第17話 ハツネ②

 「帽子買ったのか。アーチャーも居るし、そろそろ必要だったからな。だけど、モモに帽子はイマイチ似合わないな。で剣は何買ったんだ?」ゴツイ斧持ちに言われた。


 「まあコイツが壊れたら出しますよ。」小太刀も何か言われそうなので保留だ。


 「それなら楽しみにしてるぜ」


 サクサクと切る。昨日もあれからカズマと金稼ぎに精を出したが、折れたりしなかった。もしかして、このまま壊れないんじゃないかな?と思い始めた頃だった。


 ゴブリンさんを切った拍子に、隣に居たもう一体のゴブリンの持っていた棍棒に当たった瞬間。


 キーーーーン!と高い音を立てて真ん中から真っ二つに折れた。


 (小太刀)始まりの剣よりも僅かに短い刀を取り出す。サクサクとゴブリンを片付ける。始まりの剣よりも軽くて取り回しが良い。少しだけ大きく踏み込まなくてはならないのは慣れで何とかするしかない。


 「小太刀にしたのか?また難しい物を使うな。順当に言って長剣か大剣て所だけどな。まあモモは動きが早いから合ってるかもな?」


 サクサクと倒していく。アーチャーの矢も叩き落し易くなったけど、刀の耐久が減るらしいのでなるべく避けるようにしてる、マジックゴブも出てくる頻度が高くなってるから遠距離からの攻撃にもだいぶ慣れた。


 たまにアーチャーの不意打ちが怖いけど、攻撃察知で何とかなってる。


 「タク先輩。武器の耐久って一気に減ることもあるの?」


 「強い敵と戦うとあるぞ。攻撃力が高い相手の攻撃を武器で受けると大きく減るな。だけど、どうした?」


 「いや、今回は分かっていたから余裕だったけど、突然だったら対処できるかなと思って。」


 「下の方に行くとだいたい、予備の武器をアイテムボックスに入れてるのが普通かな。」


 「俺の斧は剣よりもだいぶ耐久が多いから簡単には壊れないぞ。攻撃力も高いし、剣よりも斧とかハンマー使ってる奴のが全然多いくらいだ。」


 「剣を使う奴は武器にMPをまとわせるって聞くけど、そんな事を出来る奴が回りに居ないからどうやってるのか分からな」


 「モモも斧かハンマーにすれば問題解決だ。なあモモ」


 「ムリ。」


 「30階より下に行かないと関係ないから。行ける位になったら考えればいいさ」タクがまとめる。


 「絶対に斧のが良いぞ」タケはうるさいので無視する。


 気が付くと数日が経ちハツネさんに会う日が来てしまった。延期したいのか行きたいのか自分の気持ちが行方不明だ。


 「モモちゃん行くよ。月に一度だからね。いくら楽しくなってもそれは譲らないよ。」


 「・・・・・・」


 「モモちゃん久しぶりだね。もう来てくれないかと心配しちゃったよ。ダンジョンはどう?順調?」クリッとした目で見られると緊張してくる。


 「剣が新しくなったくらいで特に変化は無いかな?」肩が触れ合うほど近い。


 「モモちゃん剣士なんだ。」


 「剣しか使えないからさ。」飲み物を渡される時に手を握られる。


 「ハツネさんは何使ってたの?」


 「私は魔法。だけど、才能なくてね。何度かやってる内に殺されるのが怖くて怖くて。」やばい異界ネタは失敗だ。青い顔してる。


 「ハツネさんは普段何してるの?」とりあえず話を変える。


 「ふふ。気を使ってくれるの?」もたれかかってくる。この女はヤバイ。絶対に騙されてると頭のどこかが警告する。でも、心と下半身がイケイケとゴーサインを出してる。


 「前に来たときに言ってくれたじゃない。四天王倒して私にプロポーズしてくれるって。だからモモちゃんの事を考えながら待ってるんだよ」




 気が付くと布団で寝ていた。色々と話して盛り上がっていたのは覚えているが内容をほとんど覚えていない。酒か?酒のせいなのか?でも親父の様に頭は痛くないし体調も悪くない。


