第9話 ダンジョン内労働になるのだろうか?

 ダンジョンの中でイキナリ始まるのもイマイチだな。やっぱり昨日の高台で目が覚める方が好みだ。


 今回はタケミチが遅れている。俺はカズマの次に来てその次がタクだった。


 「悪い悪い便所で頑張ってたら遅れちまった。」


 「只でさえ予定よりも遅れているのに、さらに遅れちまったじゃねえか」


 「タクには言われたくないな。」


 「じゃあ探索を始めるぞ」そういうと遅れてきた奴が先頭に立って移動を始めた。


 記録石は敵の居ないところならどこでも良いらしい。使う際に敵が居なければ居ない状態で始まれるらしい。ただし敵が居る状態で使うとモンスターハウス状態になる事も有るって脅された、


 記録石で休んでいる内はスタミナもHPもMPも回復するから、記録石で何度も逃げれば良いと思わないでも無いけど戻ってきたらゴブリンに袋叩きってやだな。


 当たり前だけど無理に試す事も無いとは思う。


 今日も始めは見てるだけ。なんでか知らないけど、カズマが今日はゴブリンに矢を撃ってる。矢は刺さると消える。


 「カズマずるいぞ。俺だって我慢してるのに」


 「昨日さ、俺は弓矢だから撃っても別に問題ないってなったんだよ。さすがにモモちゃんは敵の間合いに入らないといけないからね。」


 「矢が消えるけど使い捨てなの?」不公平だと言いたいが、もうすぐレベルも上がる事だろう?世間話をして先輩方が、ゴブリンを俺の為に倒す間の時間を潰す。


 ついでにカズマが攻撃できる時間も潰す。


 「矢は消えて俺のアイテムボックスに戻って来るんだよ。壊れないかぎりね」


 「ってことは壊れるの?アイテムボックスって何?」


 「質問多いよ。鑑定のスキルを買えば耐久度が見れるらしいよ。ちなみに矢は簡単に壊れる消耗品だよ。一本で20回は使えないって言ってた。ほらこんな感じの物だよ」


 只の真っ直ぐの棒だ、羽も何も付いてない。ツルツルとした感触の変な物質だ。確かにそんなに丈夫そうには見えない。


 「鉄の奴とか有るんじゃないの?これよりは硬いでしょ」


 「有ったけど高いんだよ。鉄のはうまく使えば壊れないらしいけど、一本500円だよ。それに鉄でも叩きとされたりするとすぐにダメになるって聞くと買う気になれないよ。こっちは一本5円だよ。」


 「おい、いつまで喋ってる。もう終わったぞ。」


 「レベルちゃんと確認して置けよ。ゴブリンの相手は飽きたから早く代わりたいんだ」


 「おっ。来ましたよ。俺の時代が来ましたよ。レベルがようやく上がりましたよ。」


 「まあそろそろだと思ったよ」


 「じゃあ、ここからはモモが先頭に立って戦ってもらうぞ。カズマもサポートしてやれよ。あんまりボコボコにされると死んじまうからな」


 意気揚々と先頭に立つ。


 するとすぐにゴブリンが3体現れる。即行で間合いを詰めて切り捨てる。


 次々と一撃でおわってく。やっぱり弱いぞ、ここのゴブリン。ゴブアタックを警戒して攻撃するのがバカみたいに弱い。


 「おお~~モモやるな」


 「すげえな一瞬で三体やりやがった。本当にレベル5かコイツ」


 「モモちゃん早すぎるよ、俺が何も出来ないじゃん」

 「大丈夫だカズマ。低レベルの奴が戦ってるとドンドン集まってくるから。ほらほら、もうあっちから来たぞ。」


 近づいて来るまで待って、近づくと、一気に間合いを詰めて切り捨てる。


 おかしいな?次から次にドンドン沸いてくるように現れるぞ。先輩達がやってるときは、なかなか出なくて探していたのにワラワラと現れる。


 切って切って切って切り捨てる。ハッキリ言って楽勝だ。弱いくせに連携を取れない。


 ただ単純に近くに居る奴に攻撃をしてくるみたいで、偶然ゴブアッタクになる事が有っても、狙っている訳では無いからタイミングがかなりイマイチだ。 


 「本当にすげえな。もう100は狩ってるのにスタミナがまだ有るのか。こりゃ儲かるな」


 「魔物寄せのアイテムでダンジョンの怖さを教えようと思ったけど、これなら簡単にレベルが上がって良いな。普通にカズマも後ろから離れた奴にガンガン撃ってるし、このままスタミナ切れになるまで魔物寄せ使ったまま待ってるか」


