第22話 他のパーティー

 キセキの種事件からすでに10日以上過ぎて、お外は5月1日だ。


 早いものでこっちに来てからすでに4ヶ月が過ぎていた。大人になると言う話だったのに、彼女が出来る予兆が無い。


 ワカナもカズミも俺は圏外らしい。俺の方は圏内なのは内緒だ。


 やっとこ17階まで下りて来たところで、見知った顔が居たのか?他のパーティーと会って、話始めてしまった。


 今までも横目に他のパーティーを見ることは有ったが、タケタクが声を掛けた事も無かったし、声を掛けられた事も無かった。


 話す相手も居ないので警戒に当たる。


 「23階まで行って来たけど、早かったみたいで一人が腕取られてさ。ビビッちゃってよ、前衛から外して後ろに回したから、慣らしでここ回ってるんだよ。」カズマが話をしてる奴がたぶん腕を取られた子なんだろう。鎧を付けてるのに杖を持ってる。


 剣も一応は下げてるものの、ミカさんと同じような軽そうな細身の剣だ。


 あっちのパーティーは先輩2に新人3のようだ。


 「あっちはレベル45だってさ」カズマが耳打ちしてきた。


 「20階よりも下に行くとレベルの上がる速度速くなるみたいだよ。敵は強くなるようだけど」ワクワクしてるのか不安なのか分からない顔だ。


 「俺達はノンビリ行こうよ。追い付いて来てるみたいだしさ」


 「そうだね。その方がモモちゃんらしいね」なんでか元気になった。



 「順調そうで良かったね」戦闘が終わったときに、後ろで声がした。


 見ると女子のパーティーが来ていて、ワカナとカズミは飛ぶようにそのパーティーに向かって走っていった。


 「一時はどうしようかと思ったけど、合同のパーティーになって助かったよ。」


 このパーティーは先輩3新人3らしい。先輩2人以外は全員前衛ではなさそうだ。


 「仕方ないよ。2人しかいないのに一人が腰抜けじゃね」チラッと離れた所に一人で居るミカさんを見る。


 よく見るとミカさんと似ている気がする。


 「モモちゃんあんまりジロジロ見てると怒られるよ」


 「カズマ、あのハルナさんと話してる人、ミカさんに似てないか?」


 「そりゃ姉妹だから似てても可笑しくないでしょ」


 「そうなんだ。でも、なんでミカさんを腰抜けって言ってんの?」


 なんとなくカズマが言いにくそうだ。


 「私が前衛をやめて、魔法をメインにしたからよ」あっちにも聞こえるように大きな声でミカさんが俺の疑問に答えた。


 「でも、あっちのお姉さんも細身の剣だよ?さっきの腕取れ君も細身の剣だったし流行ってるの?」やべえ地雷か?ハルナと話していたお姉さんが睨みながら寄ってくる。


 「僕にはまだ分からないかも知れないけど、速さで前に出るには軽い武器の方が良い事も有るのよ。」


 「軽くても仕留められるの?」ちょっと怖い


 「この子バカなの?」周りに大きな声で聞く。


 「前衛は敵を止めるのが仕事よ。後ろが魔法で仕留めるのよ。」


 「それって自分が出来ないから後ろに任せているだけでしょ?なのに後衛を腰抜けって意味が分からないけど」やべえ。バカ呼ばわりされてつい言ってしまったが、言ってか

ら冷静になってしまった。


 「僕は剣をぶら下げているのに後衛なのかしら?」すげえ敵意むき出しだ。


 「俺はむしろ遊撃らしいよ。」


 「ああ。先に死んでいく奴らね。僕も先が長くないわね。後衛にでも転職予定かしら。」


 「俺は魔法をうまく使えないので」


 なんか爆笑しながら、自分のパーティーに戻って行った。


 どこかに消える前に仲間の女の子が一人、仲間に見えないように頭を下げてた。


 「モモやるな。シスさんにあんな事言うなんてな。」


 「タク先輩。そんなに怖い人なの?」


 「狂犬て影では呼ばれてるぜ。誰にでも噛み付くからな。」めんどくさそうな人だ。


 「モモ。ありがと」ミカさんが小さな声で礼を言ってくれた。良い事した気分だ。


 その後はいつもの通り順調に労働をこなして行った。

 ちなみに順調にスキルレベルも上がっている。


 攻撃    5

 防御力  41

 攻撃察知 14

 鑑定   10

 強撃    3


 攻撃察知は今のレベルで十分使えてるし、鑑定は耐久が見えるから必要性を感じない。なので強撃をメインに据えて育てている。そのせいで全体が全然増えていかない。


 合同になって戦いに時間が掛かるようになったのも有るし、女子達は装備を変える事が多いので頻繁に買い物に出かける。


 女子の装備はカラフルだ。鎧なのに模様が入ってたり、一見すると鎧に見えないものも存在している。ローブにしても男だとほとんど同じローブを着てるが、女子は全員が違うのかと思うほどに種類があるみたいだ。


 服にしか見えないローブだったり、鎧だったり。魔法使いローブにも形によって名前が違うらしい。素材で違うのはアイテムを見れば分かるが、同じ素材でも形や色が違うらしい。


 何よりも同じ素材のローブを種類の違いで何着もストックしているらしく、カズミ、ワカナを始め、ハルナさんもミカさんも装備が毎日の様に変わる。


 男?男は毎日同じ装備に決まってるだろ。カズマもタケタクコンビも装備が変わるのは壊れて買い換える時だけだ。もっとも、仲間内ではカズマが装備を買い換えたことが1・2度有るだけで他は誰も変わっていない。


 「モモちょっと良い?」ミカさんに声を掛けられる?普段と違うぞ。


 「ちょっと火弾使ってみて」


 言われるままにいつもの目くらましを使う。


 「時間が掛からないのは長所だけど、しっかりと定まってないのがダメなのね。もっと手の平でギュッと握りつぶすイメージで溜めてから撃ってみて。」


 言われるままに握りつぶす。


 「そうじゃないよ。イメージで実際に握るんじゃないよ。ほらもう一回」


 ボウ


 壁に当たった時に火の燃え上がる音が響いた。いつもはパッて感じなのに。


 「そうそう上手。その感じでいつも使えるようになれば、もっと強くなれるよ。頑張ってね。」肩を叩いて後ろに戻って行った。


 「クックックック。」


 「なんだよカズマ」


 「だってモモちゃん変な顔してるんだもん。いったい何が起きているんだって、顔に書いてあるよ。」


 「ミカさんの人が変わった気がするんだが」


 「打ち解けたんだよ。ミカさん初対面の男は苦手だからね。始めは緊張してるからあんな感じなんだよ。」


 「タケの女版かと思ってた。」


 「誰の女版だって」おお。タケがすぐ横にって、考えてみれば前衛なんだから当たり前か。カズマが前に来てるだけだし。


 「ハハハハハ」笑って誤魔化す。


 ミカさんのおかげで魔法が強くなった。試したらアーチャーが二発で倒せた。


 将来的には魔法使いも有るんじゃねえのと自惚れていたりする。

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