第14話 カズマとタケタクコンビ

 「モモちゃん。食べたら行くよ。」食堂で遅めの昼飯を食べながら釘を刺された。


 「大丈夫だよ。毎日は行かないから。一週間に一日は休むようにするからさ」


 「それを人は毎日と呼ぶんだよカズマくん。せめて週に3日は休みの日を要望する」


 「しょうがないな。じゃあ、月に一度ハツネ姉の所に行くの付き合ってあげるから、そこで見聞きした事は他言しないからさ。週6」


 「・・・・・・・・・」ぐ・・・・このままだと背中を押されてしまう・・・・


 「OKだね。」


 とりあえず月一でハツネさんに会うことに決まりました。という事でその軍資金を稼ぎにダンジョンに来ています。


 「カズマ?記録石の場所は俺の中ですでに不明なんだけど、良いの?」


 「モモちゃん知らないの?同じ階層に居さえすれば、次に入った時にはパーティーリーダーの近くから始まるから大丈夫だよ。」


 「そうだったの?」今までの俺の苦労はいったい・・・・


 「モモちゃんはその調子じゃ宝箱を取ってないね。」


 「カズマはゲットしてるの?」


 「結構集まってるよ。ほとんどはポーションだけど、3個だけ違うのが入ってたよ。ポーションも一人だと使ってるし、ちょうど良いけどね。」


 「何が入ってたの?」どんなものか知りたい。


 「えっとね。必勝のハチマキと投げ斧、あとは癒しの玉だね。」


 「投げ斧と癒しの玉は分かる気がするけど、ハチマキは何?」


 「鑑定のスキルが無いと分からないよ。まだ買ってないし」


 「タクに見せれば分かるんじゃない?」


 「タク兄に言ったら、本当に良いアイテムだったら騙し取られそうなんだよね。」


 確かにそんあ雰囲気はあるし、「そんな事あるわけ無いだろ」って言えるほど俺はタケタクコンビを知らない。昔から知ってるカズマが言うんだから・・・・でも、パーティーを疑うのは止めておこう。


 「カズマがそう言うなら、鑑定のスキルを買ってから見ればいいしな。」


 「ねえ?モモちゃんは買わない?」


 「なんで俺なの?」


 「ぶっちゃけると、俺は後衛だからさ。一人での冒険て有り得ないんだよね。一人で行くか?行かないか?って以前に、一人じゃ有る程度以上の敵とは戦えないからさ」


 「そんなもんか?でも、それと俺が鑑定を持つ事とどう関係するの?」


 「いつかモモちゃんが一人で活動する時があった時に使えるじゃん。俺はパーティーに加えてもらえる位のメリットが無いと困るのが分かってるからさ。只でさえ他の子達よりもレベルが低いし、鑑定なんて育てるヒマが無いんだよ。」


 「????どういうこと???他のって何?」


 「同じ村の子達だよ。他のパーティーは、早い子達は10階よりも下にいるんだよ。俺達が一番遅いんだよ。でも、タケ兄やタク兄に言ってもゆっくり行こうって言われるだけだし。」


 「そうなんだ。じゃあ、鑑定は次に町に行った時にでも買っておくよ」


 「モモちゃん、今からでも町に行けるんだよ。」


 「え?なんで?ああ!そうかそうだね。あれ?でも、タクから記録石買ってなかった?」


 「買ったよ。始めは気が付かなくてさ。考えてみれば普通に行って帰ってくれば良いんだよね。探索なんてしないで降りて行けば1時間もしないで4階まで降りれるし、同じ階に居れば合流して出発するんだし。教えてくれたのが他のパーティーの同級生なんだけどね。・・・・・」


