第13話 推しの為に就職する件①
取材陣を抜けて学校に駆け込んだのち、先生方のご厚意でユイの事務所に送ってもらえることになった。
「ここが、ユイの事務所―。」
《ファイナルスター・プロダクション》
芸能系最王手。多くの大人気グループがここに所属している。
「さ、入って」
ユイに手を引かれ中に入ると、多くの有名人とすれ違った。
「お、ユイその子が言ってた――」
何人かの人に話しかけられる。
そして俺が一番気になったのは、《警備員》だった。
《ファイナルスター》の警備員はそれぞれがかなりの練度で鍛えられ、超難関就職の一つとして数えられている。そしてアイドルを警護する兵士のような姿から、ファンの間からは《ソルジャー》と呼ばれ、恐れられている。
「やあ、ユイ――そして、新城シン君。」
「あなたは――。」
「社長!」
「私は神楽木。この事務所の代表よ。」
そして社長室に呼ばれ――。
「今日の朝は大変だったようね。」
「ホントだよ~逃げるのに苦労したんだからね~」
ユイもかなりラフなしゃべり方だな。
「まあ、自業自得な点もあるが――。本題に入るとしよう。新城君、ソルジャーにならないか?」
「えっ」
「うちの警備員だよ」
ソルジャーとはファンが名付けた別称のはずだが、いつの間に正式名称になっていたのか――。
「ユイを守ってくれないだろうか?」
「やります」
「即答。いいね。」
「君はまだ高校生だ。バイトという形で階級2ndに所属してもらうことになる。」
「分かりました」
「しかし無条件ではいかない。うちの稼ぎ頭を任せるんだ。ある程度のテストを受けてもらうよ。」
「テスト?」
「来たまえ。」
行った先は、訓練所。
「ここで日々、ソルジャーは訓練を行っている。」
そこで待っていたのは、大剣を持ったとげとげしい髪形をした男性。
「彼は《ブレイン・ストライク》。ソルジャーの最高階級1stのうちの守護神だ。」
「――。」
男は無言でこっちを見ている。
「試験は彼と模擬戦闘を行ってもらう。なに、死ぬわけじゃないんだ。遠慮なく、ね。」
「頑張ってシン君!」
壁には多くの武器が飾ってある。
その中から片手剣と円盾を手に取る。
「準備はできたかい?」
「はい――。」
「それでは、試験開始!」
次回
《推しの為に就職する件②》
ソルジャーの強さの正体、そして、《剣技》
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