第58話 アークライト水力梳綿機の設計
伯爵様に水車の使用許可を得たので、アークライト型の
水力紡績機の試作の検討に入る。
リチャード・アークライトは発明家でもあるが事業家で
自身で自動化した設備を用いて工場を建設し
大量生産技術で大儲けした。
産業革命期でもっとも大金持ちになった発明家とも言われている。
しかし水力紡績機の前にどうしても必要なのは、
カード機とも言われる梳綿機と混打綿機である。
梳綿機とは櫛で均す作業である。混打綿機は叩いてゴミを落とす作業。
これが人力では非常に大変で労働コストが高かった。
1748年、ルイス・ポールが梳綿機を発明。それを改良する形で
1771年、アークライトは紡績機だけではなく梳綿機も開発して自動化したのである。
そして実はアークライトの水力紡績機はジェニー紡績機と比べ
コストは殆ど変わらない現実があったのである。
つまり人件費に対して設備が高すぎた課題があった。
また素人には難しい調整があって技が必要だった。
梳綿機はローラーに釘状の櫛を打ち込んで、
上からベルト状の蓋を被せて繊維を固定する方式である。
ローラーを回転させる事によって繊維が櫛で解れる作業。
小さい穴を開ける事で、繊維に付着したゴミを落とす作業も兼ねている。
このローラーを回転させるギアが複数あり、
その動力としても水車を応用したい。
という事で簡単な構造を図面で書く。
部品数がジェニー紡績機よりも多く大型なので
細かい部品の作成と組み立てはキルテル村になる。
大型の部品はこちらで試作して馬車で一緒に送ってもらおう。
土台とギアとローラー関係他になる。
費用がかかるが木材加工屋に依頼する。
完成はずっと先だろう。
前段取りは大切なのである。
「中々、構造が複雑になってきた。
アークライトも苦労したのだろうか」
とりあえず呟いてしまうエリオス君。
ジェニー紡績機は非常にシンプルであるが、
アークライト型は複雑で設備が高価である。
しかし実際にアークライト型梳綿機とジェニー紡績機は
セットで原材料代を込みで生産原価を2/3と3割低下させている。
3割も手作業と比べて儲かる結果。
という事でイギリスでは爆発的に広まったが、
失業者を恐れたフランスやインドでは広まらなかった。
「お父様とお母様は無事だろうか。
故郷では無事生産して皆が生活出来ているだろうか」
図面を書きながら思う。
連絡手段が手紙しか無いのである。
しかも人力運搬。
鉄道も無いので直ぐに帰って戻ってこれない。
生産活動に寄与出来ないので辛い所。
次は蒸気機関の開発かな。と思ってしまった。
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