第20話 心の竜(ドラゴン) 真兆の神

「―――――行くぞ」

黒い剣を握ったシンは、竜に向かって走り出す。

「ガアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!」

竜の顎を避けながら、《剣技》を発動する。

「はあああっ!!」

《ライトベール》の光を纏った刀身が踊る。

片手剣上位剣技・《プロミネンス》

連続10回攻撃――――。

しかしそれは、竜の鱗に阻まれた。

「ぐっ……」

爪に腕の皮が割かれる。

片手剣単発上段剣技・《スラット》

渾身の力が込められた剣技は、シンの身体を動かす。

(何故だろう、身体が、勝手に動く―――)

「ぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

六連撃剣技・《パーティクル・リンク》

六連撃を一点に叩き込む派生技。

片手剣三連撃剣技・《アスタリスク》

それでも竜は傷つかない。


――――竜、ドラゴン。

世界中の伝説に現れ、その全てが、強大な力を持っている。

時には人を殺し、時には救う。

神として信仰する地域も存在するほど、大きな力の存在。


「ガアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

竜は雄叫びを上げながら翼を広げ、宙に飛ぶ。

「お前は、俺の可能性―――俺のif…‥けど、人を殺す力だ」

――――俺が欲しいのは、そんな力じゃない。


「俺が欲しいのは、守る力だ。―――ユイを、みんなの大切なものを、明日に繋げる力。―――お前を扱ってやるよ。俺がお前の主だ、ドラゴン」

「グルルルル……グガアアアアアッッ!!!!!!!!!!!!!」




「シン君」

現実世界で、ユイが訓練室に入り、シンに呼びかける。

「帰って来て、シン君、君は……私の……ファンなんでしょ」



誰かが言った。


――――俺は、俺だ。


と。


竜殺し。しかしそれは、竜に最も近い存在。他人には、竜も強き人間も、大差ない恐怖なのだ。


ただ、それでも―――みんなを救い、守る者を……人は、英雄と呼ぶ。


――――――――竜牙餐喰(ドラゴンイーター)


竜の顎は、喰らうため、教えるために、シンを襲う。

その雄叫びが徐々に迫ってくる。


「来いよ」

―――――英雄の炎(リオネルフレイム)


片手剣を両手で振り上げ、その炎を刃に纏わせて―――。


その炎は、人を守る、暖かい炎。

心の底から湧き上がる、僕の心。

ここは、僕の世界だ。


俺の身体に、力が湧いてくる――――――


「リオネル……アルタイルス!!!!!」


昨日、夢を見た。

その男は一本の刀と、二本の剣を携えた、黒コートの剣士。

そいつの中に、似たような炎を感じた。

《黒き剣士》。


紅の炎は、暖かく、竜を癒す。


「……………俺に力を貸してくれ、ドラゴン」

「……………グルルルル……」

竜は頭を下げた。

低い姿勢で、竜の言葉でこう言ったのだ。

貴方に従います、と。

「…………………ありがとな」





「………………ただいま」

現実に戻ってきた。

そこは壊れかけの訓練室。ユイの膝枕。


「……………おかえり、シン君」



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