第12話 初めての・・・
「モモはいったい何考えてるんだ。」タケが怒っている。昨日の事を話したら怒られた。
「でも、ダンジョンで戦っているし、外で気分転換かな?って思ってね」
「思ってね。じゃない。分かったと思うが外のモンスターの強さは一定じゃない。同じゴブリンでも強いんだ。
さらに外はたまにだけど、ダンジョンだったら下層にしか居ないようなモンスターも出たりするんだ。今回無事なのは運が良かっただけだぞ。」
「まあまあ、モモも外に出るなら来年まで待て。一人前になれば自由に外に出ても良いけど、一年はダンジョンに専念してくれ。」タクもか。
「分かったよ。危険だからしっかり対策して来年にするよ。」別に言われてなかったから出たんだけど、そんな事を言っても火に油だろうから素直にしておく。
「そうしろ」
「あと、今日から外の店が開くから、今日は夕飯は外に食べに行くぞ。」
「どういうこと?」
「一度くらい、外の店を教えないと、ずっとここじゃ寂しいだろ。」
「はあ?」なんの事だか分からないが答えておく。
今日は2階だったがハッキリと変化は無い。弱いゴブリンにたまにスライムが混じる。
黄緑色のでかいボールの様な敵は遅い動きで移動してくるが、一撃で霧になるし攻撃してくるの?もしかして無害な奴じゃないの?
「モモ、もしかしてスライムは攻撃して来ないと思ってないか?」
「え?なんでばれた」
「ゴブリンの時はサッと切って来るのに、スライムの時は待ってるの見れば分かるだろ」
「ハハハハハ」笑って誤魔化す。
「こいつらは動きが遅いから、攻撃する前に倒してるだけで、数居ればこいつらでも体の一部を飛ばして攻撃してくる。スライムの上位種は魔法も使うし毒も有るし、動きも早くなるし舐めない方が良い」
「了解」
2階に下りても労働環境は変わらず出てくる敵をサクサクと倒すだけ、楽しさはかけらも無いし刺激も無い。それでも、素振りの様に一太刀一太刀真剣に切っていく。
これだけやっても全く感じすら掴めないってどういう事?
「そうだ。モモとカズマ、お前達、魔法を一度も使って無いよな」
「うん」
「・・・・・・」カズマが気まずそうだ。
「カズマは使ってるのか?」いつの間に?
「午後にダンジョン入ってゴブリン相手に使ってるよ」
「ハハハ。別に悪い事じゃないんだからそんな顔するな。ただ教えるのを忘れていたなと思ってさ」お外はダメだけど、ダンジョンはOKなんだ。
「モモに教える前に、カズマ使ってみろ」
「分かった。」そういうと火種を取り出して、小さな火の玉を手の平に浮かべた。
一番近くに居たゴブリンに向かって普通にボールでも投げるかの様に投げた。
ゴブリンが持つ棍棒、そして、飛んでくる火の玉。もしかしして・・・・・・!
特に何も無く燃えた。けど、ゴブリンはそのまま突進してくる。
あれ?ダメージは?