 前回同様に一階に降りて行く。やっぱり動揺してるらしい。いつも起きる時間に起きただけらしい、まだ暗いのに今更気が付いた。


 日課をこなす。何故だかやる気がみなぎる。振る剣の一太刀一太刀に力が篭る。


 風呂に入って汗を流して食堂で朝飯だ。


 すでにカズマは来ていた。


 「モモちゃん。念を押しておくけど月一だからね」


 「当たり前だろ。」ハツネさんを迎えに行くには強くならなくてはならない。


 「なんか怖いくらい、やる気満々だね。いつもはフワフワした感じなのに。」


 いつも通りにタケが来て、タクが少し遅れ気味に来てようやくダンジョンへ。


 「おお早いなモモ」


 「そお?」


 「カズマのすぐ後に来るなんて、10階までどれだけ早く登ったんだ。」


 「モモちゃん燃えてるからね」


 気合が入っていても入っていなくてもやる事は同じ。ゴブリンさんをサクサク。アーチャーを投げ斧でブシュッ。マジックもついでにサックリ。


 「すげえ。超早い。」後ろで何か言ってるけど気にしない。


 それでもタケタクスタイルは変わらず7階から9階まで下りるのに9日も掛かった。


 レベルの上がりは遅くて、まだレベル24だ。スキルはとりあえず耐久まで見れるようになるまで鑑定に全部入れてる。すでにレベルが8。もうすぐ9になる。


 鑑定のレベルが上がるとアイテムの事が少しだけ詳しく表示されるようになった。


 例えば。

 ポーション


 回復用のアイテム。


 素材としても使用可能


 水素材との併用可能


 ハッキリと何の素材として使えるのかは不明だし、どう使うのかは謎だがそんな表示が出るようになった。


 「調合スキルでハイポーションが作れるって習った気がする。確か?スライムの核だったかな?」


 「正解」タクだ。


 「調合のスキルを鍛えている変わり者意外には関係の無い話だけどな。バカみたいなスキルポイントが無いとレベルが上がらないのに、レベルが高くなるまで碌なものが作れないって言うぞ。」


 「ハイポーションって効果はどうなの?」


 「HPの回復で用だ。スタミナの回復はしない。HPは50%回復するし、全快する程度しかHPが減ってなければ腕も切り落とされてても治るからな。」


 「じゃあ安心して腕落とされる事も出来るわけだ。」


 「そんな訳あるか。20,000はするんだぞ。ポンポン使ってたらあっという間に金なんてなくなるぞ。」そんな高級品だったのか。


 実はカズマと1本ずつ持ってる。二人で宝箱あさってる時に見つけたレアアイテムだ。ちなみにそれ以外は全てポーション。


 「だから、ギルドでポーションを買ってくれる訳だ」カズマが一人納得してる。


 「そういうこった。」


 「他にも作れるようなの無いの?」


 「色々とあるけど調合のスキルのレベル上げるのに必要なSPがいくつか知ってるか?」首を横に振って答える。


 「1,000,000だぞ100万。なのにレベル10にならないとハイポーションも作れないとなるとな・・・・・」


 「うん。いらないね。」


 「そういえば、そろそろ剣持が来るかも知れないから気をつけろ」今まで静かだったタケが後ろから注意を促す。


 マジックゴブとアーチャーが多くゴブリンやスライムが混じるって感じのモンスター構成だ。アーチャーとマジックの方が経験値も金もSPも少し多い様だけど、増えていくレベルアップの必要経験値に追いついていかないから実感は薄い。


 SPと金は少しだけ増えた感がある。


 「剣持が来たぞ」言わなくても見えるんだから言う必要ないよねタケさん。


 VR3エリアのソードゴブさんではありませんか。マジックとアーチャーに混じって現れるとボス感がある。雑魚なのに。


 「カズマ。剣持には矢を落とされるから魔法にしておけ」タケから指示が出る。


 「カズマ。ソードくんは俺やるから、アーチャーを優先で倒して」カズマと連携を取る。タケタクは戦う気0らしいから。


 ソードくんの前に居るマジック達をサクサク倒す。カズマの矢では二回当てる必要が有るけど剣なら一撃だ。魔法を飛ばす時には分かるし避けるのも余裕だ。


 異界での初ソード君。


 マジックを盾に使ってのゴブアタックか。


 切った瞬間に合わせて霧の向こうから飛び出してきた。けど、来る事分かってるんだから驚くことも無い。


 来る方向さえ分かっていればどうとでもなる。ソード君の振り下ろす剣を出来るだけ小さく避けて間髪居れずに切り捨てる。一撃・・・・・なの?


 得物が剣なだけでゴブリンと変わらない。


 木刀で戦っていたVRでは攻撃察知も無いし、2・3回は叩かないと倒せなかったけど一撃です。雑魚です。ハッキリ言って10体居ても余裕。


 次の攻撃に対処しながら攻撃して、囲まれないように囲まれないように動きつつ。打っては離れ、打っては離れを繰り返す緊張感に比べて雑魚過ぎる。


 「剣持も余裕か。本当に強いなモモ」


 「本当だな。普通は倒した瞬間を狙われた攻撃に食らわないまでも。避けて切るなんて芸当はムリだな。」


 「ははははは」一応笑っておく。大した事してないのに褒められるのは気味が悪い。

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