第27話 遺跡攻略5・奥の手を使うしか……
魔力切れにも効果があるかは分からないが、ポーションをグイっとあおった。
体のだるさがちょっとはマシになっていく。
しばらくすれば戦線に復帰できそうだ。
「テメエ……何をしやがった……」
「敵である貴方に手の内を明かす馬鹿がどこにいるんですか?」
「チッ……食えねえ奴だぜ」
安い挑発だがそれで時間が稼げるなら値千金だろう。
部下のウェアウルフはヨシュア達によって捕えられていた。
ウルフ化が解けて普通に戻った彼らに勝ち目はなく、麻痺ナイフとロープによるコンボで二つの簀巻きが即座に作られていた。
「ポルフ!すまねえ」
「俺たちにかまわず逃げてくれ」
「逃がすわけがないだろう?ここは封鎖中だぜ」
ヒイロが牽制をかけているうちに、俺はトレハの近くにある岩かげから顔を出し、リーダー格の男……ポルフだったか?に照準を合わせる。
「さて次はケプラーを……あれ?青みが増したお陰かキチンと服の色が消えて白く見える色になったな……。これなら……シュート!」
魔法がヒットした。魔力消費も眼鏡のチャージされている分で事足りる。
しかも色がばっちりあっているので、装甲を剥ぐのに三発も要らない。
今回は一発発放って眼鏡にチャージされていたマナが完全に枯渇したので、回復までしばらく撃てないが、あと少し殴れば耐久が消失する程度になった。
「オイオイ、今の魔法は何だ?
ダメージなんか無かったようだが?」
「えぇ、貴方にはダメージは無いでしょう……狙いはそこではありませんから」
「身体がお留守だぜ」
ナイフではなくロングソード二刀流になったヒイロがポルフを切り付けると、耐久力の落ちていたケプラーは簡単に切れていく。
もはや装甲の意味を成していなかった。
数発切りつけるとパリーンと弾けた。
相変わらずガラスが割れるような甲高い音だが、服が壊れる音じゃない気がする。
切られた服が地面に落ち、ポルフの裸体を顕わにしていく。
肥大化したポルフの身体には、小振りだが乳房が見てとれた。
こいつも女だったのか……。
「やるねぇ……この人数差だとちと厳しいが……奥の手で何とかするかね……」
そういうとポルフは逃げ回りながら、大きな魔力球を圧縮しているようだ。
ソフトボールくらいに小さくなった球を抱えて、にやっと笑いだした。
「みなさん、伏せてください。何かヤバいです」
「遅いぜ。爆ぜな!」
掛け声とともに圧縮された魔力球が弾けた。
掌から円錐形に広がる魔力の散弾が射出された。
ヨシュア達ゴブリン遊撃隊のほとんどは、眼前に迫っていたこともありなす術もなく魔力の放出を浴びた。
死んではないがポーションすら飲めない有り様だ。
「チィ……」
ヒイロはゴブリンたちの体の陰に隠れつつ、体に当たりそうな光球をエンチャント剣で少しは防げたが、左足を負傷してしまい機動力が壊滅的になった。
オレはと言うと……トレハに庇われ無事だった。
「大丈夫ですか、トレハ」
「オレはいい……それよりも、ヒイロ!俺は負傷して戦えない!
今から指揮を取りコイツと連携して奴を倒せ」
悩んでいる暇はない、上官の命令は現場では絶対だ。
「応さ!」
「はい!」
念のためトレハの傷にポーションをかけながらヒイロに声をかける。
「ヒイロさん、損傷は!」
「軽微だ!俺が突っ込むからお前は援護を!」
「了解!」
と言っても、僕にできるのは眼鏡でシュートの魔法を使うことと、盾と剣で牽制することくらいだ。
可能な限り相手の行動を予測しつつ、相手の逃げる先をつぶすことで、ヒイロに斬りかかるチャンスを作る。
それに集中すること……それがここ数日の訓練でできるようにしたことだ。
トレハやネルラが岩を使うので、不整地でも飛び回れるように多少の訓練を受けている。
ポルフも魔力を使いすぎたからか、先ほどまでのような動きのキレがないようだ。
何故なら僕の速度でもポルフやヒイロに追いつける!
この攻防がラストって感じだな、絶対に仕留めるぞ。
近くに何とか起き上がっていたヨシュアが居たので戦線に復帰できるかを尋ねた。
「ヨシュア……ポーションの効きはどうですか?」
「さっぱりダメだな。外傷はないが筋肉に力が入らない。
多分、神経が麻痺している感じだ」
眼前に迫ったポルフの一撃を盾で防ぐ。
彼も戦力にはなれないが、それでも復活まで失うのは痛い存在だ。
「そりゃそうだ、普通のポーションじゃ効くわきゃあない。
そいつは体内にある魔力を通す管や噴出孔を傷つける。
だから、時間が経つまで絶対に回復できねえって寸法よぉ」
「魔力がしこたまありゃ無理矢理回復できるんだがね……。
俺たちの中でできるのは隊長くらいじゃねぇか?」
と言うことは他のメンバーには無理か。
む、会話をしながらポルフが何かやって……。
あれは魔力球だ……と、今まで気付かなかったマルチ眼鏡の機能があったする。
──マルチ眼鏡レベル
魔力球に合わせるとそれが何色であるか、どのくらいの魔力を使えば干渉できるかが表示される。
ポルフに気づかれないように静かに照準を合わせる、素早くスライダーが動いて自動的に色を合わせる。
魔力球に向けてこれまで使っていなかった、もう一つの魔法を使ってみる。
「『エクス-』」
「ちょっと待つでち。今何をしようとしまちた?」
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