第一章 旅立ち

第一話 前日

 草原の花々の香りをのせた、穏やかな春風が頬を撫でる。昨晩の雨に濡れた草でチュニックの裾と皮のズボンと靴は湿っている。

 

 「やあ、少年!」


 明るくハッキリとした声が聞こえる。名前はリーサ。白い白衣を纏い、黒縁のメガネ、長く伸び、整えられていない髪を持つ。何故か今はそこそこ大きい麻袋を持っている。


 「俺もこの村ではそろそろ成人の18歳だよ。流石に少年ってよぶのは、、、」


 「じゃあまだ少年じゃないか?」


 「いやまぁそうだけど。」

 

 「それはそうと少年よ。見てみたまえこの素晴らしい剣を!!」


 そう言うとリーサは麻袋の中から風変わりな部品のついた剣を意気揚々と取り出した。


 「君が読み解いてくれた古文書から作ったものでねぇ、ここの目盛りを回すと、、、」


 ガシャン!


 大きな鍋を落としたような音と共に、なんと剣の刃が2倍程に伸びた!


 「すごいだろ〜図によると本来もっと伸びるらしいが、不足した素材がある中でここまでのモノを作り出したのはやはり私の腕がいいからとしか言いようが…」


 「それを伝えにきたの?」


 流石にその為だけに出てくることは無いだろうと思い聞くと。

 

 「おぉそうだった。君の父上から手紙が届いていてね。」


 リーサはそう答えると、綺麗な模様の封筒を取り出した。


 「なになに内容は、、、」


ートランへ

 元気にしてるかい?

 暫く家に帰れていなくてすまない。

 そろそろ成人の儀だろう。

 母さんが成人するときに渡すように言って

 いたこのペンダントを送っておく。

 これからも健康に気をつけて頑張ってくれ。

             アドヴァンよりー

 

 「これがペンダントだ。そういえば成人の儀はいつなんだい?明日の昼だっけ?」


 ちゃっかりリーサが手紙を覗きながら言ってきた。


 「そっ、明日の昼。」


 成人の儀は自分の住むジェニの村の外れにある、洞窟の中の石碑の前にある、大きな鐘を鳴らすことで成人だと認めてもらえるという内容だ。

 

 「まあ頑張りたまえよ少年よ。そういえば洞窟の中には怪物がいると言うじゃないか。この辺りには魔物はいないというのに。」


 「まあ今まで現れたことはないし、多少は鍛えてあるからそこまで気にしなくても。」


 「ならこれを授けよう。」

 

 リーサが麻袋の中から何かを取り出した。


 「これは一時的に力が増す手袋で、なんと!時間が経つと勝手にエネルギーが充電される優れもの!ありがたく受け取りたまえ。」


 「ありがとう。せっかくだから貰っておくよ。」


 「ぜひ役立てたまえ。」

 

 そう言うとリーサは麻袋を担ぎ直して村外れの研究所へと歩いて行った。


 「あの袋いったいどれだけ入ってるんだろう、、、」

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