第23話 不安再燃

 同郷のパーティーと会ってから10日くらい経ったかな?いや経ってないかな?まあどっちでも良いや。


 あれ以来、知っているパーティーとは会っていないらしく、特に立ち話も無く18階まで来ている。魔法も上手くなったおかげで他の子達よりも魔法が下手糞だと言う事実を感じ取れる位になった。


 何が下手かって。火種のを握り潰すのに一点に上手くイメージがまとめられない。カズミに至ってはそれをいくつも同時に出来るのに俺はその一つに及ばないくらいにしか出来ない。


 まあ前衛の俺にはノンキに練習している時間が無いって事で納得しておこう。才能が無いわけでは無い。なにせ俺は多才のモモスケだからな。弓矢は例外だ。そう例外だ。


 「そういえばモモちゃん。ハツネがそろそろ来る頃だって言ってたよ。カズマと2人で来たって言ってたよ。」ハルナさんなんて事を・・・見てる見てるよ女子達が


 「そうでしたっけ?」とぼける作戦発動。


 「あれあれあれ?手を握って将来の約束してたのに、そんな事言って良いの?ハツネに言っちゃうよ。」


 「・・・・・」同じパーティーの女子に好かれつつ、ハツネさんとも親交を深めるにはどうしたら良い?最適解を俺に


 「そういえばダンジョンに来てるのに、ハルナ姉は何であそこに居たの?」カズマ ナイスだ。ファインプレーだ。


 「ああアルバイトよ。今は皆でやってるから辞めたけど、ちょっと前まで金銭的に厳しくてね。ダンジョンに来てても消耗品で消えてたから装備代をちょっとね」


 「遊びに来てね。って誘うだけだからな。まったく。」タケが呆れてる。


 「ああ。でも、モモちゃん断っておいたよ。一日に二回入ってるから時間的に無理だと思うって」


 「・・・・」あ。そうなの。会うことは叶わないの。そう言う事。


 「モモ落ち込まない元気だしな」


 「ミカは最近モモに優しいな」


 「そんな事ないわよ」赤い顔して否定してる。なんか嬉しいぞ。


 結局ハツネさんに会う事無く6月になった。ようやく19階も半ばを過ぎたと思う頃、先輩達がピリピリしだした。


 「モモ突込み過ぎるな。」


 「カズマ遠くより近くを倒して見通しを良くしてくれ。」


 「カズミ、MPに余裕を持っておけよ」


 戦いの度にそんなタケの低い声が響く。


 「タケ兄。この先に何が有るの?」


 「一気に敵が強くなるのよ」


 「ハルナさん大丈夫かな?」強気のワカナに恐怖の色が浮かんでる。


 「やばくなったらモモちゃんを生贄にすれば良いよ」大人しそうな見た目に反してカズミはすごい事を言う。


 「大丈夫よ。しっかり出来てるから」


 「ミカ。油断は禁物だろ」タクが珍しくミカに意見した。


 「あんまり恐怖を煽るのも危険よ。まあ、モモに伝えたいんだろうけど、他の子が怯えるだけだからね」


 「え?何?俺が問題?」


 「良いの良いの。たぶん言ってもモモには分からないと思うから。いつもの通りにやってれば良いのよ」ミカさんは事も無げ言ってる。


 「うん」なにがなにやら?


 当然の様にそいつは現れたソード君と変わらない様に見えるが鎧が鉄になってる。お名前はソルジャーゴブさん。ソード君8にマジック2を従えて現れた。


 「ソルジャーが来たぞ油断するな。奴は後ろも狙って飛び込んでくるから前衛で止めるぞ」


 タケ、ハルナペアがソード君たちとぶつかる。普段なら飛び出すが待機を命じられてる。


 ワカナが風の玉を打ち込むと、ソード君の半分が玉を中心に吹き飛ばされる。後ろに居たソード君にぶつかったりして前線はバラバラになってる。開いた隙間を縫う様にカズマの矢がマジックを打ち抜き霧に変える。


 とどめとばかりにカズミの氷の矢が10数本雨の様に降り注ぎソード君を霧に変えてる。


 ソルジャーがその瞬間を狙っていた様に飛び込んでくる。残ったソード君の後ろ回ってタケハルナペアの横をすり抜けてこっちに向かおうとしてる。


 ソード君の動きに比べて確かに早い。でも、ソード君よりは早いだけ対応できない程でもない。


 タイミングを合わせてソルジャーの通る所を剣で振りぬく。が・・・一歩下がって避けやがった。


 追いかけようと一歩前に出ると剣を振りかぶって切りかかってくる。後ろ足を斜めに蹴って剣を半身にずらして避ける。剣を振った無防備な首を切り落とす。


 ガンって音がして、後ろに二・三歩ふら付いたけど首が切れてない。一撃ではやれないらしい。首なのに。


 体勢を立て直すヒマを与える事無く、頭を縦に切りつけると真っ二つに切れて霧に変わった。


 「ふう」確かにソード君に比べて手応えが有った。


 「ほら単体ならモモの方が全然強いって言ったじゃない」


 「それでも油断は禁物だろう?これからはこいつ等が集団で出てくる事になるんだし」なにやらミカさんとタクが言ってる。


 「モモどうだソルジャーの感じは?」タケからの事情聴取だ。


 「首を狙ったのに一撃でいかないから集団だとめんどくさいかもね?むしろ落とす剣が楽しみだけど」


 「モモ残念だけど、アイツが落とすアイテムは盾だぞ」


 「え?だって盾なんて持って無いじゃん」


 「持ってないけど、落とすアイテムは盾とポーションなんだよ」


 「モモちゃんには悪いけど、ポーションを落とすならガンガン魔法使えて良いじゃん。最近はそんなにポーション使わなくなったからストックも有るけどね」ワカナは薬で元気だ。


 それからもチョコチョコとソルジャーさんとの遭遇はあるものの、何の問題も無くいつも通りの展開で進んでいく。何も変わらない日々?


 「どうだソルジャーは経験値がでかいだろ?50くらいまではドンドン上がっていくぞ」タケが訳の分からない事言ってるぞ?


 「何言ってるの?俺のレベルは33で待機中だよ」


 「え?モモちゃん全然上がってないの?俺はもう40だよ」


 「私達は42になったのに?前はレベル差が5だったはずなのに・・・・・?」


 いそいでステータスを覗くとやっぱり33のままだった。


 経験値が・・・・・何故か小数点が付いてる。


 「なんか経験値に小数点が付いてるんだけど・・・?」


 「それってお前、経験値10分の1の呪いの症状だぞ。どこでそんなの貰ってきた」


 「タク兄・・・・・・やっぱりキセキの種だよね?」みんなして「ああ」って顔は辞めて。


 「まあ今のところは問題ない訳だし良くない?」


 「確かにソルジャーに勝てるし、今すぐは問題ないけど・・・・25階位になったら厳しくなると思う。さらに敵が強くなるとレベルが上がっていかないのは・・・・・」ミカさんが深刻だ。


 「このまま話していてもどうにもならないし、モモ厳しくなったら教えてくれ。俺たちの方でも呪いの解き方については調べてみるから。」タケの一言でその話は棚上げになった。


 その日はそのままお開きになった。


 その日は珍しく寝つきが悪かった。


 なんとなく7歳の時に最高難度に設定した時がダブる様でフツフツと不安が沸いてきて眠れなかった。

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マスターワールド(仮) 隊長オーク @hitujihituji

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