第12話 推しがバレた件
「……何これ」
家のドアを開け、一歩を踏み出そうとした時。
「神崎ユイさん、その人は誰ですか!」
「週刊誌の者です、お話を――」
家を取材陣が囲んでいた。思わずドアを閉める。
「…………どうしよう……」
慌てる俺と違い、ユイは真っ直ぐな眼で。
「大丈夫」
そう言いながらドアを開いた。
「私は、この人。新城シンさんとお付き合いしています。」
カメラのフラッシュが殺到する。
「けれど、私はアイドルを辞めるつもりはありません。事務所とも話し合い、これからも《ラブラブA》を続けていくつもりです。」
「しかし神崎さん、このことをファンはどう思うでしょうか。非難の的になると思われますが――」
「私のファンを舐めないで下さい。彼らはそんな人じゃありません。私は、彼らのたった一人の推しなんです。」
「それに――彼が守ってくれますから。」
俺の方にも記者が――。
「新城さん、あなたはこの状況をどう思いますか?ファンを魅了する女性とお付き合い出来る程、あなたは――」
「俺は、彼女を守る。ファンだから……推しを守るのは当たり前でしょう。」
「彼女の全ファンの皆様に、どうか……よろしくお願いします」
ユイがあそこまで言ってくれたんだ。俺も――向き合わなければ。
だって彼女は――世界最高の――推しなのだから。
カメラのフラッシュが一層強くなり、記者が寄って来る。
「すみません!」
俺はユイの手を引いて、記者を押しのける。
学校に行こう。
校門に着いた。
「大変だったみたいだな」
「裕也、そう思うなら助けに来いよ……」
「無理だろ」
「だな」
「さあ、行きましょう。」
「おう」
新章・《就職編》
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