第5話 結局はキャラメイクがゲームのピークだよね!

 抗議メールを送った私は漸くキャラメイクに取り掛かった。


「今回は普通に女性にするか。それに前回、見た目に合わせて老紳士っぽくロールプレイするの言い返せないし後半ダルかったんだよね。でゲームしたいし、今回は変なキャラ付けはやめとこ。」


 とりあえず名前はリュカにした。私の本名 橘 百合香から安直に決めた名前だったが結構気に入っている。そして種族だが、前回すぐ人間を選んであまり見てなかったのでどんな種族がいるのかおさらいすると8種族と中々のラインナップだった。


【種族】

 人族、エルフ族、ドワーフ族、魔人族からなる人種。

 獣牙族、有鱗族、甲蟲族、屍鬼族からなる亜人種。


 ※人種は大きな長所や短所はなく使いやすい。亜人種は逆に長所と短所がはっきりしているため玄人向け。


 なるほどね。亜人種って獣牙族以外ほとんど見掛けないんだよね。見た目で分からないって事も有りそうだけど、人気がないのは確かだろう。


〈獣牙族〉

 力と俊敏に大きな補正が入る。ただ魔力と魔力防御力が非常に弱い。また精神攻撃に弱点を持つ。

〈有鱗族〉

 器用と運に大きな補正が入る。魔力と攻撃力が非常に弱い。また氷攻撃に弱点を持つ。

〈甲蟲族〉

 防御力と魔法防御力に大きな補正が入る。ただ俊敏と器用さが非常に弱い。また炎攻撃に弱点を持つ。

〈屍鬼族〉

 力と魔力に大きな補正が入る。ただ防御力と運が非常に弱い。また光攻撃に弱点を持つ。


 確かに選んだ種族でプレイスタイルが既に固定されそうだ。やり込む人には良いだろうが自由に楽しくゲームする事が目的の人には合わないかもしれない。私は後者だが1ついい事を思いついた。どうせ金髪美少女と話すだけなら戦闘力など必要ない。私に今後必要になるのは美少女を見つける"運"と仲良くなるための"器用"な立ち振る舞いだ。そしておあつらえ向きな種族が存在している。

 私が〈有鱗族〉を選択するとデフォルトの姿が変化する。四肢が鱗で覆われ、小さな尻尾が生える。肌の色は変わらないが瞳が爬虫類の目の様に細くなり緑色に変わった。更に口から長い舌がチロチロ動いている。


「きんもっ!!いや……よく見るとかっこいいかも?うん、なかなか可愛いじゃん! いや……やっぱりキモいわ。」


 というかなんか違和感がある。……髪型と眉だ。髪型が普通すぎて顔のインパクトに負けている。そして何より眉がないから爬虫類感が二割増ししている。私は髪をロングヘアにしてからマニュアル調整にして怪奇トカゲ女を椅子に座らせ同時に現れた鏡の前で思案する。


「うーん、こういう顔だとやっぱりブレイズヘアにしたいよね。現実だとコーンロウで手入れが面倒過ぎてトラウマだったし無理だけど、ここなら手入れ不要!それで髪の色は……トカゲだから緑にしよ!ついでに推しの金髪ちゃんと妹の髪の色を編み込んでグラデーションにしよう! ふふふ、これは腕がなるね」


 ――かれこれ3時間だろうか。カラーはゲームなので色さえ決めれば一瞬なのが有難いがブレイズヘアは中々手間取った。試行錯誤してハーフブレイズという形に落ち着いた。髪の根元から途中まで金髪と茶髪で編み込みしてそこから先は蛍光色の緑色ストレートヘアのセンター分けという感じだ。あとついでに横は刈り上げた。


 まあ正直に言えば心が折れた。いや、全部やるのは無理!!なんで休みの日に美容師してんの私?しかもトカゲ女の髪を! 頭おかしくなるわ!!


「でもかなりいいんじゃない! 眉はないけど様になってんじゃん!! 」


 古い映画が好きでよく観るのだが、肌を青くすればア〇ターにチョイ役で出れそうな見た目だ。その後、眉を描いて軽く化粧をして完成ッ!!……いや、よくよく冷静考えたらこんな派手な見た目で目立つのは良くないのではなかろうか。というか金髪美少女とこの文字通りのアバターがツーショットになったら私は衛兵に取り押さえられないだろうか?まずもって金髪美少女はコイツと会話してくれるのだろうか。


 私の前に今もドヤ顔で佇むアバターが少しだけ悲しい顔をしている様に感じた。私は悲しいモンスターを作ってしまったのかもしれない。


 10秒ほど1人で悩んだがここまで頑張って創ったアバターを消すのは流石に悔しいので少女の天然発動に一縷の望みを託した。きっと「え、もしかして何かの劇団員さんですか!? あの握手してください! えへへーわたし有名人に会った初めてです!」みたいな感じになるはず!ていうか妄想中でも可愛いなんてズルい!!早く会いたいなー!


