第49話 皆で勉強会。お茶会?
エルフのシルヴィ君とティアナさんと友達になったので
みんなで集まって勉強会にする。
伯爵様に頂いた、お菓子を食べながら。
当時のヨーロッパと同じで砂糖とチョコは非常に高価。
亜熱帯でしか取れなかったので遠距離輸入になっていました。
小麦粉と卵などを混ぜて蒸して焼いたパンの様な物、
フランスでエショデというお菓子が流行っていたそうな。
今日はそれに蜂蜜を少し付けて食べている。
「美味しいわね。
蜂蜜がかなり贅沢だけど甘くて」
「この甘さが本当にたまりません」
ニーナさんとティアナさんは甘いものがお気に入りみたい。
食糧難の時代でもあるので、日頃十分なカロリーが取れていない。
中世ヨーロッパで取れた甘みは蜂蜜だけ。
蜂蜜が現代の巣箱で量産出来る様になったのは19世紀、
ロレンゾ・ラングストロス牧師が開発してから。
砂糖の輸入は17世紀から始まっているが、
イギリスで庶民の口に入る様になったのは18世紀中頃だそうだ。
産業革命による所得増加と農業革命による生産性向上で
市民生活が大きく変わった影響があるだろう。
「早い所、産業革命を行って所得を倍増させないと
豊かな食生活は望めないのかもしれない・・・」
とエリオス君は呟く。
誰だって美味しい材料で食べたいのである。
食生活ばかりは前世が恋しいものだ。
残念ながら日本の様な多様な食文化は望めない。
大航海時代は沢山の貿易が加速したが、
免疫のない病原菌も同時に新大陸から襲いかかり
大量に死んでいる。衛生環境もまだ十分ではなかった。
そこは未来知識でなんとかしたい。
「勉強ははかどっていますか?
特に2名」
「もぐもぐ」
ダメじゃん。食い意地はりすぎ。
エリオス君はため息をつきつつも、甘いお菓子の誘惑は
森のエルフには勝てなかった様子を見て諦める。
これでサトウキビが輸入できればな、とは思うが
南方か熱帯地域しか取れないので仕方がない。
ヨーロッパ各国が植民地戦争を繰り広げたのも
砂糖の誘惑に勝てなかったという説もある。
「エルフの村では自然の果実は食べられますが、
加工品のお菓子は王都には叶わないです。
色々な材料が輸入出来るルートがあるんですね」
エルフのティアナさんが呟く。
確かに流通は商業ギルドが強い。
でも、砂糖やコーヒー、紅茶の輸入が激増すると
重商主義の観念では金銀流出して何も輸入出来なくなってしまう。
等価交換出来る貿易にしていかないと。
世界各国に売れるものを作れと言うこと。
相手が欲しい物を提供できてこそ、貿易が成立する。
こと食い物に関して言えば、ロイスター帝国は非常に不利。
第2次囲い込みを教授に提案しようかな・・・
現代的な養蜂場を作ったら今なら大儲け出来るな。なんて。
現実には循環する窒素とリンが大量に不足しており
現代の様な化学肥料が大量に作れる様になったのは、
1909年に開発されたハーバー・ボッシュ法による
アンモニアの合成と窒素の固定化、リン鉱石による
リンの大量合成が出来る様になってからであり、
実に20世紀の話であった。
「農業で儲けるのも悪くないと思うが、詳しくないんだよね・・・」
「エリオス様でも苦手なものがあるのですか?」
「知識で知っているのと、現地現物ではかなり差があったりするので」
「そういうものなのですか」
しみじみと男どもは語りあう。
シルヴィ君が地味に良い質問をしてきて、
エリオス君は少し困った表情をする。
農業は一年に一回で自然は毎日変動するから
データ取りも難しいのである。
「次の試験は頑張って見事良い成績をとってほしい。
特にそこのGクラス2名」
「えー。エリオス様。お助けを」
シルヴィ君が涙目になる。頑張れ。
この2人は実際筋が良い。知識が足りていないだけ。
しっかり勉強させれば化けるのは間違いなさそう。
やはり秩序神様に選ばれた2名なのかもしれない。
そう思った。でも僕のお菓子を食うなよ。
高いんだから。
当面おやつ抜きな。と。
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