第四話 朝

 「君にそれを知る決意はあるかい?」


 製作makeなる力、あの札の文字、そしておそらくあの女や狼が使った言葉……それに言語学者である母が調べていたこと、あのペンダントに反応したこと、全てが謎だ。けれど、、


 「俺は知りたい。母さんが調べていたことが気になる。それに、俺自身がそれを調べたいと思っている。」


 東の空が白くなってきた。小鳥の鳴き声が聞こえる。焦げた匂いはいつの間にかしなくなっている。


 「あの方の息子なだけあるな、なら伝えよう………異能文字について分かっていることは少ない。分かっているのは幾つかの例外を除き、声に出すことで力を発揮する。」


 成程、だから突然ハンマーが現れたのだ。


 「そして基本1人しか使うことは出来ず、そもそも大抵の人は読むことすら出来ない。また、使える様になるタイミングは様々でその力も多岐に渡る。」

 

 リーサが微笑みながら近づいてきた。


 「すまない、少年よ。私が知っているのはここまでだ。いくら私が天才だとしてもそもそも研究分野が違うしな。」


 「ううん、ありがとう。おかげで少し理解することが出来たよ。」


 「そうか、ならよかった。そういえば幾らか離れているがマーチという町に君の母上の研究仲間だった人がいるらしい。そこにいってみるのも良いだろう。」


 リーサは伸びをした後言った。


 「よし!少年!もうここらに怪しい影は無いだろう。戻ろう!」

 

 「うん!」


 朝日が差し始めた頃。家の前にディードがいた。


 「ディード!もう動いて良いの?!」


 「いや、まだ少し痛むが平気だ。それよりお前、旅に出るんだろ。すまない、聞いてしまった。」


 「うん、そうなんだ。」


 するとディードは袋を差し出した。中にはパンや水筒、火打ち石などが入っている。


 「これって…。」


 「持ってけ、袋とか俺の親父のお下がりだけどな。」


 「ありがとう!ディード!」


 「村のことは安心しろ。俺がここで守っていく。今日はもう寝ろ。またな。」


 「うん、また!」


 旅立ちの前、最後の日は村の人達に挨拶をし、村の片付けを手伝い、準備をした。


 「リーサ、ディード、村長。いってきます!」


 「マーチの町にはここから東の港町フィビュラから船に乗るといい。気をつけるが良い。」


 「村のことは任せろ!困ったらいつでも戻ってこいよ!」


 「この村から若き力が消えてしまうのは惜しいが。新たな旅立ちを祝福しよう。」


 「皆さんありがとうございます。」


 「体調万全、気候も良し、うん、良い朝だ!」

 

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