第26話 エンジェルハーツ集団催眠事件
一方、百合香が浩然と消えたエンジェルハーツには気まずい雰囲気が漂っていた。羞恥、怒り、困惑、様々な感情が入り交じり完全にフリーズしたティララは騒動の中心で無意識に脇を両手でガードしながら立ち尽くしている。そんなティララを心配して周りに人が集まり出した。
「――ララ、……ティララ!聞いてんのあんた?」
「はえ!? ブ、ブリブリブリジットさん!? な、なんですか?!トイレですか??」
「あんた喧嘩売ってんの!? いや、そうじゃなくて長い間固まってたから心配したのよ?あんた大丈夫なの??」
「えっ、大丈夫……だと思います。なんか情報が多すぎて混乱してるんですが……私、どうやら夢をみてたみたいです。ニヤニヤした変な髪の気色悪いトカゲの女性が私の事、先天性脇毛ジャングル女扱いしてぺろぺろ舌を動かしながら突然消えたんです。あはは……病院に行っていいですか??」
そう青い顔で話すティララにブリジットと近くで全てを目の当たりにしていたヒメナとジョーが返答する。
「残念だけどティララ、それ現実。……いや、なんかそう聞くと自信なくなってきたわ。原因不明の集団催眠かも。」
「はあ、ブリジットそれは流石に……いや、確かに夢って考えた方が納得出来る気がする。」
「おいおい、ヒメナちゃんまで……だって俺、あいつと店先で……いや、二件目の飲み屋で……なんかトカゲ女と出会った時の記憶が曖昧な気がする。」
「「「…………。」」」
あまりにイレギュラーな百合香という存在は夢と仮定した方が現実的だった。またこの世界はゲームである以上、魔法やスキルによって規約はあるが催眠も可能になっている。集団催眠事件なんて荒唐無稽な展開に思えるが、ここでは十分に有り得るものだった。周囲もその会話から何か得体の知れない薄気味悪さを感じ、時間が止まったように凍りつく店内に低い声が響く。
「おいお前ら、何堂々とサボってんだ??」
「あっ店長。……その、実は――」
静まり返る店内の様子を察知して裏からしかめっ面の店長が現れるとヒメナが代表してことの経緯を説明する。そして、その数十分後には店長の連絡によってガラの悪い迷彩柄のタンクトップ男が店にやってきた。客はさっきの騒ぎで帰ってしまい店内には店長と証言者としてヒメナを残して裏に待機していたが、皆様子が気になってバックヤードから聞き耳を立て暖簾の隙間から3人を覗いていた。男はヒメナの話を欠伸しながら聞き、口を開く。
「ふーん、奇怪でデリカシーのない変態を見せる集団催眠ねぇ。……うん?え、それなんてthis man?無差別ストレス負荷実験?? ていうかさ、俺たち自警団も裏組合を語るペテン師のせいで暇じゃねーんだよ。それ実際に目に見える被害はあったの?」
「いや、何故か支払いは先にしてたみたいで特にないです……でもこうしてる間も客はビビって帰っちまうし、うちの営業機会を奪われてるんですよ。犯人捕まえて賠償させて下さいよ!ヒメナ、お前もお願いしろ!」
「……お願いします。催眠じゃなく実在しているかも知れませんし、トカゲの見た目をした女性で他でも被害があるかもです。それにティラ……同僚に特別絡んできましたし心配なんです。」
「へえー……くくく、まあそうは言っても上からの仕事もあるし、ここだけ特別扱いわねぇ。ただ条件によってはやれなくも無いんだけどさ。個人的にな。」
「……条件?」
「店長さん、こっちも慈善事業じゃねーんだよ。相応のお気持ち頼むわ」
下町路地街は衛兵の管轄区域を離れているため、裏組合が表向きには下部組織の自警団という形で取り締まっている。しかし実際は高額なみかじめ料を請求し、かなり一方的な関係を構築している。
裏組合の業務は表組合の戦人、職人、農人、商人を統括したものになるが、保護区域での違法な採取クエストや使用禁止の呪われた武器の作成、違法薬物の栽培、国が禁止している商品の密輸などバレれば逮捕待った無しの非正規な仕事ばかり扱っている。そして受注者の身元確認が要らない代わりに失敗時の賠償額やペナルティが重い事が特徴になる。またゲームとしての必要悪で各街に支部を持ち、犯罪組織のくせに国が一向に取り締まる気配がないというご都合主義なのか闇が深いのか分からないフワついた存在でもある。
「では捕まえたら…一日の売上と慰謝料で…この賠償額の10%でどうですか?」
「えっ店長!? それはいくら何でも……」
あんまりな金額に眉を顰めるヒメナを尻目に男は薄ら笑いを浮かべて返答する。