『このキャラクターで宜しいですか? YES or NO ※ゲームスタート後に容姿を変更する場合、有料アイテムが必要になります。……次に初期装備をお選び下さい。』


 初期装備は何でもいいか。どうせ戦闘なんてしないし、邪魔にならない小さいのがいいな。ていうか種類多いな。前は何となく上の方にあった槍にしたけど、この指揮棒とか水鉄砲とか攻撃できんの??ネタ装備ってやつなのか……うん?これはッ!!


初心者用ダウジングペンデュラム

魔力+2、運+8 、耐久値 なし

 失せ物や水脈などを当てるネックレス型の装備。MPを消費して"ダウジング"を行う。


「これ最強チート装備じゃん!!完全にバランスブレイカーだわ。」


 私は初期装備にダウジングペンデュラムを選択すると再び頭に直接声が聞こえてくる。


 ――では英霊にその肉体と装備与えます。そしてこれは餞別です。『リュカは1000ゴールドを手に入れた』……私の創りし物語の演者アクターとして活躍を期待していますよ。愚かで可愛いリュカ。


 その言葉を聞くと体に重力が戻る感覚を覚え、ゲームに小バカにされた事など気にすることも無く新たなゲームの始まりに胸が高鳴るのを抑えられなかった。


『精神状態、思考判断力、生体情報の条件クリア。レベル上限、最上位称号保持の状態でリセットするクリア。指定の全条件をクリアした事より、貴方は愚者の演者アクターを手にしました。その果てしない愚かさに神の祝福を』


「は?」


やはり無視は出来そうになかった。




新人歓迎フリートークルーム


738 新人の冒険者

獣牙族なんですけど、やっぱり亜人種って難しいですか?始めたばかりなんでやり直そうか悩んでます。


739 名無しの冒険者

>>738

獣牙族は近接戦闘タイプで割と上位プレイヤーにも多いし、俊敏性が高いから回避盾してる人もいるよ。あとレベルが上がると固有の"野生の勘"ってスキルが覚えられて回避に補正が入るから最初は辛いけど頑張ってみたらどう?


740 新人の冒険者

>>739

ありがとうございます。ちなみに避けた方がいい種族ってなんですか?


741 名無しの冒険者

種族で人気がないのは有鱗族と屍鬼族かな。有鱗族は明らかに生産向けだし。屍鬼族は日に当たるとダメージがあって面倒くさいし、パーティ組むとお荷物になるからソロか屍鬼族同士でしか冒険出来ない。あと見た目が悪いかな。


742 名無しの冒険者

甲蟲族は防御力に特化しててタンクとしてかなり使える。レベルが上がると固有の"攻撃蟲こうげきむし"ってスキルが覚えられてダメージを低確率で無効化するパッシブで結構役立つ。あと外骨格っていう侍甲冑みたいなのが元々備わってて装備代浮くからオススメ。


743 新人の冒険者

ありがとうございます!あと初期装備なんですけど、オススメありますか?


744 名無しの冒険者

まあ普通に近接戦闘なら直剣、槍、戦棍、手甲が使い易いかな。遠距離ならクロスボウ、魔銃、杖、魔本がいいかな。まあ別に装備は固定じゃないし複数装備も出来るから武器屋で色々試してみるといい。あと種族や演者アクターでも相性があるらしいから合ったのを選びな。


745 名無しの冒険者

仕込み靴おすすめ。蹴りだからリーチあるしちょっと重いけど手ぶらで歩けるから楽。サブとしても有能。


746 名無しの冒険者

なら水鉄砲も初級水魔法のみ無詠唱で撃てるからサブ装備におすすめ。ただ調子に乗って撃ちすぎるとすぐMP切れる。


747 名無しの冒険者

ダウジングペンデュラムはアイテム探しの時だけ使えるから1個あると便利。まあ初期装備に選ぶ奴はアホだが。


748 名無しの冒険者

お前ら色々使ってんだな。なんか剣だけ使ってんの恥ずかしいわ(´・ω・`)

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