第15話 女の子の居る町
二人でダンジョンに入るようになってからカズマと居る時間が増えた。と言っても生活リズムが根本的に違うのでいつも一緒にはならないし、そうやらお互いに自分勝手な性格のようで、気分でつるんだり一人で居たりと良い距離感を保ってる。
かれこれ一週間が経つが未だにアイテムは出ずにポーションのみだ。
「ポーションで何個まで持てるの?」
「999個までは一つの括りで持てるらしいよ。もうそんなに有るの?」
「今867個になってるよ。6階に下りた時にタケからも貰ったから増えた。」
「これからは違うアイテムを落とすようになると思うし、ポーションも使うようになるから持って置いた方が良いだろうけどね。」
「ゴブリンの野郎は一度も棍棒を落とさなかったし、おかげでポーション三昧だよ」
なんでもゴブリンさんはポーション意外にも棍棒を落とすらしい。売れば一本あたり500円になるらしい。ポーションの30円とは16倍以上の価値だ。
棍棒が欲しいと言うよりも、たまには違うアイテムを取って見たいだけだ。
「タケ兄はいくつか取っただろうけどね。俺も二本は売ったし。でも、ポーションが余ってるなら俺に売ってよ」
「欲しいの?あげるよ」
「モモちゃん。基本的にそういうのはしっかりした方が良いよ。一本30円で買うよ。そうすればギルドで売るのと変わらないし俺も安くてありがたい。俺達はリーダーでも無いし、100レベル越えでも無いからギルド使えないし。お互いに利益あるだろ?」
「カズマがそれで良ければそれで良いよ。で、何本欲しい?」
「とりあえず200本良い?」
「良いけど?そんなに使うの?」
「俺も500は持ってるけど、一度ゴブリンの集団と一人でやった時に一回で30本くらい使ったんだよ。だから、出来るだけ持ってたいんだ。魔法を使うとスタミナに不安が有るしね」
「なるほどね」俺自身は普通に魔法は目くらまし程度で事足りてるから、練習で使うけど無理してまで使わないからな。
カズマから6000円貰ってポーションを200本渡す。
そのまま宝箱を探しながら歩いていく。歩いている時に急に腹に刺さる感じがした。すぐに的を逸らす。と?まだ矢が来てないのに僅かなタイムラグで頭に何かが刺さる。
腹の有った位置を矢が飛んでいく。矢が来る方を見て剣で払う。
キン!
上手くタイミングが合った。剣で矢を弾けた。
次の矢を警戒して見回すと、カズマの矢が後ろから飛んでいってアーチャゴブに当たった。普通に一撃で消えた。
また飛んできた矢を避けながら剣で弾く。スカッ・・・・・・
簡単にはいかないようだ。一度目は偶然出来たけど練習が必要だな。
一体なら楽勝だ。俺が着く前にカズマが矢を撃って倒した。
コマンドに弓を落とした。表示された。
「カズマ、弓を落としたって出たぞ。」
「え?本当に」嬉しそうだ。
アイテムから弓を取り出す。大きめの弓だ。
鑑定
弓(E)
Eクラスの弦を張った弓。攻撃力は使い手による。
そのまま読み上げて渡す。
「ありがとう。本当に良いの?」
「俺は弓使えないし、使える奴が持つのが普通だろ。」
アイテムが俺の方に入るようになったのは、カズマが言い始めた事だ。
自分だと良いものが出た時にネコババしかねないって言って譲らなかった。
俺がネコババするだろと言うと何故か噴き出して笑って「それも良いんじゃない」って意味不明な事を言ってた。
カズマは必要な方が金を払う様な事を言ってたけど、面倒だし相場も分からないしお互いに必要なものなら相談して決めるって事で落ち着いた。つまり、剣が出れば俺の。弓が出ればカズマのって感じだ。
よく出るポーションは山分けで、いらないものは売って山分けか相談して保管するか決めるだけ。
俺としては特にタケタクとやってる感じで、カズマが全部取っても良いんだが?まあ剣は欲しいけど。
カズマの気分が良くないらしい。みんな特に困って無くても欲しいものなんだなと無理やり理解する事にした。
「レベルも20超えてから上がらなくなったな」
「そうだね。俺も24でかれこれ4日目かな?もうすぐ25になると思うけど。10ごとに上がるペースが遅くなるみたいだしね」
「タケタクも俺達とダンジョン入るようになってから、まだ1しか上がってないって言ってたもんな。」
「下の階層の強い奴と戦ってれば少しは早いらしいけど、タイキくんはすでに村に帰りたいって泣いてたよ。
13階のソードゴブに腕を切り落とされたんだって。それからは怖くてダンジョン恐怖症らしい」
「それはそれはご愁傷様だな」YRでの初の腕落としから1月は俺もやらなかったし気持ちがよく分かる。
「モモちゃんは余裕だね?」
「なんで?」
「他の戦士系の子達はみんなビビッてたのに。モモちゃんも切り落とされるかもよ?」
「痛いのは怖いけど、VRで腕どころか首も落とされてるからな・・・?どのくらい痛いんだろう?」
「まじ?首まで」カズマの顔が青い。
「冗談だよ」カズマの反応に念の為、誤魔化しておく。
「だよね。ハハハハ」乾いた笑いだ。
「明日さ、店の方を覗きたいから付き合ってくれない?」
「何か買いたいものでも有るのか?」
「モモちゃん見習って現実でも弓の練習しようと思ってさ。売ってればだけど。」
弓の殺傷能力を考えれば売っているのだろうか?まあ一回も行った事無いし行ってみるのも良いかな?