 なんか後ろから聞こえて来るけど気にしない。溜っていたストレスをゴブリンさんで発散させていただく。

 

 出てくるゴブリンをサクサク切って捨てる。ほとんど只の持久力だけで、全力で動き続ける必要性は無いから。サッと飛び込んでサッと切る一撃です。


 一息入れてから次の奴も同様にする。だんだん親父のやっていた振り方を真似るように意識する余裕まである。ゴブリン達は剣を振るタイミングゲームのイメージだ。


 ひたすら切り続ける。サッと行ってサッと切る。


 なんでか?一息が二息になってきてる。余裕になった分で辺りを見るとカズマが離れた奴を撃ってる。矢が当たると一撃で黒い霧になってる。


 だから近くまで来れる奴が減ったのか。疲れる前に余裕になってしまった。時間が経つに連れてカズマの倒す数が増えていく俺の方まで来るのが少ない。慣れからなのか?レベルが上がっているのか?


 だんだんと数も減ってきた。もうすでに俺の出番は無いようで、カズマが倒していく。


 「こいつで終わりだね」と言ってカズマが最後の1体を撃つ。


 「お前ら強いな。カズマは元々優秀だって知ってたけど、モモもそんなにやれるとは思わなかった。このまま一階を散策してアイテム一通り拾ってから下に行くぞ。」


 一階の宝箱を探しながらゴブリン達を蹴散らして行く。結局、見つけた宝箱は全部で10個全てポーションでした。



 次の日も次の日も次の日もって、すでに一週間1階層を探索している。出てくる敵はゴブリン、拾うアイテムはポーション。すでに労働気分全開だ。


 レベルは10を過ぎてからは上がりが悪くなった。一週間経っても13になった程度だ。


 「いったいどんだけ広いのこのダンジョン。すでに一週間経ってるのに、まだ下に行けないの?」


 「そりゃそうだろ一階の全部探索してるんだから二階に行ける訳無いだろ。まあ、順調だから明日には二階に行くけどな。」


 「タケ兄、宝箱を諦めて下に行くって選択肢は無いの?どうせポーションだけでしょ?」おおカズマ言ってやれ。


 「たまにポーション以外の珍しいアイテムが手に入る事もあるし、下に降りて行くのにポーションがどれだけ有っても困る事はないからな。それにSPは下に行って強いモンスターと戦っても経験値ほどは増えないからな」


 「そのわりに他の人に会わないのは何で?」強いのと戦いたくない疑惑がタケタク・コンビに沸いてくる。


 「広い割りに人数が少ないからだよ」

 「みんな1月1日に異界に入るんでしょ?みんな一緒になりそうなのに数が少ないの?」カズマが当然の疑問を投げかける。


 「外でモンスターと戦う奴も居ればイキナリ下の階層に連れて行く奴も居るし、オオマメの連中に至っちゃ新人でパーティー作ってダンジョンに入るから、マップも無いし今でも入り口付近で頑張ってるんだろ?」


 「ナツカリの他の子には会ってないよ。」ワカナとカズミしか知らないけど


 「そりゃ会わないように、みんな時間ずらしたり行く方向変えたりしてるからな」


 「敵が強いならともかく、一階でワザワザ近くで戦うメリットが無いからな。宝箱でレアアイテム出るともめるし」何でって顔していたからか説明してくれた。


 「モモも金も貯まっただろうからスキルや魔法の種でも二階に行ったら戻って買いに行けば良いさ。そうすれば少しはSPの大切さが分かるだろう。」


 話しながらも戦っていたが、スキルを買う為に集中して戦おう。

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