自称占い師の俺、マッチングアプリで『あなたの運命の人は俺です』といろんな人に言い続けていたらとんでもない修羅場になりそう
西木宗弥
第1話 入学1週間前
***
「実は俺もこの春から一人暮らしで……もう不安しかありません……」
『ぴょんきちさんもでしたか! 料理に掃除に洗濯……入学式まであと一週間しかありませんが、何とか慣れないとですね!』
「SENAさんみたいな、きっちりしている人なら心配ありませんよ笑 俺なんて未だに荷解きすら終わってないですし……」
『私もしばらくダンボールはもう見たくないです……。ぴょんきちさんの荷物、占いに使う道具とか多そうですね……! もしよければお手伝いしに行きましょうか……?』
「えっ、いいんですか……? 僕たちまだ顔を合わせたことすらないのに……」
『全然いいですよ! だってぴょんきちさんは、私の運命の人ですから!』
***
『ワハハ! フォーチュナーぴょんきち! アタシだ! 今暇か!』
「これはこれはムラサメさん。こんにちは」
『ムラサメじゃない! ヘルクイーンだって何度言ったらわかるのだ! 次間違えたらアタシの第三階梯暗黒魔術で、キサマの家を灰燼に帰すぞ!』
「物騒なこと言わないでくれ。こっちはまだ引っ越してきたばかりだというのに……」
『ほう……新たな根城を手にしたのか……。どれ、アタシが特別に加護の結界を構築しに参ってやろう』
「ヘルクイーンよ、わざわざお前ほどの力を借りなくとも、知っての通り、俺には占星術がある。それに大量の魔法陣が積まれている故、誤発動して怪我でもしたら大変だ。また夜会の準備が整い次第招待する」
『うむ、楽しみにしておるぞ! 前世で契りを結んだ者同士、こうして300年ぶりに再び巡り合ったのだ。いくらでも待つぞ! 何せアタシたちの運命の赤い糸は時空を超えてもなお切れなかったのだからな!』
***
「体調の方はどう? 少しはよくなった?」
『あっ……ぴょんきちくん。心配かけてごめんね。ぴょんきちくんの言う通りバナナとヨーグルトを食べて、スポーツドリンク飲んだらだいぶマシになったよ、ありがとうね』
「役に立ててよかったよ。他に何か困っていることとかない?」
『今のところは……ちゃんと熱さまシートも貼ったし、明日には治っているといいな……』
「きっと良くなってるよ」
『それも占いで視えたの? だったら安心だね。だめだめなわたしのためなんかに、こうして寿命を削って未来視を使ってくれるなんて……ぴょんきちくんの方こそ身体は大丈夫なの?』
「花ちゃんが心配するほどでもないよ。前にも言った通り、俺の家系は普通の人の倍ほど生きられるから、ちょっとやそっとの未来視なんて痛くも痒くもないもないから」
『そっか……わたしは占いのこととかよくわからないけど、それ以外なら何でもするから遠慮なく言ってね……!』
「考えとくね! 今はこっちに引っ越してきた直後だから、新たな儀式の準備で忙しくなりそうで……落ち着いたら会おうね!」
『うん! でも一人暮らしだったらお金もかかるでしょ? わたしの所は家からの仕送りは月に100万ぐらいしかないけど……パパに頼んでもっと増やしてもらうよ。その分ぴょんきちくんにあげる』
「い、いいってそんなの! 占いだってお金のためにやってるわけじゃないんだから!」
『でも……』
「当り前でしょ。花ちゃんは俺の運命の人なんだから、その人のために捧げるのは当然のことなんだって」
『……だったら、わたしがぴょんきちくんに全てを捧げたって問題ないよね?』
***
「……なあ
『どうした
「そんなんじゃないって。ところでさ、水晶玉って持ってたりする?」
『水晶玉?』
「ほら、占いとかでよく使う」
『ああ、あのボーリングの玉みたいなやつか? そんなもん持ってるわけないだろ』
「だよな……じゃあ魔法陣は? あとはタロットとか魔術師が着るローブ、それから——」
『いや、ちょっと待て。お前確か文学部だろ? 何に使うんだよそんなもの』
「……深くは聞かないでくれ」
『……お前もしかして、さっそく訳のわからん宗教に入っちまったのか!? だからあれだけ注意しろって言ったのに……。仕方ない、明日お前ん家行くから、話はそのときに——』
「大丈夫! 今度ちゃんと説明するから、家に来るのだけはやめてくれ」
——通話終了。
スマホを放り出して、布団の上に大の字に寝転がる。
少し顔をズラせば視界に飛び込んでくるダンボールの山。
中身は主に衣類、食器、レトルト食品、カップ麺……。
もちろん占いに使う道具も、占星術に使用する魔法陣なんてないし、視力0.1で眼鏡かコンタクトがないとろくに文字も読めない俺が、未来なんて視えるわけがない。
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