 なるほど、その子は指導してくれる先輩から教わったのね。だからなのか。


 「じゃあ、とりあえず町に行って鑑定、買ってくるか」


 「モモちゃんは即決だね」


 「なんで呆れるの意味分からないんだけど?」


 「俺が騙してるとか考えないんだ」


 「はあ?鑑定を持つだけだろ?騙されてたって大したこと無いじゃん」


 「俺がモモちゃんよりも先に行く為に足引っ張ってるかもしれないじゃん。」


 「先に行かれると問題あるの?」俺としては7歳の時にやった事で、ずっと置いてきぼりだからどうでも良いけど。


 「そうだね。はははは」


 「ははははは」何が可笑しいのか分からないが、とりあえず付き合いで笑っておく。


 必勝のハチマキ  力 防御 上昇(小)


 「らしいよ」


 カズマが装備して外してを繰り返す。


 「うん。1%くらいだと思うよ。俺は要らないから上げるよ」


 「微妙だな」確かに1%くらいだ。


 「でも、次に町に行った時に頭の装備を買ってから使ってね。」


 「なんで?」


 ああ。タケタクにあまり自分の手の内を知られたくないみたいだ。変に勘ぐられても面倒だし良いか。


 「ゴメン。分かったから良いや」言いにくそうに考えてるカズマに伝える。


 「全く。察しが良いのか?悪いのか?良く分からないね」呆れられる覚えが無いと思うが・・・・・


 早々に5階に戻ってサクサクと倒していく。いつも二人でやっているから全く日常と変わらない。おお、宝箱発見。


 「ポーションか。はいモモちゃん。」手渡してくる。


 「ん?くれるのか?」


 「俺達はとりあえずポーションは山分けして、アイテムは相談で決めようと思うんだよ。お互いに不必要な物なら売って山分けも良いしさ」


 「それで良いよ」


 カズマが必要な物だと思ったらカズマが貰えば良いし、その辺はカズマ判断で良いと思うけど?タケタクスタイルは嫌いみたいだし放っておく。


 結局その日はポーションをひたすら集める事で終わった。二人だとほとんどポーションも使わないから貯まる一方だ。すでに500個を超えている。いくつまでまとめて持てるのやら?


 次の日にタケタクと共に皆さんで5階を探索中。と言っても相変わらず先頭は俺。後ろにカズマ、その後ろにタケタクで歩く。


 「そこの道は左にいくぞ」とたまにタクからの指示が来る程度で特に会話も無い。楽勝とは言え、危険が無いわけでもないので普通だろうけど。


 タクは地図でも持ってるのだろう?必ず外れの道に行って一番最後に降りる階段にたどり着く。


 ゴブリンさんやスライム君も単体で出てくる事はほとんど無い。5体くらいで来るのが多い。見つけたら出来るだけ早く間合いを詰める。カズマは動かない。


 そして、真ん中じゃなくどちらかの壁側で戦うのは基本的な事だ。挟撃に合うから。合っても問題ないけど。


 ここのダンジョンは階段から真っ直ぐに道が有り、その道が枝分かれしている構造らしい。十字路が有ったり、右左片方に道が有ったりするが斜めには無く。必ず直角に曲がって道が有る。たぶんマーベラスは几帳面なのだろう?


 出来れば宝箱は行き止まりや通路の角とかに置いて欲しい。道の真ん中にあるとゴミが入ってるイメージしかしない。


 !!適当にゴブリンさんの相手をしているところに右脇腹に何かが刺さる。でも、左にはゴブリンさんが居て逃げれない。右に避けても避けきれないだろうから、刺さる軌道上に手甲が斜めに当たるように遮る。


 カン!手甲に当たって良い音がした。でも、滑った矢尻が右腕に切り傷を残していく。


 「カズマ。アーチャゴブから片付けろ」タクが吼える。


 あの弓野郎はアーチャゴブって言うんだ。


 それから毎度の様にアーチャゴブが現れるようになった。そのせいでダメージを食らう事・・・・・もっとも致命傷になる様な傷は負わないらしい。直撃しても。


 それでも痛いものは痛い。基本は当たらないが10回に1回くらいは掠める。切り傷である。すぐに治るとは言え傷である。何らかの対策の必要性を感じる。

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