「なれないうちはそんなもんかな?良くみてろよ」と言ってタケが火の玉を投げる。
火の玉を作るまでの時間がカズマよりも圧倒的に早い。投げた球の速度はそれほど変わらない。
やっぱりゴブリンは棍棒で打ち返す事無く燃えた。でも、今回はこっちまで熱い風が吹いてくる。
タケって斧振ってるのに魔法使いだったの?魔法使いなのに斧を振っていたの?どっちだ?・・・・どっちでも同じか。
「カズマの火はしっかりとイメージできていないから弱いんだ。火種を使ってれば簡単に火は付くけど、しっかりと熱い火の玉をイメージしないと敵を倒せる一撃にはならないぞ。」
へ~~~。やっぱりタケは魔法使いだったんだ。
「先輩は魔法使いだったんですか。前衛で斧使っていたから戦士だと思っていましたよ。どおりで動きが悪いと思った。それならそうと早く言ってくださいよ。」あれ?空気が寒いぞ。
「モモ、言っておくぞ。俺は戦士だ。簡単な魔法くらいは戦士でも使うんだよ。そんでもって動きが悪くて悪かったな。」
「いってぇー」頑固親父の様に拳骨してきた。避けるともっと怒りそうなのでサービスで食らってやったが結構痛い。
「タク。何が可笑しい」タケはご立腹だ。怒らせたのは俺だけど。でもニヤニヤしているタクが悪い。
「モモの余計な一言がおかしくてな。でもな、モモ。タケはお前と違うタイプの前衛だから鈍く見えて当然なんだよ。」
「はい」しおらしくしておく。これ以上は殴られたく無いし。
「モモは前衛って感じよりも遊撃って感じなんだ。確かに役割的には前衛の部分だけど、タケは相手の前進を止めて、俺達後衛が攻撃できるようにする役割だから動きが違って当然。」
「何も知らずに失礼な事を言ってすいませんでした」
「まあ別に良いさ。確かにお前のように動けないしな」
「どちらにしても魔法を覚えておいた方が良い。剣だけだと遠距離攻撃に対して不利だからな。」
「で、どうやってやれば良いの?」
「まず火種は持ってるな?」アイテムボックスから火種を取り出す。(火種)
「こうやって手の平に玉を作る様にイメージする。真ん中に火種が来るようにな。」
「おお、浮いた。」手の平の上の火種が浮かぶ。でも、おおって思った瞬間に落ちて手の平に戻った。
「そうそう。カズマはそのまま熱い火の玉を強くイメージすれば良い。」
「そろそろ撃っても良い?これ以上は熱くならないよ」
「よし撃ってみろ」言葉と同時にカズマが投げる。投げるのに撃つなんだ?と一人思いながら見守っている。
タクが一人で相手にしていたゴブリンの奥に居る奴が当たって燃えた。
今回は燃え上がったゴブリンがすぐに霧に変わった。生き物が燃え上がるのは、あまり気持ちの良いものじゃないな。
「おし。俺もやるぞ」手の平に浮かべる。丸い玉をイメージしながら熱い熱い火をイメージする。火種が燃えて火の玉になる。熱く熱く熱く熱く。
「くらえ」タクに当たらないように遠くの奴に向かって投げたら、見当違いの方向に・・・・・
誰も居ないところで熱風が吹き荒れる。
「やべえ。体が超だるい。何でだ?」風邪でもひいたかの様に体が重たくなった。
「お前それは、魔力を込めすぎてスタミナが一気に持ってかれたからだよ。」
「たしかにスタミナが30%になってる。MPは80%なのに・・・」
「モモちゃん火種にそんなMP込めたの?」
「良く分からないけど全力で熱くしてみた」
「全くモモは加減てものを知らなくていけないな。普通は始めは軽く撃つもんなんだよ。
慣れてくればMPをそんなに使わなくても、同じくらいの威力になるから」何故かタケに呆れられてる。
「タケそろそろ代わってくれ。俺は体育会系じゃないんだ」一人でゴブリン達の相手をしていた。タクからクレームが入った。
タケが代わりにゴブリンの相手を始めた。入れ替わりにタクがこっちやってきた。
「モモ、とりあえずポーションを使え」
?ポーション?とりあえず、初めてのポーションを使う。ちょっとドキドキ。
(ポーション)体が一気に軽くなる。風邪が治った?
「モモは剣で戦うのが主だから、もっと弱くても良いから早く撃てる様に練習した方が良い。逆にカズマは多少時間が掛かっても良いから威力のしっかりと乗った魔法を使った方が良い。」
「おりゃ。」手早く作った火の玉をゴブリンに投げつける。ゴブリンに当たりはしたが(外さないくらいの距離ですから)軽くボワッってなるだけで全然効果ない。
「威力はそんなんで良いぞ。もっと早く撃て」こんなんで良いの?
サクッと今のゴブリンを切って捨てる。
カズマはタクの指導の下で強そうな火の玉を作り。遠くのゴブリンに当てる。燃え上がって霧に変わるゴブリン。
「ほんとだ。すごい体がだるくなる。」
「そうなったらポーション使えよ。」
後ろでそう言ってるのが聞こえた。
俺の火は目くらましの魔法。カズマの火は殺戮の魔法。
この差はなんなの?でも、タケもそれなりの魔法は使ってるし、そのうちに俺もあの位出来る様になるって事で練習練習。
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