「40%だな。その代わり賠償額を今思ってる2倍にしろ。俺が犯人の説得を手伝ってやるからよ。そっちもその方が得だろ?お前もうちから結構借りてるらしいじゃねーか。自由な金は必要なんだろ?」
「それは……いいかもですね。」
「あー、あとティララに話があるんだが、ちょっと呼んで来てもらってもいいか?」
「はい!ヒメナ、ちょっとティララ呼んでこい!」
「……はい」
――そんな会話を知る由もないバックヤードでは会話する3人を遠目で見ながらブリジットがティララに話しかけていた。
「うわ、あれ粘着タンクトップ男のゴンザスじゃん。最悪。」
「ひぇゴンザスさん?!……会いたくないな」
「え!?ティララあいつと知り合いなの? 」
「知り合いというか……この前、あの人が借金の取り立てに来たんですけど、それ以来何かと脅……声を掛けられるんです。正直ちょっと苦手です。」
「ティララあんた、本当によく変なのに好かれるわね。前は街頭アンケートしてる厚化粧おばさんだったっけ?」
「はい。なんか最終的に高いお布団とお水を買わされました。えへへ……まあ、それが私の……ね」
「……そうね」
残酷ではあるが程よく幼く、擦れていない力の無い少女はいつの時代もカモにされる運命にある。プレイヤーは勿論、最新自律型AIも例に漏れず善悪を取り払えば打算的に行動し弱者を襲い、強者に従う。唯一の救いがあるとするならここは生と死のないゲーム世界で、現実ほど苛烈な運命は起こりえない事だろう。少女は本当の意味で身を売ることは無く、世界の底辺でぬるい絶望が目に見える距離で漂っているだけだ。それがティララというモブNPCの少女に与えられた
ようこそゴミ共! 前科持ち限定トークルーム
20 新しい名無しのゴミ
前科持ちになったんですけど、大金稼ぐ方法教えて
21 名無しのゴミ
>>20
①裏組合で違法クエスト(極)やる。(刑務所内に低確率で現れる???に教えてもらった合言葉を受付に言う)
②ンドランドの組員の出す前科持ち専用アクトをこなして、マフィアに所属する。(刑務所内か第8の街シリチアで探すと楽)
③金持ちNPCの家から金を盗む。(鍵開けスキル、暗視スキルがあると良い。昼に狙う場合は変装スキル、消音スキルがあると良い。)
④銀行強盗する。(輸送車を狙う方が成功率が高いが、緻密な計画と長い準備期間、メンバー集め、内部協力者が不可欠。)
⑤金持ちNPC向けの贋作アイテム詐欺師になる。(贋作職人の他に騙すため正規の職人と商人を雇ったりと元手がいる。誰も雇わないで転売で行うとバレてめちゃくちゃ職人・商人プレイヤーとNPCに嫌われ、100%BANされる。あと単純にコミュ障には無理。)
⑥第5の街ベガリカの会員制地下賭博場 モルス(ほぼ確定で負けるが、強運に自信があるなら一攫千金。ただ負けるとリセットしないとゲームが詰む廃人コースもありえる)
22 名無しのゴミ
>>20
腕に自信があるなら奇数の街にある地下闘技場で稼ぐのがオススメ。ただレートが上がる10戦目毎に難易度が爆上がりするため要注意。あと大会に出るには裏組合に借金して返済するみたいなかなり面倒くさいアクトをクリアする必要ある。あと基本殺し合いだが街によって種目が違うので注意。
23 新しい名無しのゴミ
俺レベル50の無一文なんですけど、誰か協力してくれませんか?
24 名無しのゴミ
>>23
いきなり協力とかww あとレベル50とかゴミすぎww
ゴミ舐めんなガキ。消えろ。
25 名無しのゴミ
>>23
賭博系か犯罪以外で大金稼ぐにはレベルかプレイヤースキルかある程度の資金が絶対必要。と言ってもアクトの関係でどの道最低100レベルはいるからお前は大人しく教会の更生施設行け。中度までなら観察処分扱いだけど普通に組合に入れるから。あとここは救いようのないゴミが集まる場所だからさっさと消えろ。
26 名無しのゴミ
話変わるけどNPCを山小屋で擬似監禁してたら運営から警告来たんだけど。マジで失敗した。別に見てるだけでもアウトなのな。楽しかったのにショック。
27 名無しのゴミ
今裏組合入ってNPCの借金ある女の子恫喝してんだけどマジ楽しいからオススメww 金もやりようで結構稼げる。
27 名無しのゴミ
タイミングよく清々しい程のゴミ野郎湧いてワロタww
だが、それでいいッ!!
28 名無しのゴミ
この部屋は悪自慢する痛い奴の温床だからな。よっぽどお前らの方がガキで草。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます