔力球をそのナイフに向けて投げた。
爆発などはなく、ナイフをコアに魔力球が固定される。
「この月が陰るまでは、俺達は無敵なのさ」
先程までより早い爪による一撃が容赦なくヒイロやヨシュアの身体を抉る。
噛みつきによって手足を食い千切ろうとするが、それはトレハの投石により食い止められていた。
ウェアウルフとはいえ、矢の速度で飛んでくる礫を避けるのは容易ではないようだ。
その上、足の踏み場を減らして機動力を奪うように、小さめの岩を次々と投げている。
一見、仕切り直しで場を作っている見えるが、不整地での戦闘である以上、連戦でスタミナの切れかけているこちらが徐々に不利となる。
なにせ怪我人がポーションを飲む暇さえないのだから……。
「ぶはっ……」
「セレーネ隊長!大丈夫ですか!」
「状況は!」
「サリオは沈黙中。
トレハ軸でウェアウルフ三人と交戦中。
上部にある魔力球を掲げてから三人が変身。
リーダー以外はアレを壊せば変身が解けます」
ようやくセレーネが目を覚ます。
顔色は悪いが、受け答えもしっかりしているので様子見でよさそうだ。
数分とはいえそれなりの時間呼吸が止まっていたのだから、意識が戻るかは賭けであった。
「もう大丈夫ですから、貴方は配置に戻ってあの魔力球に干渉できませんか?」
「魔力球に干渉ですか?」
「貴方の神器は物体に干渉出来るでしょう?魔力球も同じでは?」
その手があったか、一か八かやってみる価値はあるな。
魔力球さえどうにかできれば、部下のウェアウルフは元の弱い人間帯に戻る。
後はそれ無しでも戦力を維持できるポルフに集中できるのだ。
「あくまでまずは魔力球に干渉してください。
ケプラーを壊すと優先的に狙われますから、まずはあの邪魔な魔力球から。
あと、戦線復帰はしばらく無理なので指令系統はそのままで」
「了解です!」
フォーメーションではトレハの前に屈んで待機だから、タイミングを見計らってちょっと前に出る。
「セレーネ隊長は意識を取り戻しましたが、復帰困難のため現状維持です。
私も作戦行動に移ります!」
「おう、死なねぇように岩に隠れててくれよ」
そういって俺の前に簡易バリケードを作ってくれた。
その後ろに隠れてトクサちゃんの神器でコピーしたマルチ眼鏡を装着した。
スライダーの数値を上部にある魔力球の色に合わせていく。
これまでに騎士団内で色々実験して分かったことだが、コピーするとレンズに若干青みが追加されるため、元の眼鏡と同じ数値では同じ値にならないのだ。
ついでに、魔法使用時の消費魔力についても判明した。
色がきっちり合えば同じ魔法でも魔力消費が少ない、ずれが大きいほど消費魔力は増大する、補色関係にある色に設定すると消費が激しいうえに干渉ができない。
また、マルチ眼鏡の消費魔力が少ないときは自然界のマナを消費するが、色が違うものに干渉したりする場合体内魔力を追加で消費する。
また、任意に自分の体内魔力を流して使用すれば、魔力のリチャージが早くなり連発や一撃の威力を上げられる。
だから、こういった失敗を許さない状況では、魔力消費を抑えるためにもより慎重に合わせなければならない。
「よし、おおよその色が判明したけど、初めてだから干渉できるか……ええい、迷ってる暇はない」
念のため、体内魔力を意識的に流し込んでいく。
その上でよく狙って魔法をぶち込んでみた。
「シュート!!!」
くっ……物質じゃなくて魔力の塊という物……やはり壊すのは難しいか……?
体中から魔力が吸われていく……もう倒れてもいいどうにでもなれ!
「ウオオオオ、シュウウウウウウウウウウト!」
ボクの眼鏡から出た魔法が魔力球を撃ち抜いて魔力を霧散させた。
全身がだるい……でも、まだ戦闘は終わっていない。
これがこの戦いを終わらせるための第一段階だ。
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