第19話 合同パーティー
強撃を使えるようになって10日が過ぎた。
あれからも強撃を使う時間の調整を考えたら、敵が居ない時は休ませていると、普通に4時間はこなせるようになった。
技スキルは慣れで消費が減ったりはしないようだけど、意外に敵が居ない時間が有るのが分かる。
レベルは30になったばかりだが、カズマが先に30になった時、俺は28だったのに未だに上がってないらしく、追いついてしまった。30から先は長そうだ。
「やっと14階だな。」なんでか?タケが先頭を立って歩く。
「ここからは俺達が前に出るからな。」カズマを見るがジェスチャーで分からないと答える。
一応は前衛として戦っているが、タケが敵を受け止めてから俺が横がら突っ込む。タクがタケの後ろから槍で突いたり魔法で攻撃したりしてる。カズマは弓を打ちまくりだ。
即席のチームだが上手く機能してる。だけど、タケが一度魔物を自分の所で受けてからの攻撃に意味が分からない?普通に俺が突っ込んで近寄らせない方が楽なのに?
戦闘要員が増えたから確かに余裕になった。時間的に今までよりもだいぶ早い。
いつもは後ろに居るから気が付かないだけなのか?タケが妙にソワソワしてる様に見える。普通に前を歩いていけば良いのに後ろを見たり、曲がる方と反対を何度も覗いたりしている。
1階の時もこんなだったか?
「カズミそっち抑えて。ハルナは一人で突っ込まないで抑えて。ワカナはサポート。」通路の先から女の大声が聞こえてくる。
あれ?普通は声の方には行かないものらしいのに、タケはそっちに向かって脇目も振らずに進んでいく。
タクもタケと同じ感じだがカズマがなんだか動揺してるように見える。俺だけ置いてきぼりですか?
おそらく状況が全く分かってないのは俺だけなんだろうが、三人に続いて追いかける。前衛なのに最後尾だ。前衛なのに・・・・
角を曲がると女の子達が(パッと見で分からないが)戦っている。それも結構な数のソード君とマジックが居る。アーチャーが影から撃ってるのが見える。まさに混戦て感じだ。
タケがずんすん歩いていく。支持を出してた剣を持った魔法使い?になにやら言って前に出て行く。タケがカズマに向かって親指を上げる。
カズマが弓を引いて、盾で前線を維持している戦士の近くのソード君を撃っていく。
???なになになに??獲物の横取り?それとも援軍?
俺がカズマを追い抜く頃にはタケが戦士の横に立ち。サポートに回っていた女の子が後ろに逃げる。
アーチャーの矢が届く範囲に入ったし。気持ちを切り替える。
どいた女の横を抜けて、タケの横で競り合うソード君を切り捨てて、敵陣に突っ込む。
ソード君たちの動きが乱れた隙を突いて、ソード君達の後ろから魔法を撃ってるマジック達を蹴散らす。突然現れた敵にマジックはワタワタするだけだ。
ソード君たちは、二人の前衛に隙を見せたのか前線が崩れ始める。
たまに飛んでくる矢にだけ注意してサクサク切ってく。切ったマジックの後ろからバットが飛び出してくるが、もう一振りで切って落とす。こうもり君は精度の高いゴブアタックの使い手だが・・・・ネタばれしてたらね。
前線が崩れてからは、ほとんど掃討戦。
邪魔になりそうな位置に居る奴を片付けていけば、カズマがアーチャーを撃ってくれるし、タクの魔法も届き易くなる。軽く圧勝だ。
最後の一体をカズマが撃つ時には、タケタクと女の子達が話をしていた。
おいおい気を抜きすぎじゃねえ?
「モモちゃんすごいね。怖くないの?」あ!知ってる子だ。誰だっけ?
「顔は知ってるんだけど名前が・・・・」
「そっか一回しか会ってないもんね。ワカナだよ」
「列車で会ったよね」ショートカットの元気な方だ。
「そうそう。あっちにカズミも居るよ」と指差した方でカズマと話してる子を指差した。
「相変わらすムチャクチャやるなモモ。」何故かタケが寄ってくる。女の子とのトークタイムを邪魔しにきやがった。
「本当にタケが言ってた事やるんだね。モモちゃん」あれ?この人も知ってるぞ。でも、何所で会ったけ?
