第9話 ある日、先生に職員室に呼ばれて・・・未来が変わる瞬間

 先程、先生に呼ばれたので職員室に向かうエリオス君。

先程の雑談のお説教だろうか。

何だろう。

別に怒られる事はそんなには無いはずである、と。



「先生、遅くなり申し訳ありません。エリオスです」

「ああ、エリオス君か。ちょうど良かった。こちらに来て下さい」



 職員室には担任の先生と校長先生の二人がいた。

先生方は見た所、別に怒っている様子もない。

せっかくなので話を聞いてみる。



「どの様なご用件でしょうか」

「そう構えないで欲しい。

 別に説教をしたい訳でもない」

「はあ」



 先生は話を続ける。

お説教ではないのであれば、何であろうかと

エリオス君は注意して話をお聞きする。



「エリオス君は成績優秀だから、

 実は我々教員も細かい事は言わないようにしている」

「色々とお気遣い申し訳ありません」

「まあ固くならずに。

 実は領主様より優秀な子供を集めて都市で専門教育を受けさせよう

 という話がこの村にも届いている」

「またとない良いチャンスだ。

 都市の学校で良い学問を学び、良い友人を作るチャンスでもある。

 私としてもこの村から優秀な子供を送り込むとしても鼻が高い。

 もちろん村長さんにも了解を取ってある」

「お父様の許可がいりますね。都市の学校ですか」

「そうだ。実際に入学するにはまだ先の話になる。

 選抜試験があるからしっかり勉強しておく様に」



 エリオス君は先生方からそう説明していただいた。

なるほど、と思った。エリート教育の一貫である。

中世のヨーロッパにも階級身分別の教育があり、都市学校があった。

領主様からの情報であれば間違いないだろう。

しかし選抜試験があるというのであれば、

当然それなりの学力が必要であろう。

心のうちでは、学業に拘束されると実家での研究が滞るから

製造業の立ち上げを考えるとそれもまた困る話である。


 しかしこれは良いチャンスであろうと、エリオス君は思った。

今のままでは木材手加工にとどまって製鉄業まで手が回っていない。

予算と道具が無いのである。田舎では調達が難しい。

都市であれば、製造業の資材など入手出来るかもしれない。

設備を作ったり、材料を買ったり売ったり。


 別の見方からすると今まで出来なかった事が出来るかもしれない。

それに動力源となる水車の権益を確保するには、

権力者に近い都市の方と交渉する機会が出てくるかもしれない。

急ぎお父様と相談である。

しかし村から出ていったらチェリーちゃんが泣くだろうな、と。

この田舎でも一応人間関係はある。



「この話は委員長のニーナさんと一緒に都市へ留学に行ってもらう」

「え?」

「嫌か?」

「別にそうではありませんが・・・」

「あの子も成績は優秀だ。問題無いであろう。

 くれぐれも仲良く頼む」



 年甲斐もなく僅かに表情に出してしまったエリオス君。

僕も修行が足りんな、と思う悲しさ。

正直、あの娘つまりニーナさんは苦手であった。

何故か説教が非常に多い。目をつけられている。

非常にお節介な性格なのだ。嫌われてはいないはずだが。

好意の裏返しと自分で勝手に都合の良い方に思い込んで目をつぶろう。

ああ地が出て辛いね。



「・・・一つお聞きしますが、まだ戦争の噂とか無いですよね?」

「あいからわらず質問のポイントが違うな。

 確かに無いよ。今の所は」



 戦争に巻き込まれると製造業どころでは無くなってしまうかもしれない。

それまでに、何かしっかりとした形を残しておきたいものである。

今の所は、と気になる発言をする先生だが。

まだ裏がありそうである。

徴兵しないよね。マジでと思うエリオス君。



「学費と生活費は・・・?」

「その辺りは要相談だな。具体的な話はまだおりてきていないが

 領主様から一部出るだろう」



 領主様か。一体どんな方だろうか。

この時代は法律より権力の方が上かもしれないので怖いエリオス君。

まあ実家でお父様とお母様に相談してみよう。

それからでも遅くはない、と思った。

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