第十六話 ノーア
清潔感はあるが生活感はない牢獄の薄暗い廊下に足音が響く。
「お前が
「ああ?!何だぁテメェ!何のようだ!ん?見張りは?」
「ええ。少々眠ってもらっています。ところであなた。私と共に世界を壊しませんか?」
今まで聞こえていた大砲の音が止んだ。暫くの沈黙が続く。
「アッハッハァ!破壊だぁ?!おもしれぇな!なら出してくれんのかぁ?!」
「今のあなたならその壁すらも透過できるはず。異能文字の力は意志。ここに閉じ込められた怨みがないわけはないだろう。」
「ほお?!なるほどそういうことなら!
トラミスの身体はなんと鉄格子を通り抜けた。
「マジか、、、面白い!手伝ってやらぁ!」
「そうか、協力感謝する。」
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「看守!無事か?!」
辺りには気絶した看守や見張りが倒れている。
「遅かった、、、サジさん!牢屋の中に!」
牢屋の中には一枚の紙がある。
「何が書いてある?!」
「『
「波線入りの立方体。久しく見ていなかったな。」
体格の良いしっかりとした、スーツを着た男がいた。
「所長!おはようございます!この記号について何か知っておられるのですか?」
「ああ、これは10年前。一つの国を滅ぼしたと言われる犯罪組織、ノーア。そのシンボルだ。」
「ノーア、、、初めて聞きました。だとしたら何故この組織はあまり知られていないのですか?」
「それは簡単だ。この辺りの地域では被害が出ていない。それにそもそも活動地域との言語が違うからな。サジ、後で所長室に。話がある。」
「はい!」
所長はそう伝えるとすぐさま、トラミス捜査の為の指示を出しはじめていた。
「すごい貫禄があるな、、流石所長。」
「ああ!あの人は元々はこの辺りのごろつきをまとめ上げ、この自警団の前身となる組織を作ったんだ。と、今日は疲れただろう!宿屋を手配しておいた、また明日来てくれ!」
「分かった。じゃあまた。」
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「トラン様ですね。サジ様よりご予約頂いております。どうぞこちらの部屋へ。」
「ありがとうございます。」
部屋でベットに寝転びながら考える。フカフカしていて暖かい。じわじわと安心感が現れる。
(怖かった、今までも村に来た山賊程度なら相手にした事はあるけれど、、、これから先、異能文字を調べていくのなら更に強い敵が、、、)
旅立った時の漠然とした不安が現実として強く感じられる。
(ルネは大丈夫だろうか、、、明日なにか見舞いの品を持っていこう。これからはこうならない為にも力が必要なのかもしれない。)
具体的になった不安はありつつも異能文字への興味は変わらない。ここの顛末を見届けたらマーチの町に向かおう。
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