第16話 推しの為に就職する件④

「合格――」

「最後に……」

1stの男が呟く。

「最後に一つ、試させてもらう……」

「ブレイン、何を――。」

「この子が死んで悲しむのはユイだ。それなら――力を示してもらおう。」

「なにをすれば――」

「俺の一撃を、破ってもらう。」

「――分かりました。」

1stは大剣を上段に構える。

そして俺も、今出せる最高の剣技を――。


推進兵剣術・七式――。

銀河天文流・六式――。


〝須佐能〟


全身を電気で刺激し、肉体の限界を超える。そこに衝撃波による加撃と加速。


――一撃で止めるんじゃない――。連撃で、手数で止める!―――あの人の言うことは確かにそうだ。俺が弱くて、ユイが悲しむのは、一番嫌だ!

限界を超えろ!剣に乗せろ!全てを込めろ!


《赤眼》の光が強まり、筋肉が隆起し、血管が浮き出る。

同時に切り開き、同時上段、同時下段、――逆手に持ち替え、四連撃。

最後に右手の会心の一撃。


六式・〝激烈閃撃〟


まだだ、止まるな――。動き続けろ――この、極限の瞬間を!


神約八連撃・剣技スキル《メテオストライク》


右手の剣の八連撃。

左の剣でソルジャーの剣を捌き切る。

半ば勝手に動く両手を更に意志の力、自力でブーストする。

脊髄反射、脳を通さない圧倒的直感の動作。

しかし左手には盾が欲しかったと途中思う。

(躱せない――!)

ソルジャーの気迫――。

「……ぉぉぉぉおおおおおお!」

「……ぁぁぁあああああああ!」

剣と剣のぶつかり合い。衝撃を、電撃を、超えろ。

「ああああああああ!!!!」

生命の限界を、一閃に。

衝突、その瞬間三つの剣は、粉々に砕けた。

「武器が耐えられなかったか――」

「ハア、ハア……」

全身に――力が入らない……倒れ――

俺が倒れた先は、ユイの胸の中だった。

「お疲れ様、シンくん」

「それで、ブレイン、彼は――」

「合格、それでいいでしょう――ですが、2ndではなく、1stとして」

「そうだねぇ……2ndにしては強すぎる――。訓練兵以上の強さだとは思っていたけど、これほどとは――」

「最後の連撃、この男は未来が見えているのかというような動きをしていた。それに彼の眼が赤く光ったとき、《全く別の気配》に変わった……一体何者なんだ――」

「まったくユイ、君はなんて子を魅了したんだ――いや、好きになったんだ。」

「えへへ……」

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