「良いよ。なにする訳でもないし。」
そんな訳で現在商店街に来ています。男子しか居ない世の中なのだと思いもしましたが、商店街には女の人がおられます。う~~ん、むさ苦しい世界よりも女性の居る華やかな世界の方がかなり良い。
カズマに連れられて雑貨屋さん?に来ています。特に用も無いんだけど、木刀や弓、枕に布団、お茶やら菓子やら本当に何屋だ。
「ここって何がメインのお店なの?」カズマが弓を物色中に店のお姉さんに話しかける。お店のお姉さんと話すのは得意だ。無視されないから。
「ここは、本当は布団屋なんだよ。一緒に寝てみる。」ヤバイ鼻血が・・・・
「ぜひ・・・・」
「冗談だよ。本気にしないで。」困った顔で笑うお姉さんもキュートだ。
「あと、女性の胸をジロジロと見るのは失礼だよ」何故ばれた。
「すみません。こっちの奴っていくらですか」遠くで他の男がお姉さんを呼ぶ声がすると「またね」と行ってしまった。
クソハイエナ共が。俺の至福の時間を奪いやがって。
どうすれば気付かれずに胸の谷間を覗けるかを思案してるとカズマがやってきた。
「モモちゃんはやっぱり桃の助平だね。さっそくナンパ?」
「失礼な。何屋か分からないから尋ねていただけだよ。」
「買う気も無いのに?」うっ!
「好奇心からだよ。フフフフフ。で?探し物は見つかったかね?それとあのお姉さんもナツカリの人かね?」
「知らない人だね。」
「呆れ顔をするのは止めたまえ。私に失礼だろう」
「分かったよ。その喋り方は何ごっこ?」
「貴族感を出してみました。」
「ツルキが聞いたら殴り掛かって来そうな台詞だね。そういえばどうかな?ダンジョンで手に入れた弓に似てると思うんだけど」
カズマが手に持っていた弓を俺に見せてくる。ハッキリどうでも良いが、真剣に見てみる。俺は持って渡しただけだったから細かいところは覚えてないが、大きさはたぶん同じくらいだろう。
弓を構えて弦を引く。そして、矢を放つように放す。
「はう」震えながら弓をカズマに返す。痛い。俺が使うと何故か自傷武器に変わるのだ。乳首が取れたんじゃないか?
「大丈夫モモちゃん」思いっきり顔が笑ってる。
「君はアーチャーなの?」さっきのお姉さんが戻ってきてカズマに問いかけた。俺じゃなくて。
「お姉さん僕は剣士です」聞かれても無いのに、声を掛ける。
「店の商品で一人SMプレイは止めて貰えるかな?ドスケベ君」胸の谷間を手で隠しながら俺に変な名前を付ける。
「弓の練習に良いのって有りますか」
「異界で使ってる弓よりも小さいのを使った方が良いよ。実際は異界で使うのはステータス補正が入ってるから同型の弓だと同じようには引けないから。」
「そうなんだ。似てるのに引くとすごく硬いからどうしようかと思ったんだ」
「異界での感覚を頼りにして、弓を探すと良いよ。引いてみてシックリ来るのが当たりだね。」除け者感が俺の心を蝕む。俺は空気の様に漂う存在なのか。
「君は手を見せて」突然お姉さんに手を取られる。もしかして俺の事意識してる?
「へえ。本当に剣士なんだ。」何を見てそう思ったのか不明だが、お姉さんに手を握られて俺は元気になった。色々と
それから小一時間、何故か店の庭の端っこで剣を振らされてる、売り物で。もしかして強制買取?しかも、放置で・・・・カズマとお姉さんが話をしながら、たまに弓を持ってきて何度か弓を引いては戻っていく。
寂しさからこの屈辱的な仕打ちを忘れようと真剣に剣を振る。振り上げて振り下ろす僅かな時間だけは、放置されている事を忘れられる。
結局やってる事がいつもと変わらない。
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