第七話 港の亡霊

 「ここが港町フィビュラです!海産物が有名で貴族御用達の客船も多くあります。」


 湿り気を持った潮風が頬に触れ、海鳥の鳴き声が聞こえてくる。少し離れた屋台の方から、美味しそうな焼き魚の匂いがする。 


 「かなり賑わっている町なんだね。」


 「あっ!ありましたよ。自警団の詰所!」


 周りの建物よりかなり大きく、綺麗な見た目をしている。


 「おお?もしかして海賊でも捕まえてきてくれたのかな?!」


 「はい、いや、細かくは盗賊ですけど。」


 「協力感謝する!ボクはこの自警団のリーダーサジ!そいつのことは任せたえ。」


 「よろしくお願いします。」


 なかなか勢いのある人だ。背負っているのは弓矢だろうか。


 「記録を残す必要がある。君たちの名前を聞かせてもらえるかい?」


 「旅人のトランです。」「同じく旅人ルネです。」


 「そうか、よろしく。この辺りは怪しいやつが増えたから気をつけるんだよ!」


 「あの!その盗賊、異能文字の使い手なんです。」


 「文字使いの盗賊とは珍しい。だが安心してくれ!私も使えるからな。」

 

 サジは弓矢を見せてくれた。兵士に支給されるものよりも少し大きいようだ。


 「詳しくは説明できないけども。私は弓を使った能力だ。まあ問題はない。それでは良い旅を!」


 盗賊はどうにかなったので、取り敢えず町の中心に向かった。屋台が多く、さまざまな匂いや音が入り混じっている。


 「そういえば、あの盗賊はいつ石板を手に入れたんでしょうね。」


 確かにあの短時間で見つけるなど余程運がいいか、、、


 「誰かが石板を渡した?」


 「そうなるとこの近くにまだ、異能文字の使い手がいるかもしれませんね。」


 そうかもしれない用心しておいた方がいいかもしれない。


 「ところでここにきた目的は何なんですか?やっぱり港町だから船ですか?」


 そうだった。色々とあって伝えるのを忘れていた。


 「ああ、そうマーチの町に行くためにね。ごめん教えたなかった。」


 「おお、目的地はまだ先でしたか。あっ、ちなみに私は修行の旅です。」


 そうだったのか。どうりであんなに戦い慣れていたわけだ。


 「ん?なんかあっちの方で騒ぎ声が聞こえません?」


 近づいてみると幾つかの露店の店主が困っているようだ。


 「くそっ!また高い物ばかり盗んで行きやがった。」「また港の亡霊が出たのか。今週5回目だぞ。」


 「港の亡霊……幽霊ってことですか?!」


 「ん?ああ、嬢ちゃんたちは旅人か。」


 こちらに気づいたガタイのいい、船乗りらしい人が説明してくれた。


 「港の亡霊ってのはな、2週間前ぐらいだったか、影しか見えない透明なやつがここらの露店の品物を持っていくようになったのよ。おかげでみんな困ってんのよ。」


 なんとも不思議な話だ。けれどこれは、、、


 「これって、異能文字の力だったりしません?」


 ルネがこっそりと聞いてきた。


 「そうかもしれない。」


 「あんたらもし船に乗りたかったんなら運が悪かったな。羅針盤だか何だかが盗まれたらしくて船は出ないんだってよ。近頃海賊も出るしな。」


 「「えっ!」」


 「困りましたね。これではマーチに行けないじゃないですか…」


 確かにどうしよう。また船が出るまで待つという手もあるが、、、


 「ん?」


 少し離れた地面に黒いシミのようなものがある。よくみると、袋の中に入れていた財布が浮いている!


 「財布が!追いかけよう!あっ、色々教えてくださり有り難うございました!」


 「ああ、気をつけてな!」

 


 


 

 


 

 


 

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