第12話 女神メサ様降臨

 自宅で色々と考え事をしていると、急に辺りが光に包まれて

気がつくと一人の神々しい美女が佇んでいた。

眩しい光にまぶたをゆっくり開けるエリオス君。



「ご機嫌は如何ですか?

 エリオスさん。転生神のメサです」

「...これはこれは、女神様」



 10年ぶりの女神様降臨である。

ばーん。


 とても驚いたエリオス君。

女神様が急にいらっしゃったのである。

神々しいオーラに圧倒される。

眩しいばかりの圧倒的な存在感である。



「第2の人生は楽しんでいますか?」

「ありがとうございます。女神様。

 お陰様で、なんとかやってこれています」

「10年ぶりですね。元気そうで何よりです」



 にこやかに女神様が答える。

転生する時にちょっと会った程度であるので、

実はしっかりと記憶に残っている訳でもない。

それ以降は女神様に会ってないので久しぶりである

そう言えば世界に介入するのはダメだったのでは?と思うエリオス君。



「今回は映像だけです。実体はこちらにはありません。

 それでもこの世界への介入にはなってしまいますが」



 エリオス君の考えが筒抜けであった。

ああ、考えている事が分かるんでしたね、と思うエリオス君。

実に早合点である。



「今回こちらに伺いましたのは、

 魔王国に産業革命の兆しが見えてきた事を伝える為です」


「魔王国ですか。本当に魔王がいるんですね。

 あちらにも僕と同じ様に転生者がいるということですか」


「魔王国は内戦で未だに膠着状態です。

 ただこのまま未来まで放置していくと

 人類側が劣勢になって魔王国に蹂躙されるでしょう。

 それほどの大きな技術格差があります。

 転生者がいるかは確認出来ておりませんが、

 十分想定出来る事態ではあります」



 女神様の発言を聞いて悩むエリオス君。

それは嫌だなぁ、と。

この発言から国力差はまだ絶対的な話ではないと思われるが、

技術格差が相当に大きいと推定される。

じゃ実際、どこの大英帝国だ?

近世から近代までは軍事力と経済力で圧倒されると、

後は植民地化まで国家や民族まで全て蹂躙されるのが前世の植民地時代の歴史。

こちらが負け側として再現されても面白くはない。



「・・・これも秩序神様のお伝えでしょうか?」

「いえ秩序神は関係ありません。今回は私の独断です」


「あいかわらず世界の危機が何か僕にはさっぱりわからないんですけど

 大丈夫でしょうか?女神様。

 こちらは地方の村なので、世間から隔離された状態でございます」


「今はともかくこれから世界が動き出すと、

 とても大きな流れになるのは想定されます。

 エリオス君には是非ご活躍を期待しています」



 相変わらず的を得ない女神様の発言である。

まあ激動の時代になったらちゃんと活躍せいよ、

という事であれば頑張りますとエリオス君は思ったが、

実は先立つものが今は全く無かったりして何もできやしない。



「しかし、僕はまだ固有の軍事力と経済力を保有していません。

 田舎の一子供なので。世界に介入出来る余地がありません」


「課題はそこですね。

 貴方には是非活躍してもらいます。行動を期待します。

 こちらからは物理的には介入出来ませんが

 情報という形で間接的に支援出来るかと思います」



 しれっと笑顔で答える女神様。

介入出来ないという設定のはずが、

めっちゃ介入してますな。と思うエリオス君。

しかし、今はどちらかというと物理的支援の方が必要でもあった。

情報だけあっても使いみちがないのである。



「今エリオス君がお作りになられている繊維軽工業の

 設備と産業が立ち上がれば資金面ではなんとかなるのだろうか

 とは思っていますが」


「確かに女神様の仰られる通りかもしれません。

 しかし産業の要は製鉄。軽工業だけでは市場規模が限られます。

 重工業が成立しないと産業革命が成立したとは言い難いかもしれません。

 それには莫大な資本とリソースが必要ですね。

 課題です。もちろんやりたいですが」



 答えるエリオス君。悩みである。

鉄は国家なり、と言われていた。

ビスマルクの名言である。 



「ちなみに世界の危機とはその話でしょうか?」

「いいえ。勿論違いますよ」



 女神様の答えにますます謎は深まるばかり。

いったいこの方は何を問題としているのだろうか?



「そもそも魔王国と人間は対立する必要があるのでしょうか?

 個人的に僕が情報が分かっていないだけですが」


「神々から見たら魔に落ちた眷属がはた迷惑なだけで、

 人類から見たら魔王国と対立する必然性は無いかもしれません。

 過去の歴史が尾を引っ張っているので、

 お互いを認めて和解する事が出来ればですが」



 そう女神様が答える。

まあそんな程度であればよく歴史である話である。

食料問題や人口問題でよほど切羽詰まっていなければ。

それでも戦争になる事は多いにあるであろう。



「ちなみに都市への留学は女神様の作戦ですか?

 急な話なので驚きましたが」

「・・・うふふ」



 怪しい返事をする女神様。

誤魔化したか。やはり腹黒である。

意図的に説明を拒否するのは嫌われるぞ。と思ったエリオス君。



「まあ都市生活を楽しみにしておいて下さい。

 あとは世界の危機に対抗できる力を付けておいて下さい。

 今は飛躍をお祈りしております。それではまた」



 また疑わしい発言をする女神様。

裏で何をやっているんだかこの女神様は、と。

そう言うと女神様は消え去っていった。

また会いそうな予感がするエリオス君。

あとはその秩序神がどう出てくるか心配になった。

この世界の神様って、ギリシャ神話みたいに沢山いそうで怖くなる。

まあそれはそれで考えるしかないですね、と考えるエリオス君であった。

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