第36話 1部エピローグ・セレーネとポルフについて

 何というか、急なモテ期とかウェブ小説の主人公じゃないんだから心が持たないんだよな……。


「今は隊の訓練が一番一尽きますね」

「ん?どうしたんだ?今までそんなこと言わなかったじゃねぇか」


 ということで、訓練後の休憩時にヒイロに人生初のモテ期が来て、若干困っていることを話した。


「ほ~、お前四人も言い寄ってきて大変だなぁ」

「まったくですよ……。ん?四人?」

「四人だぞ?気付いてないのか?」

「カスミちゃん、ノインさん……。二人では?」


 ヒイロはものすごく長く深いため息をついた。


「お前、本当に鈍感なのか。ポルフとセレーネ隊長の好意にも気づいてやれよ?」

「え……?」


 あの二人が僕に好意?

「ないないないないない。

どこにモテる要素があるんですか。

きっかけなんて何もなかったのに」

「いや、十分すぎるほどあったじゃないか。

特にポルフは、お前が復活できないこと気付かなきゃ今頃ガチで死んでたし、お前が神様に頼まなきゃカードを得て人間にはなれなかったし、お前が神器をポルフの持ち物にしなきゃ裏技的にうちの隊に配属されることもなかっただろ?

ここまで救われてる相手に好意を抱くなというのも難しいだろうよ」

「それはライクの好意であって、ラブとは違うんじゃ」


 気付いたらテーブルをドンと叩きながら立ち上がりつつ抗議していた。


「はっはっは……お前は鈍感なくらいが一番モテるんだが、もうちょっと機微を感じ取れるようになれよ」


 ふてくされながら椅子に腰かけて、もう一つの聞きたいことに触れた


「あと、セレーネ隊長ってなんの冗談ですか」

「あぁ、そっちな。そっちは半分事故みたいなもんだ。

お前は遺跡でセレーネ隊長を助けるときに、『セレーネ隊長の鼻をつまんでポーションを口移ししただろ?』あれが、セイレーン族の婚姻の儀式で使う誓いのキスと同じポーズなんだ」

「は?」

 そんなの知るわけないじゃないか。事故だよそれは。


「海の中で行う結婚スタイルでな。

鼻をつまんで新郎の呼気を思いっきり新婦に吹き込んで、エラからブクブクと泡を出すんだそうだ。

そうすることで、肺をアナタで満たします。

それを転じて、貴方色に染めてくださいという愛を誓う行為なんだよ」

「意図せず愛を誓ってしまったわけなのですか」

「それもあるが、セレーネ隊長が前に隊員に言い寄られまくったときに宣言してたんだよ。

『私と結婚したいなら唇位奪ってみろ』ってな。

だからもう、騎士団内のセレーネファンクラグでは奪ったお前と付き合うと思われてるぞ。

ファンクラブに寝込みを襲われないように気を付けな」

「ちょっと待ってください。ファンクラブって何ですか」

「そもそも、同室で監視されて、同じ部隊に配属され時点でかなり恨みを買ってるから頑張れ」

「何ですかそれえええええ」


 ボクの初めてのモテ期はめんどくさいことになっていた。


「そういうわけで、ここが一番落ち着くということになりました」

「なんだ?自慢か?」


 実験場でマリモに愚痴をこぼす。

 ここ以外だと大体四人のうちの誰かと長時間顔を合わせることになるから可能な限り、女性と二人きりにならないで居られる場所を提供いただいている。

 それと研究に没頭したおかげで、建物を壊さずに相手を損傷させすぎない捕獲用手投げ弾の研究が進んでいた。


 爆弾で敵に爆破ダメージを与えるのではなく、打撃魔法を周囲に拡散させて、相手をボコボコにすることで気絶させることに特化したものに仕上がっている。

 ボクたちはこの手投げ弾のことを、ブローグレネード、殴り手投げ弾と名付けた。

 

 今のところ実験はうまくいっており、いつでも量産をして配備できるように調整中だ。

 これで俺も発明王じゃい!

 これを騎士団に卸すことで特許権で一気にお金持ちだ!

 俺はこれからもこの世界の発明王として、この錆びついた世界を開拓して、名声も富も女も手に入れていくのだ~~~。

 だ~~~はっは。


 ──

 ────


「さあこれでどうだ!」

「ボツ」

「途中まではまあ整っているが、が締め方はもうちょっとどうにかしろよ。

大庭おおばお前はキャラの一人称もたまにブレるし、語尾も安定しないし、急な恋愛要素は入れてしまっている。

やりたいことが多すぎて瞑想してしまっているんだ。

何よりラスト数行でお前自身の下衆な人格出ているじゃねぇか。

ちゃんとキャラに合わせたセリフにしろ。な?」


 ここにいるのが、オーバとウェリ、ティア。

 もとい、大庭と上里かみさと碇矢いかりやだ。

 アパートの一室で三人でゲーム開発とを行っている最中だ。

 実は三柱の神と言うのは、この開発者三人の名前をもじったものである。


 大庭はそのままオーバ、上里は上(うえ)と里(り)、碇矢は碇(てい)矢(や)。

 それぞれのペンネームとして考えた名前だ。


「あとな、大庭。アラミド繊維はケプラーKeplarじゃなくて、ケブラーKevlarだぞ。

スペルを間違えているから衣服じゃなくて鎧に分類されちまっている。

だから、破れるんじゃなくてバリーンって金属みたいに割れるんだ。

布の服がバリーンだぞ」

「まあまあ、良いではないか~。

そういうアクシデントがないと、リアリティに寄りすぎて面白くないよ。

この『神視点ロールプレイングゲーム・異世界の箱庭』は」


 『神視点ロールプレイングゲーム・異世界の箱庭』は、この三人で開発したゲームの名前である。

 自分たちで思いついた言葉その世界の構成要素として取り込み、生命が生まれたての地球にインプットし、文化が根付くまでの期間を指定して急成長させる。

 出来上がった疑似地球をそのままげえーむといて開発してもいいし、今回のグラスキーのように、主人公のキャラクター設定をインストールして異世界転移者や異世界転生者と言う主人公を作ってその行動を観察することもできる。


 神として世界に干渉してもよし、成り行きに任せて鑑賞してもよし、作成したキャラになりきってロールプレイングするもよしのゲームだ。

 この作品は、大庭が自キャラの行動ログを元に書き起こした物語であるが……どうやら大庭には小説書きの才能は無いようだ。

 まぁ、彼女が飽きたとしてもグラスキーはゲームの中で冒険をつ透けるし、世界を爆破するまで彼の行動は止まらないのだ。


 ──また、いつか続きが描かれるかもしれないでち。

 ──アタチはそれまでログを取り続けまちゅよ。

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世界の崩壊をボクの眼鏡が救うだと?(旧題:壊れかけの異世界とクソ眼鏡) バイオヌートリア @AAcupdaisuki

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