第2話 お師さんとホットケーキを 中編

お師さんの錬金術に使う材料を収められた部屋で僕は買ってきた食べ物をせっせと棚に並べていく。


錬金術に使う材料には涼しく、湿気が少ない場所に保管した方がいいものがたくさんある。そこでお師さんの家には低温になる魔道具が備え付けられた専用の材料保管部屋がある。


それが今、僕が作業しているこの部屋だ。


錬金術の材料と食べ物を一緒の場所に置くのは怒られそうだがこの部屋が無駄に広くて何も置かれていない棚の方が多い。それなら涼しく、湿気の少ない所に保管した方が良い野菜や小麦粉はここに保管した方がいいに決まっている。おいしい料理はおいしい食材からできるんだから。


それにしても、この広さの部屋をここまで冷やす魔道具は凄いと思う。火照った体に冷たい空気が気持ちいい。多分、元の世界の冷蔵庫に負けないぐらい冷やしてくれる。そろそろ、暑くなるのでお茶や水をここで冷やし始めた方がいいかもしれない。


そして、最後に残っていた小麦粉を棚に入れ終わる。


「買い出し終了~」


ちょっとした達成感に思わず声が出てしまう。でも、出不精の僕が危険がいっぱいの外出をクリアしたのだから思わず声が出てもいいと思う。誰かに聞かれたでもないのに恥ずかしくて心の中で言い訳しながら立ち上がる。


食材を少しでも早くしまっておきたかったのでマント以外は外出したときと同じ格好だ。さっさと脱いで解放されたい。この後は外出も店番の予定もないので大丈夫だろう。


そう決めたら善は急げだ。僕は自室へと移動を開始する。移動の途中、お店の中のお師さんを見たのだが先ほどと同じ状況だった。おやつの時間は少し遅くした方がいいかもしれない。


僕の自室は二階にある。お師さんの自室の隣だ。居候でお金も払えない僕にわざわざ自室まで用意してくれたお師さん。本当に感謝しかない。


僕の自室はかなりの広さだ。4、5人は寝れそうな大きなベッド。文字を書いたり、引き出しがあるいわゆる学習机。衣服をたくさん仕舞えるクローゼットに本がたくさん入った本棚。そんな大きな家具がいろいろ配置されていてもまだまだ余裕があるぐらいだ。元の世界の僕の部屋と比較することも烏滸がましい規模だ。


こういう家の広さを見ているとやっぱりお師さんは凄い錬金術師でたくさん稼いでいるのだとこの世界に疎い僕にも分かる。


僕のお師さんの名前はメノウ・ヒューアス・ディジィ。


性別は女性。年齢は教えてくれなかったが僕が見た限りでは女子大生ぐらいの年齢に見える。元の世界の人種的には西洋系と言えばいいのだろうか。日本やアジアとは違う彫りの深い顔に真っ白な肌。お師さんが教えてくれた話ではエルフや魔族の血が流れているらしい。美形の代名詞エルフはもちろん、僕のイメージではミステリアスカッコイイの魔族とかため息がでちゃうくらいの血統だ。


背丈はもちろん僕より高くて、170センチ台はあるんじゃないかと思う。背丈が高いのに腰の高さも高くて、手足もすらっとしてる。お腹はぺったんこ。お尻はそこそこ胸は結構大きい。元の世界のネット画像で見た海外のモデルさんにも引けをとらないプロポーションだ。


髪の毛は真っすぐで真っ黒。顔を隠すために伸ばしているそうで後ろ髪も前髪も長くて野暮ったい。それでも、髪質が光が当たるとキラキラするレベルなので不潔なイメージは抱けない。エルフの血が流れているので長い真っ白な耳が漆黒の髪からぴょこんと覗いているのは僕的には可愛らしポイントが高い。


顔は常時、髪の毛の中なのでなかなか見えないけどちらちらと除く緑色の瞳は大きいのにしゅっとした印象。綺麗に整った眉のおかげかもしれない。鼻筋から鼻そのものも形がいい。口はちょっと大きい感じがするけど唇は形だけじゃなくてうっすらピンクでつやまでもが良い。それと口が大きい分、シャープな顎のラインがさらに引き立って見えるので大きくてもプラスポイントだ。


色々語ったけど僕のお師さんは一言で言うと美人だ。二言で言うと絶世の美女だ。元の世界を合わせても僕はお師さん以上に綺麗な人を見たことが無い。きちんとこの目で見た人はもちろん、テレビに出るような人も、写真集を出すような人も、美人だとネットに張られた人でも。芸術作品の綺麗な人の絵や彫像、漫画やイラスト、フィギュアのキャラでさえお師さん以上は見たことが無い。いや、並ぶようなモノさえみたことが無い。


そんな無双美人なお師さんだが一つだけ悲しい現実がある。


この世界の女の人の容姿への評価は僕の世界の容姿に対する評価と真反対ということだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る