七
帰りはふつうの道を使った。島のまわりをぐるりと取り巻く環状道路。広くて路面はきちんと整備され車輪でも足でも快適。パレットの操縦も半自動だった。みんな荷物を載せていたところに乗っている。
「どうすんの? 続けんのかい? さすがに意味ないんじゃ」
ファーリーはパレットの操作・電源ケーブルをひざに置いている。ときどき散る火花は海の発光微生物のようだった。
ぼくは答える前に事務処理をすませる。振り込まれた報酬を確認して分配した。それとパレットの整備を予約。そしてぼくを含め全員にちょい上の菓子を注文。
みんな笑う。空が明るくなってきた。
「近づいてくる。一輪車が三台」
ファーリーに答えようとしたとき、ウォーデが指を立てて言った。
「ロバリーだな」
ビクタはハードモードへの遷移をはじめた。パレットは脇に寄せて伏せさせる。ぼくとファーリーが残り、二人は散った。
後方からモーター音が聞こえてきた。音に続いてすぐにあらわれる。改造一輪車だった。足と腰だけで運転できるようにしてあった。
問答無用だった。ショックガンのエネルギー弾が街路樹の幹を焦がし、何発かがファーリーのフィールドに当たって火花を散らした。
「あんまりもたないよ。残りが乏しい」ささやいてきた。ぼくはうなずく。
動きや撃ち方に統制が見られない。たぶんこいつらはチームじゃない。一夜だけの小遣い稼ぎ連中だろう。おたがい名前を知ってるかどうかもあやしい。
あっという間にパレットを通過し、二百メートルほど先でまたもどってこようとターンした瞬間、二台が倒れた。のこった一台が加速する。もう一回こっちを通過して逃げ切る気らしい。ぼくは最大出力でショックガンを撃った。転倒。ぼくじゃなかった。ファーリーの放電だった。
三人全員生きていると確認し、深刻なけがもなかったので気を失ったまま木陰に転がしてカードをおいた。一輪車は没収だ。ファーリーがバッテリー外装に穴をあけ、手をあてて吸っている。
「あんましない。貧乏連中め」
「土産ができたな」
「パーツ取りはエイサップでやるよ」
荷物の分せまくなったパレットに乗ってまた歩きだした。朝日はもうだいぶ高くなっていた。
「続けるつもり」ファーリーをつついてさっきの問いに答えた。
マザーは、治安が良くなったと感じたら自警団的活動はやめるのですねって言った。合意条件の提示ありがとう、とも。つまり自警団的活動を許すって事になる。
そう説明するとみんなまた笑った。
「治安がいいとは言えない。環状道路ですらこのありさまだし」一輪車をぽんぽんとたたいた。
「それだけじゃない」ビクタは疑わしそうにぼくを見た。「坊っちゃんはヴィジランテのリーダーじゃサティスファクションしない」
ビクタはまぶしそうに目を細めた。
「坊っちゃんはキングになるつもり。でしょ?」
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