四
「こんなに大変だとは思わなかった」ぼくは愚痴った。
「マザー使おうよ、それか公のデータベースか。顔の照合ならすぐすむよ」何度目だろうか。ファーリーが繰り返し言った。
「だめ。民間の検索エンジンでやる。知られたくない」
つまり、ぽちぽち手作業をもう数時間ぶっ続けでやっていた。
「ま、チーバランドの職員なのは確実。けどそれ以上は無理に決まってる」ウォーデもうんざりしていた。観光客がネットで公表した画像の背景にその男が作業服で映りこんでいたのを数枚見つけた。今はそのあたりの時期のほかの人の公表データをあさっている。
「ビンゴ!」
「やっぱりおまえは頼りになる」
ビクタの見つけた画像にも作業服の男がいたが、よりはっきりしていた。拡大と画像補正で部署がわかった。
「ヒロト・サカモト、特殊効果部。えっと……、パイロテクニシャン」
さらに集める。
「イッツアスモールワールド!」
サカモトとあゆみは同僚だった。
「どうすんの?」ファーリーがぼくを見た。
「もちろん聞きに行く」
「目も合わせてくれないのに?」
「それはそれ。これは『カクブンレツ』としての調査だから協力してもらう。あの女がどう思おうと関係ない」
みんな黙っている。
「それと、ぼく一人で行く。取り囲まれて昔話をするのは嫌だろうし、ぼくにだってそのくらいの情けはある」
「情け……とはね。坊っちゃん、ちょっと傲慢だよ」
ファーリーはぼくをじっと見ている。
「ありがと。気をつける」
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