「ナツカリの店であったろ」ああタケに抱きついてた人だ。
「え?てことは」
「ハツネはもう異界には来ないよ」読まれた。
ワカナとタケの女がヒソヒソと話たあと、ワカナはそそくさとカズマの方に行ってしまった。しかも、蔑む様な視線を浴びせて。
「モモちゃん助かったよ。でも、大丈夫なのあんな無茶して。」
「無茶?」役割をこなしただけなんだが・・・?タケに助けを求めて視線を向ける。
「モモはいつもこんなだ。カズマがサポートしてるし、やばい時は勝手に逃げてくるから平気だろ」なんだか自分勝手な人って言われてる気がする。
「そうなんだ」
なんか皆でワイワイしてるとソード君がたまに現れる。ちょいちょい俺が片付ける。
サクサクやってると遠くの奴が燃えた。
「本当にモモちゃん強いんだね。一人で楽勝じゃん」ワカナだ。
「お嬢さんこの辺りは危険だ。・・・・・」先が続かない。
「アハハ何それ?しかも詰まってるし」笑われてしまった。
「モモちゃんこれから宜しくね」
「こちらこそ宜しく」どうやらお友達になれたようだ。
「もしかして聞いてない?」え?何?どうかした?
「しばらく応援て形でダンジョンの中だけ合同パーティーになるんだよ。」
「え?そうなの?」
「モモちゃん聞いた?」カズマが走ってきた。
「今聞いたよ。合同パーティーになるって奴。」なんでかカズマは複雑そうだ。
「ゴメンねカズマ。」何故かワカナが謝ってる。
「仕方ないよ。リーダーの決定だし。」
「お~~い。みんな集まれ」タケの間抜けな大声が響く。
「ゴメンね。私たちのパーティーじゃこの辺りで厳しいから、応援要請をしたの。そうしたらタケが来てくれるって言うから甘えさせてもらったの」どうやらタケの婚約者がリーダーらしい。
「そりゃそうよ。私達はハルナ意外はみんな後衛なんだもの。前衛が居なくちゃ成り立たないわよ。」なんか怒ってる。指示を出してたお姉さん。
「なんで怒ってるの?あのお姉さん」カズマに耳打ちをする。
「ミカ姉だよ。女の戦士って少ないから新人の教育係に欲しいのに、ナツカリの貴族の護衛に取られたらしくて人数が足りなくなったんだって。まあ、だから100レベル以下なのに男女の合同パーティーが例外的に認められたんだろうけどさ。」
「なんか、カズマは御不満だね」
「そりゃそうよね。だって経験値もお金も半分になるんだもん。本当にゴメンね」今度はカズミが謝る。
「そうなんだ。」
「モモちゃんにも悪いと思ってるよ」やめてウルウル見ないで。
「はぁ~~。何かバカらしくなっちゃうね。モモちゃん見てると」
「何でさ」
「だってモモちゃんは、むしろ喜んでるよね」
「いやいやいやいや。そんな事は無いよ。うん。でも、困った時はお互い様って言うじゃない。ね。」出てた?態度に出てた?
「モモちゃんチョロ過ぎだよ。」何故かワカナに笑われる。
「剣士のキミ」お初のミカ姉さんが声を掛けてきた。
「さっきやった様な戦い方してると死ぬよ。他の子にも迷惑掛かるから止めてよ」
「へ?なんで」俺は何故怒られてる。
(このクソガキが)って顔してるよ。ミカさん。
「まあまあ。モモちゃんはそういう戦闘スタイルらしいんだよ。」タケの婚約者が良い事言った。
「私は忠告してるの。この子を頼って進むと絶対に途中で怖くなって、役立たずになって困るのよ。だから今のうちから安定して戦える様にしてもらわないと。」
「安定して戦うって何?」何か腹が立つ。女相手なのに。
「タケみたいにしっかりとした前衛の仕事をする事よ。」
「馬鹿なの?向き不向きがあるよね。俺みたいに攻撃形の奴が、盾持って戦ったらダメージをムダに負ってやられるでしょ。」
「言って分からない奴は一辺死ね。」プイッと行ってしまった。
何度もゴブリンに切り殴り殺されて作ってきたスタイルを、一回死んだくらいで捨てるわけ無いだろう。と心で怒鳴っておく。
最高難度で1エリアクリアした時にさんざん色んな奴に言ったが、誰にも信じて貰えずにウソツキ呼ばわりされるだけだった。
親父にだけは「俺の息子なんだから当然だろ」と言われたくらいだ。
それ以来、俺はVRの事は他人に話すのを止めたんだ。
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